冷戦終結間際以降の主要国軍事費の動向を米ドル換算でさぐる(2019年公開版)
米ソ冷戦時代が終わるとともに国家間の軍事関係も大きな変化を見せ、軍事費も変容を示している。その実情を国際的な軍事研究機関であるストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の調査公開値から確認する。
直近2018年において軍事関連支出が米ドル換算でもっとも大きかった国はアメリカ合衆国、次いで中国、サウジアラビアが続いている。
そこで2018年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国における、冷戦終結間際以降の軍事費動向を確認したのが次のグラフ。各国とも少なからぬ通貨価値の変動や国内情勢の変化、経済の伸張が生じているが、特にロシアでは1991年末までソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)として成立しており、以後所属共和国のいくつかが分離独立し、主要通貨ルーブルの大変動や構成地域の変容を経て現在に至る、大きな激変の中にある。グラフでは継続した形でグラフを生成しているが、厳密には半ば断絶した形であり、注意を要する。
比較をし易いよう縦軸を揃えたところ、6位以降の国の動向グラフがほぼ底辺にはいつくばる形となってしまった。それほど上位国の軍事費が圧倒的なのは理解できるが、それ以降の国の動向がまったく分からない。そこで上位の米中、そして過去においてはアメリカ合衆国に次ぐ値を示していたロシアをのぞいた形で縦軸を調整し、もう一つグラフを新たに生成している。
ソ連邦・ロシアはソ連邦崩壊時からロシアへの再構築の際に統括エリアが減ってしまったことに加え、通貨ルーブルが暴落したこともあり、値はソ連邦時代と比べてロシア時代は低いままとなっている。代わりに台頭したのが中国で、特に経済成長が顕著となった2005年前後からは飛躍的な伸びを示している。
米中ロをのぞいた上位陣で見ると、いずれも増加している…ように見えるが、サウジアラビアやインドのような新興国の勾配がやや大きく、伸びが急に見える。一方でフランスやイギリス、ドイツ、日本などは2007年の金融危機ぼっ発以降横ばい、あるい漸減の動きに転じているのが分かる。金融危機は軍事費への注力に関し、先進国・新興国双方にとって一つのターニングポイントとなったようだ。日本は極度な円安が重なった時期は大きな増加を示しているが。
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