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新型コロナ最後の波は、「5類」化を待たずにやって来る?

倉原優呼吸器内科医
写真はphotoACより使用

5月8日から「5類感染症」へ移行することが決まっている新型コロナ、病名が「コロナウイルス感染症2019」へ変更される見通しです。さて、「5類」化の時期に重複するように、「新型コロナ」としての最後の波がやってくるのではないか、と現場は懸念しています。

病名が変更

「新型コロナ」は、国際的にはウイルスの名前が「SARS-CoV-2」で、病名が「COVID-19」です。しかし、日本では「新型コロナウイルス感染症」と呼んできました。

「5類」化によって、病名が「コロナウイルス感染症2019」に変更する見通しとのこと。個人的には「COVID-19」でよいのではと思いましたが、「英語病名は国民に根付かない」というセオリーがありますので、「コロナウイルス感染症2019」あたりが妥当な落としどころなのかもしれません。

高止まりする救急搬送困難事例

分類や病名が変わっても、感染性が下がってくれるわけではありません。国全体で全力で感染対策を講じても、波を経るごとに過去最多の感染者数を記録していきました。

それに比例して死亡者数も第8波が過去最多となり、この波だけで2.5万人以上が亡くなっています。重症化率は確かに当初より下がりました。しかし、感染性が高く、母数となる感染者も連れ高して、それを医療体制で支えきれなかったというのが実のところです。

救急搬送困難事例も慢性的な高止まりが続いており、東京都の搬送困難例(東京ルール)も、オリンピック裏で医療が逼迫した第5波ピークと同じくらいの水準です図1)。

図1. 2月18日時点の東京ルール(参考資料1をもとに筆者作成)
図1. 2月18日時点の東京ルール(参考資料1をもとに筆者作成)

「5類」化に合わせて波が到来する懸念

医療現場は過去8回の波を受け止めているため、定期的に医療逼迫がやってくることを痛感しています。

私は感染症疫学の研究家ではないので断言は差し控えますが、これまでと同様に感染者数が増加するなら、「新型コロナ」としての最後の波は、第8波ピークから4~6か月後にあたる5~7月に到来する可能性が高そうです(図2)。

図2. 2月18日時点での全国の新型コロナ新規感染者数(筆者作成)
図2. 2月18日時点での全国の新型コロナ新規感染者数(筆者作成)

また「5類」化を待たずに第9波がゴールデンウィークにやってきた場合、緩和施策に冷や水を浴びせないか懸念しています。

救急医療体制は中長期的課題

「5類感染症」になっても、医療の提供体制が劇的に改善するとは思っていません。というのも、救急医療などの二次医療以上を担っている病院は、すでに発熱者を診療しており、救急医療のキャパシティが増える要因がないからです。

超高齢化社会を迎えつつある日本では、いつか救急医療が逼迫するだろうと予想されていました。医療体制を再構築するべきという議論の矢先、突如としてコロナが眼前の障壁となって現れたのです。

政府が進めている「かかりつけ医」機能は、簡単に構築できるわけではありません。高齢や基礎疾患がある患者さんは大病院志向が強く、国全体の風潮を変えていく必要があります。

中長期的に、救急医療に携わる医療従事者が減るのではないかと心配しています。最前線の医療従事者は、コロナ禍でそれなりにしんどい思いをしてきました。「5類」化によってそうした人員が減っていかないよう策を講じる必要があります。

インフルエンザシーズン水準の対応を

コロナの隔離や療養の規定はなくなると思われますが、インフルエンザでも就業制限する企業が多いでしょう。インフルエンザにかかって、ゴホゴホしながら出勤する人はいません。

コロナとインフルは、大なりイコールの関係であって、コロナがインフルエンザ未満ということはありません。政府から企業に向けて何かしらの指針は出ると予想されますが、最終的には企業が独自にコロナに関する規定を定める必要があるでしょう。

マスク着用の緩和について注目が集まっていますが、医療機関や高齢者施設ではマスク着用が続きます(図3)。

また、それ以外の場面でも流行状況に応じて柔軟に対応していく必要があります。

図3. マスク着用の場面(筆者作成、イラストはソコストより使用)
図3. マスク着用の場面(筆者作成、イラストはソコストより使用)

(参考)

(1) 救急医療の東京ルールの適用件数(URL:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/number-of-tokyo-rules-applied/

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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