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ジェイコブ・デグロムがノーラン・ライアン氏の三振記録に並ぶ!自身初のシーズン300奪三振達成に現実味

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
開幕5試合の奪三振数でノーラン・ライアン氏に並んだジェイコブ・デグロム投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【デグロム投手がライアン氏の三振記録に並ぶ】

 メッツのジェイコブ・デグロム投手が、現地時間の4月28日に行われたレッドソックス戦で、今シーズン5度目の登板に臨んだ。その内容は6回を投げ3安打1失点の好投を演じたのだが、味方打線が完全に沈黙し、0対1で敗れ2敗目を喫することになった。

 だがデグロム投手はこの試合で9奪三振を記録。開幕から5試合の奪三振数が59となり、1978年にノーラン・ライアン氏が記録した、開幕5試合の最多奪三振記録に並んだという。

 MLB公式サイト等で記録関連の記事を執筆している、サラ・ラングス氏がTwitter上で明らかにしている。

【現在のペースはシーズン377個で推移】

 デグロム投手は2018年から2年連続でサイヤング賞を受賞した球界を代表する投手の1人として知られている。これまで奪三振のタイトルも2019年から2年連続で獲得しているし、シーズン奪三振の自己最多記録は、2018年の269を数えるなど、やはり球界を代表する奪三振王でもある。

 ただ今シーズンは自身最高ペースで三振を奪っており、仮にこのままケガなくサイヤング受賞シーズンと同じ32試合に登板できたとするならば、377個に到達する計算になる。

 ちなみに1978年に記録をつくったライアン氏は31試合に登板し、260に止まっている。MLB通算奪三振記録5714を誇る同氏は、1973年に383というシーズン自己最多記録を達成しているが、同年は41試合(うち39試合に先発)に登板しており、現在の中4、5日での先発投手起用法では絶対に不可能な登板数だ。

 いずれにせよデグロム投手が、開幕から記録を期待できるペースで三振を奪い続けているのは注目に値するところだ。

【奪三振率がMLB史上最高ペース】

 驚異的なペースで三振を奪い続けているのは、デグロム投手だけではない。ラングス氏が投稿したツイートでも明らかなように、昨年サイヤング賞を受賞した、クリーブランドのシェーン・ビーバー投手も、開幕5試合で57の奪三振を記録している。

 実はこの傾向は、今シーズンのトレンドとも言えるものなのだ。MLBの公式記録を専門に扱っている『BASEBALL REFERENCE.COM』によれば、4月27日時点でMLB全体の奪三振率を見ると、9.11となっている。

 同サイトが掲載している1872年からのデータによれば、奪三振率が9を超えるのは史上初めてのこと。つまり奪三振数で史上最多(4万2823)を記録した2019年の8.81を上回るペースで奪三振が積み重ねられているということだ。

【複数投手のシーズン300奪三振にも期待】

 前述した通り、ライアン氏の現役時代とは起用法が変化する中で、現在の先発投手にとってシーズン300奪三振は、昔以上に達成するのが困難な記録になっている。

 2020年は短縮シーズンだったので2010年から2019年の10年間を見ても、300奪三振を達成した投手はわずか5人しか存在しない。

 2105年のクレイトン・カーショー投手(301)、2017年のクリス・セール投手(308)、2018年のマックス・シャーザー投手(300)、2019年のゲリット・コール投手(326)とジャスティン・バーランダー投手(300)──の5投手だ。

 果たしてデグロム投手やビーバー投手は、彼らの仲間入りができるのか。また現在の奪三振率を見る限り、他にも期待できる投手が出現する可能性もある。

 ちなみに1シーズンに300奪三振達成者が2人揃ったのは、2000年前後だけでも複数回実現しているのだが、3人以上となると1886年を最後にこれまで一度も実現していない。

 何とも夢のある記録ではないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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