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特報!19日に15年W杯南アフリカ戦がSNSでフル配信! これぞ日本のスタンダードだ!

永田洋光スポーツライター
この感動が19日19時からもう一度見られます!(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

日本ラグビーの新しい歴史はこの試合から始まった!

この3連休が明けた直後の20日、いよいよ2019年ラグビーW杯日本大会まであと2年の“記念日”が訪れる。

その日はまた、2年前の15年W杯イングランド大会で日本代表が南アフリカ代表スプリングボクスを34―32と破り、1991年第2回大会以来の「W杯2勝目」を挙げた記念日でもある(日本時間は20日未明だった)。

マラソンで言えば、ちょうど中間点。

大会の成功に向けて、いよいよ“レース”は後半戦にさしかかる。

そんなタイミングに合わせて、ラグビーワールドカップ2019組織委員会が、粋なことをしてくれた。金星2周年にあたる9月19日19時から、大会公式ソーシャルメディアで「フルマッチストリーミング配信」をしてくれるのだ。

※視聴可能プラットフォーム(19日19時~)→ [www.twitter.com/rugbyworldcupjp 公式Twitter]:[www.facebook.com/rugbyworldcup 公式Facebook]: [www.youtube.com/worldrugby YouTube] [www.rugbyworldcup.com/relivetheglory 公式サイト]

極論すれば、日本ラグビーの新しい歴史は、すべてがこの試合の勝利から始まった。

日本代表に大きな期待が集まるのも、トップリーグの試合が夜のスポーツニュースで流れるのも、日本代表選手がCMに出演するのも、この勝利があったからこそだ。

同時に、この試合は、ヘッドコーチ(HC)がエディー・ジョーンズからジェイミー・ジョセフに替わろうが、新しい有望な選手が出てこようが、19年までの2年間のジャパンが進むべき方向性を明確に示す道しるべでもある。

私自身は、ちょうど20日に発売となる近刊『新・ラグビーの逆襲』(言視舎)に書いたように、ジョセフHCが提唱する「キッキング・ラグビー」に対して批判的であるが、まったく立場が逆の“キッキング・ラグビー支持者”にも、ぜひぜひじっくりと見直してもらいたい。

ラグビー日本代表が、世界と戦う際に何をその拠り所、強みとするのかが改めて示されるだろう。立脚点の如何にかかわらず、これからの日本ラグビーを語る際の原点が、この試合なのである。

特報その2! ジャパン来秋にイングランドとトゥイッケナムで対戦!

しかも、このプレスリリースの3時間前には、日本ラグビーフットボール協会から衝撃的なリリースが流れてきた。

日本代表が来年11月17日(土)に、あのロンドン西郊の聖地トゥイッケナムでイングランド代表とテストマッチを戦うことが発表されたのだ。

日本がイングランドと戦うのは03年7月以来。

あのときは、向井昭吾監督率いるジャパンが、10―37、20―55と連敗し、最終戦後の記者会見では、当時強化委員長だった宿澤広朗氏に向かって「選手のなかには『戦い方を明確に指示されないからどうプレーしていいかわからない』という声がある。向井監督の、監督としての能力はどう思うか」という厳しい質問が記者から飛んだ(この辺りの経緯は『新・ラグビーの逆襲』にしっかり書き込んでいます!)。

まあ、このジャパンは、その後メキメキと力をつけ、オーストラリアでスコットランドに11―32と食い下がって、初代「Brave Blossoms」と命名されたわけだが、当時来日したイングランドが、主力がほとんど抜けたメンバーだったにもかかわらず、これだけの差がついた。

あと1年で、現在世界ランキング2位の北半球の盟主にどこまで肉薄できるか――これは相当覚悟を決めて強化をしないと、かなり厳しい試合になる。

おまけに、言うまでもないが、イングランドのHCは、ジャパンを南アフリカ戦勝利に導いたエディーさんなのである。エディー・ジョーンズVSジェイミー・ジョセフのHC対決という趣までが、この試合に加わった。

19年大会のグループ分けを見れば、日本はグループリーグを突破し、ニュージーランドまたは南アフリカとの対戦が予想される準々決勝に勝たないとイングランドとの対戦は実現しないが、それでもイングランドが毎年、シックスネーションズで日本と同じプールのアイルランド、スコットランドと真剣勝負を繰り広げることを考えれば、このテストマッチが19年W杯の前哨戦としても大きな意味を持つことが、おわかりいただけると思う。

ちなみに来年11月は、イングランド戦の前にニュージーランド代表オールブラックスとのテストマッチも予定されている。

こちらも、19年W杯準々決勝の前哨戦と見ることができるのだから、来年の秋が待ち遠しい。

五郎丸がジャパンに復帰すれば、こんなメンバーが可能だが……

……と、鬼が笑うどころではない1年後の秋に興味が飛んでしまうが、その前に2か月後に迫ったジャパンの季節を忘れてはならない。

ジャパンは、非テストマッチとして10月28日に世界選抜と戦い(レベルファイブスタジアム 15時キックオフ)、11月4日には、19年W杯決勝戦の舞台となる横浜・日産スタジアムでオーストラリア代表とテストマッチ(14時40分)を戦う。さらにヨーロッパに渡って、25日にはフランス代表とテストマッチを行なう(日本時間26日 午前4時45分)。

6月のアイルランドとの2連戦で不安をかき立てられたファンも多いが、そうした不安や危惧を一掃し、19年W杯、いや18年のオールブラックス、イングランドと続くテストマッチに向けて希望が見える戦いをできるかどうかが、11月のジャパンの焦点だ。

15日には、ジャパン候補を集めたNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の合宿が行なわれ、わずか1泊2日のミニキャンプとはいえ、11月に向けた意思統一が図られる。

今回の参加予定メンバーを見ると、6月のスコッドに加えて、具智元(ホンダヒート)、姫野和樹(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)、前川鐘平(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)といったフレッシュなメンバーが参加。バックスには、ついに、というか、ファン待望の小野晃正(サントリーサンゴリアス)が名を連ねた。もう1人、昨年のリオデジャネイロ五輪の男子7人制で大活躍して4位入賞の原動力となり、昨秋のヨーロッパ遠征でも圧倒的なパフォーマンスを見せながら負傷で離脱した、レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ)が復帰するのも心強い。

8月18日に開幕したジャパンラグビートップリーグを見れば、今季、福岡堅樹と山田章仁(いずれもパナソニックワイルドナイツ)というジャパンの両翼が絶好調で、かつ松島幸太朗(サントリー)も切れ味鋭い動きで素晴らしい活躍を見せている。そこにレメキが加わると、それだけでもうバックスリー(両WTBとFB)は安泰! という気持ちになる。

問題は、彼らに走る舞台を用意する10番、12番、13番に誰を起用するかだが、小野が加われば非常に心強い。冒頭でご紹介した15年W杯南アフリカ戦の映像を見れば、改めて小野がいかにジャパンに必要なのかがわかるだろう。

一方で、トップリーグに復帰して注目を集めた五郎丸歩(ヤマハ発動機ジュビロ)は、今回のメンバーには入っていない。

薫田真広男子日本代表強化委員長は「代表復帰はパフォーマンス次第」というスタンスで、おそらく今季の活躍ぶりをチェックしてからの話になるのだろうが、これも南アフリカ戦の映像を見たら、やっぱり五郎丸は必要なのでは……と思えてくる。

特に、19年に対戦する相手が、どんなスタイルを採用しても結局はキックを蹴ってくるであろうアイルランド、スコットランドであることを考えると、アタック優先のFBよりも、五郎丸のようなフィールディングに安定感のあるFBが求められる。

しかも、五郎丸をFBに起用すると、次のようなメンバー編成だって可能になるのだ。

10番小野 11番福岡 12番立川理道(クボタスピアーズ) 13番松島 14番山田 15番五郎丸

そして、後半10分とか20分辺りで、五郎丸を下げて松田力也(パナソニック)を投入。松田が12番(インサイドCTB)に入り、立川が13番(アウトサイドCTB)に、松島がFBにポジションを移す。さらにWTBにインパクトプレーヤーを加えたければ、レメキを山田か福岡に替えて投入する――なんか、こうやって具体的に名前を並べるだけで、胸がときめくではないか!

五郎丸がNDSキャンプに参加しないことを考えると、12番に松田が入り、13番に立川、15番に松島という布陣で、控えにティモシー・ラファエレ(コカ・コーラレッドスパークス)とレメキを置く布陣が現実的だが、まずは、10番から15番までを15年W杯代表組で固めて、その力がどのくらいになるのかをテストするのが正しい“遺産の継承”であり、そのための非テストマッチ=世界選抜戦ではないのか。

南アフリカを破ったメンバーこそが、日本の財産だ!

第4節まで終えたトップリーグを見れば、キッキング・ラグビーが正しいのか否かで侃々諤々(かんかんがくがく)だった6月時点のジャパンが、いかに低いレベルで試行錯誤していたかがよくわかる。

現在無敗を続けるサントリーも、パナソニックも、コンセプトは明確に「アタック・ファースト」だ。キックを使おうが使うまいが、最初にキックありきの「キック・ファースト」では断じてない。

ジョセフHCがどう考えるのかはわからないが、少なくとも11月に「アタック・ファースト」へと舵を切らなければ、18年秋も、19年の本番も、危うさが漂うことになる。

これまでW杯でジャパンを勝たせたのは、宿澤氏とエディーさんだけだが、実はジョセフHCは、彼らにはない大きな武器を持っている。

チームの中核に南アフリカを破った“金星経験者”を据えられること――これは、過去に日本代表を率いた指導者が誰1人として持てなかった、史上最強の武器なのである。

その武器の威力を確認するためにも――19日は19時から、2年前の南アフリカ戦のフルマッチストリーミングをぜひご覧あれ!

この試合こそが、19年に向かうジャパンのスタンダードなのである。

 

スポーツライター

1957年生まれ。出版社勤務を経てフリーランスとなった88年度に神戸製鋼が初優勝し、そのまま現在までラグビーについて書き続けている。93年から恩師に頼まれて江戸川大学ラグビー部コーチを引き受け、廃部となるまで指導した。最新刊は『明治大学ラグビー部 勇者の百年 紫紺の誇りを胸に再び「前へ」』(二見書房)。他に『宿澤広朗 勝つことのみが善である』(文春文庫)、『スタンドオフ黄金伝説』(双葉社)、『新・ラグビーの逆襲 日本ラグビーが「世界」をとる日』(言視舎)などがある。

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