真夏日に届くか東京都心の最高気温の予想 北の丸公園へ観測場所移転の影響は
ゴールデンウィークの最後は高温
今年のゴールデンウィークは、太平洋高気圧に覆われ、各地で最高気温が30度以上の真夏日が観測されてはじまりましたが、中盤は日本海と本州南岸を2つの低気圧が通過するという「二つ玉低気圧」によって全国的に大荒れとなりました。
その後、上空に寒気が入ってきたため、大気が不安定となって積乱雲が発達し、ところにより雷雨や降雹がありましたが、ゴールデンウィーク最後の週末の日本列島は、上空の寒気もなくなり、再び太平洋高気圧に覆われて気温が上昇します。特に5月6日(日)は気温が上昇し、各地で真夏日が観測されそうです(図1)。
東京都心の5月6日(日)の最高気温の予想は、当初30度でしたので、今年初めての真夏日となるかもしれないと話題になりました。現在の5月6日の気温予報では最高気温は29度となっていますが、同時に発表された予想幅では、「28度から32度」となっていますので、今年初めて真夏日になる可能性がなくなったわけではありません。
東京都心で一番早く真夏日となったのは、昭和34年(1959年)5月5日の31.0度、次いで、昭和19年(1944年)5月7日の30.5度ですので、5月6日に真夏日になれば史上2番目の早さということになります。
ただ、東京都心の気温や雨量などの観測場所(露場)は、平成26年(2014年)12月2日に気象庁のある千代田区大手町から、西へ900メートル離れた北の丸公園内へ移転しています。この観測場所移転で、気温が低めに観測されるようになっていますので、4年前だったら、もっと早く真夏日がきたかもしれない今年の暑さです。
観測所移転の影響
東京都心の新しい観測場所となった北の丸公園には、日本武道館や科学技術館などがあります。大手町地区の再開発に伴い、先行して、日照時間と風向・風速の観測装置が、平成19年(2007年)11月1日に大手町から科学技術館の屋上に移転していますので、平成26年(2014年)以降、大手町での気象測器による観測は終わっています。
東京都心の気象観測場所は、明治8年(1875年)の観測開始以来、5ヶ所目です(表1)。
東京都心の気象観測場所の移転に際し、気象庁では平成24年(2012年)4月から平成26年(2014年)3月までの2年間にわたり、同時比較観測を行っています。
同時比較観測の結果、春の最高気温だけは北の丸公園の観測のほうが大手町の観測より高い値を観測していますが、ほとんどの場合、北の丸公園の観測のほうが、大手町の観測より低い値となっています(図2)。特に、最低気温は大きく下回っています。
また、相対湿度は全般に北の丸公園のほうが高いのですが、水蒸気量はほぼ同じで、この差は気温の差によると考えられています。さらに、降水量はほぼ同じか、北の丸公園の方がやや多い傾向があり、積雪は北の丸公園の方が多いという傾向がありました。
これらは、周辺の植生や建築物の状況など、周辺環境の違いが影響しているためで、気候的な特性は変わらないということから、将来的にも観測環境が維持できるという判断からの移転でした。
平年値の補正
緑豊かな皇居のすぐ脇にある千代田区大手町で観測した気温は、「東京を代表する気温としては低すぎるのではないか」という懸念がこれまでも出ていました。
緑豊かな公園の真ん中での観測になったことにより、「東京を代表する気温としては低すぎるのではないか」という懸念はより強くなると思います。
ただ、100年以上にわたる気候変化を記録するために局地的な影響をできるだけ少なくするための気象観測と、生活実態をできるだけ正確に反映するための気象観測には差がありますので、いたしかたがない面もあります。
これを埋めるために、平年値の補正が行われています。
平年値は昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)までの30年間の平均値ですが、東京都心の平年値は、気象観測場所の移転を考慮し、表2、表3のように補正が行われています。
東京都心にいる人は、気象庁が発表する東京都心の気温は、緑に囲まれた条件がよい場所での観測であることを念頭にいれておく必要があります。最低気温が25度以上という予報でも、熱帯夜になることもあります。
ただし、平年に比べてというときは、平年値そのものが補正されていますので、そのまま使えます。熱帯夜が平年値より多いということは、気象観測場所の移転がなくて大手町で観測を継続したとしても、平年値より多いということです。
図1、図2の出典:気象庁ホームページより。
表1、表2、表3の出典:気象庁ホームページより。