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安倍氏の死と日本の安全問われたバイデン大統領が出した「メディアが報じない」コメント SNSで話題

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
日本は「1件」とバイデン大統領。(写真:ロイター/アフロ)

安倍元首相の死去に際し、8日アメリカのバイデン大統領は「Statement by President Biden on the Killing of Former Japanese Prime Minister Abe Shinzo(安倍晋三元首相の殺害に関するバイデン大統領の声明)」と題する声明を発表した。

安倍氏と親しく仕事をする機会に恵まれたのは光栄だったとし、「彼の日本国民を思う気持ちは強く、人生を国民への奉仕に捧げてきた。襲撃を受けたその瞬間でさえも、民主主義という仕事に身を投じていた」「暴力は決して許されない。銃による暴力は地域社会に深い傷跡を残す」などという内容だ。

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バイデン大統領は急遽行った岸田首相との電話会談でも弔意を伝えたことが伝えられた。またツイッターでも哀悼の意を表している。

大統領はワシントンD.C.の日本大使公邸を弔問に訪れ献花し、「日本国民だけでなく世界にとっての損失だ」と記帳した。

その後ホワイトハウスに戻り、人工妊娠中絶の権利を支援するための大統領令に署名した。これは、先月最高裁が中絶を憲法上の権利と認めた1973年の判決を覆す判断を下したことへの対抗措置だ。ただし、中絶へのアクセスを制限する法律を制定する権限は州政府が持つため、大統領令の影響は限定的とも見られている。

人工妊娠中絶の権利を支援するための大統領令に署名したバイデン大統領。
人工妊娠中絶の権利を支援するための大統領令に署名したバイデン大統領。写真:ロイター/アフロ

さて、大統領令の署名が終わり、この会場を退場する直前に、記者から「安倍氏の暗殺と、日本の安全性についての考え」を問われたバイデン大統領。その場で2分ほどのコメントを出したが、内容が不可解だとSNSで話題になった。

概要(岸田首相と朝電話で話し、日本大使公邸を弔問に訪れたという話から...)

「日本では何十年もの間起こっていなかった。30年代後半や半ばまで遡ると聞いている。自家製の武器だ。写真を見ただけだが、詳細は司法省(司法制度)により解明されていくだろう。しかしながら私が注目したのは、これは日本において、武器を使用し誰かを殺害した初めての事件だ。(アメリカでは)我々は3000、数の正確さはわからないが3688件とか3000~4000件の間。彼ら(日本)は1.1.1.(たった1件と強調)。動機についてはそのうち解明されるだろう。首相の文雄はとても堅実な人物だ。日本は非常に安定した同盟国。私はそのようなことを信じていないし、これはまだわからないこと。日本の安全保障や連帯が不安定になる深刻な影響をもたらす可能性については」

これに対して、SNS上では「言ってることが理解不能」というものから、「『武器の最初の使用』と言うが、2007年に(長崎)市長が銃で暗殺されている。銃による死亡数や所有数では日本は我々より確かに安全だが、それでも完全なる安全ではない」「1930年代まで遡る?第二次大戦中、日本では殺人事件はなかった?」「地下鉄のサリン攻撃は武器使用とは見なされない?」などと、混乱している人が多かった。

また、「馬鹿げた比較」「日本での悲劇を語るのに、我が国の銃規制の議論をするべきではない」など、安倍氏の死とアメリカの銃規制の問題を結びつけて語ったことが癪に障るという批判もあった。

大統領のコメントでは主語や述語が明確でなく、詳細の説明もなかったため、筆者が聞いても確かにわかりづらいと感じた。

何度か聞いて、おそらくこういうことを言っているのだろうと思ったこと:

「誰か」というのはおそらく「要人」という意味だろう。

30年代半ばに起こったというのは、5・15事件や2・26事件のことを指していると察する。(一般的なアメリカ人はこの事件を知らないので、説明なくして何を言っているかわからない)

「1人」というのは、5・15事件で殺害された当時の内閣総理大臣、犬養毅氏のことだろうか。それであれば安倍氏の銃撃事件の「前に」1人は当を得ている。(もしくは「近年では1人」という意味かもしれない)

台本がない質問だったので大統領がどのように答えるか筆者も注目したが、大統領がメディアに対して公式な場で発表したコメントとしては、わかりづらい内容だったのは否めない。せめて記者が追加質問できればもっと理解しやすかっただろうが、その時間も与えられなかったのが混乱を助長させたようだ。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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