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インフルエンサー入国拒否 「デジタルノマドビザ」は解決策になるか

山口健太ITジャーナリスト
入国審査を通過して空港ターミナルに出た様子。何度やっても緊張する(筆者撮影)

インフルエンサーの女性がハワイで入国を拒否されたというSNSへの投稿をメディアが報じ、話題になっています。

その一方で、ITを活用して場所を選ばずに働く人々を「デジタルノマド」として、積極的に受け入れる国や地域も出てきています。

「デジタルノマド」受け入れ広がる

入国審査では、ほとんどの場合はパスポートを提示し、滞在目的や日数など簡単な質問に答えるだけで通過できるものの、旅程や職業について根掘り葉掘り聞かれることもあります。

背景として、多くの国では外国人に雇用を奪われることに対する危機感があると考えられるため、自分が必ず出国する予定があることを説明して審査官に納得してもらう必要があるわけです。

出張中の移動や宿泊はオンラインで予約しており、スマホに入っていますが、スマホの電波や空港のWi-Fiが届かない場所があることから、出国便やホテルの予約は紙に印刷して提示できるようにしています。

幸いにして別室送りや入国拒否の経験はまだありませんが、別室送りについては同業者に何人も経験者がいます。一度別室送りになると、その次も別室送りになる場合があるなど、なかなか厄介です。

ところで、今回話題になった女性の職業が「インフルエンサー」だったことも注目されているようですが、最近ではこうした仕事に対する世界の見方が変わりつつあります。

具体的には、ITを活用してリモートワークする人々を「デジタルノマド」と定義し、海外から受け入れるために専用のビザを発給する国が増えています。

ビザなので事前にしっかり準備が必要であること、また今回話題になった「米国」には存在しないものの、欧州などで導入事例が広がっています。

たとえばポルトガルでは、海外でポルトガルの最低賃金の4倍以上の所得があるなど一定の条件を満たすことで、最長1年の一時滞在や最長5年の居住ビザ(その後は市民権の申請が可能)を取得できるといいます。

通常であれば、外国で働くには就労ビザの取得が必要になるなどハードルは高いものの、デジタルノマドはその国の雇用を奪う心配が少ないことから、積極的に受け入れる国が増えていると考えられます。

日本でも制度化に向けた動き

仕事と休暇を兼ねた「ワーケーション」であれば、短期商用目的でのビザ免除プログラムを利用できますが、滞在日数は長くても90日程度です。

これに対してデジタルノマドビザは1年など長めの滞在ができるため、複数の国を移動しながらリモートワークを続ける、といったスタイルが可能になります。

また、こうした制度の充実がデジタルノマドを増やす効果もあるように思います。筆者自身も将来を見据えて、東京にいないと成り立たないような仕事は少しずつ減らすようにしています。

日本人の目線でいえば、海外(特に米国)にそうした制度が広まってほしいところですが、日本に外国人を受け入れる制度についても検討が始まっています。

6月16日に閣議決定された「骨太の方針2023」には、「デジタルノマド」というキーワードが盛り込まれており、海外からの呼び込みに向けて本年度中に制度化を行うとの記述があります。

国際的なリモートワーカー(いわゆる「デジタルノマド」)の呼び込みに向け、ビザ・在留資格など制度面も含めた課題についての把握・検討を行い、本年度中の制度化を行うこと

経済財政運営と改革の基本方針2023

日本は物価が安い上に安全に暮らせる国として世界から評価が高まっており、さまざまな優遇措置を提供することでデジタルノマドを呼び込むチャンスといえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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