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新たな充電スポット「ソーラー充電スタンド」は平時でも利用されるか?

佐藤仁学術研究員・著述家
(Hot Hardware)

シャープは2015年7月21日、日本初のソーラー充電スタンド「シティチャージ」を設置することを発表した。公益財団法人東京都環境公社(東京都環境公社)が東京都と連携して実施している「シティチャージ」を設置する事業の設置事業者に選定された。

ソーラー充電スタンドは、太陽光パネルが発電する電気でスマートフォンなどを手軽に充電でき、無料で利用できる。すでにニューヨークなどでは設置が広がっている。

▼シティチャージのイメージ図

(シャープのリリースより)
(シャープのリリースより)

今回設置される「シティチャージ」は、太陽光パネル、蓄電池、LED照明、充電テーブルで構成されている。太陽光パネルで発電した電気を蓄電池に蓄電、その電気をスマートフォンなどの充電や夜間のLED照明に使用する。

2015年秋から、旅行者が多い東京タワー付近とビジネスパーソンの多い虎ノ門ヒルズに設置し、順次設置を拡大していく。東京都環境公社が東京都と連携して、太陽光発電の啓発、非常用電源としての活用、そして外国人旅行者へのおもてなしに資するものとして実施していくことをシャープは明らかにしている。現時点では詳細な仕様は明らかになっていない。

■ニューヨークのソーラー充電スタンド「AT&T Street Charge」

アメリカの通信事業者AT&Tは2013年6月、ニューヨークの25か所で、携帯電話向けのソーラー充電スタンド「AT&T Street Charge」を設置するトライアルを数か月間実施した。これは2012年に発生し大きな被害をもたらしたハリケーン「サンディ」時の停電の教訓も踏まえた取り組みだった。2015年6月からAT&Tではニューヨークの公園など屋外29か所で無料で「AT&T Street Charge」を提供している。

AT&Tの利用者でなくても利用ができ、充電スタンドでは15ワットの発電能力を搭載したソーラーパネルと168ワットのリチウムイオン充電池が搭載されおり、1つのスタンドで6台の端末を充電することが可能だった。24時間無料で充電が可能でスマートフォンをフル充電するのに約2時間、30%充電するのに約30分かかる。

▼ニューヨークの「AT&T Street Charge」(2013年6月)

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■平時においてもソーラー充電スタンドは利用されるか?

ニューヨークで設置されたソーラー充電スタンドはソーラー(太陽光)で発電した電気を利用するため、屋外に設置してあり、そこで充電する際には、盗難されては困るから充電中もスタンドの傍に立っていないといけない。多くの人は充電している間もスマートフォンの画面を見つめている。

真夏の猛暑や真冬の極寒の時もスマートフォンへの充電のためにソーラー充電スタンドで立ち止まって充電するだろうか?最近ではカフェでも充電できるところが増えてきた。またコンビニや電気店でポータブル式の電池も安く大量に販売している。さらに最近のスマートフォンは電池の持ち時間が長いのが特徴の端末も多い。

外国人旅行者も対象にしているとのことだが、観光に来ている外国人は観光スポットを見て回りたいから立ち止まって充電するなら、ポータブル電池を購入するし、自国からポータブル電池を持参している人が多い。

ビジネスパーソンも忙しいから屋外のソーラー充電スタンドで立ち止まって充電している人は少ない。彼らの多くは冷暖房完備のカフェで座ってコーヒーでも飲みながら充電している。さらにカフェでは無料のWi-Fiが利用できる店舗も増えている。ニューヨークでもソーラー充電スタンドを利用しているのは地元の人で、時間に余裕がある人たちである。

たしかにハリケーンなどの大災害で停電した時のような非常時にはソーラー充電スタンドは利便性が高いだろうが、平時の日常生活の中でのソーラー充電スタンドの利用はどこまで浸透するのだろうか。

▼真冬のニューヨークでソーラー充電を利用したいとは思わない。

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▼「AT&T Street Charge」パイロットの取組み(2013年6月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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