今年はWチャンス! 今夜発表、ノーベル文学賞直前予想
今夜8時ごろ、いよいよノーベル文学賞が発表される。昨年はスウェーデン・アカデミーがらみの不祥事で発表が見送られたため、賞金がキャリーオーバーされるのかと思いきや、今年は、昨年の分も合わせて2年分、つまり、2人の受賞者が発表されるんだとか。そこで、その受賞者2人を勝手に予想してみた。
といっても、日本人の関心の99パーセントは「村上春樹の受賞はあるか」に絞られると思うので、結論から先に言ってしまうと、今回も村上春樹の受賞はないというのが大森予想。
その理由を説明する前に、昨年からの経緯を簡単にふりかえる。
ノーベル文学賞はスウェーデン・アカデミーが選考するんですが、スキャンダルの主は、ある女性アカデミー会員の夫にあたる有名写真家。彼に性的暴行やセクハラを受けたとする女性の証言が相次ぎ、さらにこの写真家がノーベル文学賞の受賞者を発表前に外部に漏らしていたのではないかという疑いも報じられて大騒動に。この一大事件への対処をめぐり、18人のアカデミー会員のうち4人が辞任するまでに発展した。
すったもんだの挙げ句、アカデミーは今年からノーベル文学賞の選考会を一新。いままではアカデミー会員だけで選んできたが、新たに作家や評論家など5人を外部から選考委員として招聘。会員4人と合わせて9人で選考することになった。
今回、ノーベル文学賞の最終候補(ショートリスト)に残っている作家は8人で、ここから受賞者2人が選ばれる。イギリスのブックメーカー Nicer Oddsの予想では、この8人の最終候補に、村上春樹も入っている模様(オッズ11倍で7番手)。
とはいえ、作風や立ち位置がかぶるカズオ・イシグロが一昨年受賞したことで、ハルキ・ムラカミの受賞はますます遠くなり、おそらく当分ないだろうというのが大森予想。「だって、今年はWチャンスなんでしょ」と思うかもしれませんが、セクハラ・スキャンダルのあとだけに、政治的正しさを含め、さまざまな配慮がありそうな気がする。
選考会としては、受賞者2人のバランスにも配慮するという話なので、ふつうに考えれば男性と女性とか、詩人と小説家とか、英語圏と非英語圏とか、ヨーロッパとアジアとか、そういう組み合わせになりそうだが、不祥事の内容から考えて、出直し感を強くアピールするためにも、ここは女性2人を選ぶのではないか。
ボブ・ディラン、カズオ・イシグロと、有名人の受賞者がつづいたあとなので、出直しの今回は地味な候補が選ばれるという観測もあるが、世間的なインパクトを考えるとやはり知名度がほしい。
そこで、大森予想の本命は、英語圏から、カナダのマーガレット・アトウッド。Nicer Oddsの予想でも、6倍の2番人気です。彼女の代表作『侍女の物語』は連続ドラマ化され、現在3シーズン目がhuluで配信中(『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』)。出生率が極端に低下した近未来、数少ない健康な女性は子どもを産むための道具として"侍女"になることを強いられる――というディストピアSFで、アトウッドを選べば、「反省してます」感が大いにアピールできそうだ(個人の想像です)。
で、もうひとりの女性は、非英語圏からということで、中国の残雪(15倍で11番人気)か、ロシアのリュドミラ・ウリツカヤ(9倍で5番人気)を予想。もしかしたらこの枠で多和田葉子(21倍で18番人気)が来ることもありえなくはない……が可能性は薄い。
というわけで、今回発表される受賞者2人は、マーガレット・アトウッドと、残雪もしくはリュドミラ・ウリツカヤのどちらかというのが大森予想です。
ちなみにNicer Oddsの予想でいちばん笑ったのは、リストのいちばん最後に、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作者ジョージ・R・R・マーティンが251倍で入っていること。だったらわたしは、超大穴で、まもなく来日する『三体』三部作の著者・劉慈欣を予想したい。
さて、結果はいかに。
【追記】
ご承知のとおり、当日夜に発表されたノーベル文学賞の受賞者は、2018年がポーランド人女性作家のオルガ・トカルチュク、2019年がオーストリア人男性作家のペーター・ハントケ。というわけで、大森予想はかすりもしない、豪快な大はずれでした。しかし受賞者2人ともヨーロッパの人とは……。