パンの写真は著作物か?
いろいろな意味で注目の的である五輪エンブレムのデザイナーさんが、自分がデザインしたバッグに他人のブログのパンの写真(下記参照)を流用している疑惑が持ち上がっています。画像を比較して見ると細かい部分まで一致しているようです。ここでは、そもそもブログに掲載されたパンの写真が著作物にあたるかどうかを検討してみましょう。
そう言えば、少し前にtwitterで「写真は著作物ではない」と断言している人がいてちょっと話題になりました。そんなことはありません。著作権法10条第1項に「写真の著作物」が例示されています。
こと著作権に関しては中途半端な理解の俺様法律を自信満々で語る人がいる傾向があるのはどういうことなんでしょうか?
もちろん、「一部の写真は著作物ではない」、「著作物でない写真もある」と言えば間違いではありません。
では、著作物ではない写真とはどのようなものでしょうか?たとえば、中山『著作権法』(第2版、p109)では、「固定式監視カメラで撮影した写真、自動証明用写真、絵画の忠実な写真等のように単に被写体を写し撮ったにすぎないもの」には著作物性は認められないと書かれています。要は、著作者(撮影者)の思想・感情が入り込む余地がない場合です。
その一方で「写真が著作物たりうるのは、被写体の選択、シャッターチャンス、シャッタースピード・絞りの選択、アングル、ライティング、構図・トリミング、レンズ・カメラの選択、フィルムの選択、現像・焼付等により、写真の中に思想・感情が表現されているからである。(中略)いわゆる芸術写真と呼ばれているものは勿論のこと、ブロマイドのような肖像写真やスナップ写真も、思想・感情が表現されているならば、著作物たりうる。」(p110)、「例えば、素人が自動焦点カメラで撮った写真であっても、著作物性を否定することは事実上難しいことが多いであろう。」(p111)と書かれています。多くの写真が著作物とされる可能性が高いことがわかります。
平成18年の知財高裁判決(「カタログ写真事件」)においても市販の商品を並べて背景を付けて撮影しただけの写真にも(限界事例ではあるが)著作物性はあるとの判断がされています。また、「(写真の著作物の)創作性が微少な場合には,当該写真をそのままコピーして利用したような場合にほぼ限定して複製権侵害を肯定するにとどめるべきものである。」という判断もされています。
ということで、今回のパンの写真も、もし裁判で争われたとしたならば、(限界事例ではあるとしても)著作物性が認められる可能性は十分にあると思います。
また、そもそも著作権侵害にあたるのか以前の問題として、自分でブツ撮りするのでもなく、他人の写真を権利処理するのでもなく、商品に勝手に使うのはどうなのよとも思います。これについてはデザインの現場の方の意見を是非お聞きしたく思います。