今年もやっぱりパが強い。DH制で選手が育つは本当か
DH優勢は日米共通
865勝774敗。過去11年間の交流戦はパリーグが100近く勝ち越している。しかも創設間もない戦力の整っていない楽天を含めてこの数字。過去11年の交流戦でセリーグチームが優勝したのは2012年と2014年の巨人だけ。今年も最終カードを残して50勝37敗1分とパリーグの優勢が続いている。
パリーグが強い理由として最も多く挙げられるのがDH制を採用していること。投手も打席に立つセリーグと違って代打を送られ降板ということが無いため長いイニングを投げやすくなり、9人全てと真剣勝負を繰り広げることで投手のレベルが上がる。その投手と対戦することで打者のレベルも上がる、という考え方だ。もしセパの力が同じならば普段DH制の無いセリーグは交流戦中得点力が増し、逆にパリーグは落ちるはず。しかし平均得点を比べた時、セリーグで交流戦中の方が同一リーグの試合の時よりも高かったのは2015年の広島とヤクルト、2014年の巨人とヤクルトの4チームしかない。しかも高いと言っても2014年の巨人は0.033点と微増に過ぎず実質3チームだ。逆に普段DH制を採用しているパリーグは半分の試合でDHを使えないにもかかわらず交流戦で平均得点が下がったのは2015年の西武、2014年の楽天、2013年の西武と楽天のみ。6チーム×3年の18チーム中14チームが得点力を上げていることになる。ソフトバンクに至っては平均得点が5.625点、5.542点、5点。セリーグの投手を粉砕している。
日本ではメディア露出の多いセリーグとアマチュアスポーツの中で絶大な人気を誇る高校野球でDH制が採用されていないため投手が打席に立つということに違和感は無いが世界的に見ればかなりのレアケースだ。日本以外でDH制が採用されていないプロリーグはメジャーのナリーグだけ。メジャーにおける交流戦、インターリーグの昨季までの通算成績はア・リーグの2565勝に対しナ・リーグは2299勝。その差266勝でしかも現在、2004年から12年連続でア・リーグが勝ち越し中。こちらも日本と同様、DH制を採用しているリーグが投手も打席に立つリーグを大きく上回っている。
アマチュア野球でもDH制が主流
日本の社会人や独立リーグもDH制が当たり前。大学野球連盟は全国に26連盟あるがDH制を採用していないのは東京六大学野球連盟、関西学生野球連盟の2つだけ。東京六大学野球連盟には毎年甲子園を沸かせたスター選手が多く入るが、近年は地方リーグの躍進が目覚ましく全日本大学野球選手権で番狂わせが起こることも珍しくなくなった。
関西でも有力選手は関西学生野球連盟に集まることが多く高校時代の実績や出身校のネームバリューでは頭一つ抜けている。他連盟の選手の出身校には玄人好みの古豪が多い印象だ。しかしこちらも数年前とは様相が変わってきている。毎年6月末に関西地区5連盟の選抜メンバーによるオールスター戦が行われているのだが、2009年から2013年まで阪神大学野球連盟が5連覇を達成。昨年とおととしは関西学生野球連盟が制覇し再び威厳を取り戻しつつあるが以前ほどの力の差は無い。
これらの理由は球団努力の賜物や高校時代無名だった選手が大学で花開くなど様々であろうが、DH制の有無も無関係ではないだろう。今年初めにナ・リーグでDH制採用の動きがあることが表面化しセリーグも追随かとの報道がなされた。チャンスで投手に打席が回ってきた時に代打を送るか続投させるか、というベンチワークは野球の駆け引きの一つであり投手自らが決勝タイムリーを放つというシーンは絵になるが、選手が育つ環境という面ではDH制に分がありそうだ。