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ウクライナ軍、小銃とロシア製の対空機関砲でイラン製軍事ドローン5機を上空で破壊・レアな動画公開

佐藤仁学術研究員・著述家
イラン製軍事ドローンで攻撃を受けたウクライナ(写真:ロイター/アフロ)

命がけの地上からの軍事ドローンの迎撃と破壊

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

2022年10月に入ってからロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃していた。さらにロシア軍は国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義(軍事目標のみを軍事行動の対象としなければならない)を無視して文民たる住民、軍事施設ではない民間の建物に対して攻撃を行っている。いわゆる神風ドローンである。ウクライナの一般市民の犠牲者も出ていた。2022年12月のクリスマス、年末もイラン製軍事ドローンでロシア軍はウクライナの民間施設、重要インフラなどに奇襲をしかけている。新年が明けてからもイラン製軍事ドローンによる攻撃をやめていない。ウクライナ軍の情報部によると、ロシア軍はイラン製の軍事ドローン1750機を調達しており、1月4日までに既に660機を使用した。

そして2023年1月にはウクライナ軍は東部のバフムトで、小銃(ライフル)とロシア製の低空防空用の牽引式対空機関砲「ZU-23-2」で地上からイラン製軍事ドローン5機を迎撃して破壊していた。小銃(ライフル)と対空機関砲「ZU-23-2」で迎撃して上空のイラン製軍事ドローンを破壊する動画はレアであると報じられている。上空で白い煙が出て軍事ドローンが破壊されているシーンも見られるのは確かに珍しい。

▼ウクライナ軍が小銃と対空機関砲「ZU-23-2」で迎撃して上空のイラン製軍事ドローンを破壊

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止させる必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。今回のイラン製軍事ドローンの破壊は小銃(ライフル)と対空機関砲「ZU-23-2」によるもので、明らかにハードキルである。

ウクライナ軍はロシア軍のイラン製軍事ドローンを迎撃するために、専用車「移動式ドローン迎撃車」を開発して、警報が鳴ると、標的付近まで専用車で向かっていき車やバンの後方部に設置している機関銃や地対空ミサイルで迎撃して破壊している「移動式ドローン迎撃部隊」もある。

今回は地上にいるウクライナ軍の兵士が小銃と対空機関砲「ZU-23-2」で迎撃して5機を破壊することができた。だが大量の軍事ドローンでいっきに襲撃してきたり、ミサイルと軍事ドローンの両方で攻撃してきたら非常に危険で常に命がけである。また悪天候の日や夜など視界不良の時には探知して迎撃することも容易ではない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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