悩ましい受験と生理の問題、どうする? 月経日をずらす方法や困った症状への対処を解説
大事な試験や受験に月経がかぶりそう!そう考えるだけで憂鬱な気持ちになる方、少なくないのではないでしょうか?
大事なタイミングに起こる困った月経への対策をご紹介します。
月経に関連する困った症状について
「お腹が痛くて学校になんて行きたくない」
「頭が痛くていらいらする」
「なんだかだるくてやる気が出ない」
月経中、こんなことを感じたことはありませんか?
月経期間中には腹痛や腰痛、吐き気や頭痛、いらいら、疲労感など様々な症状が起こります。全く気にならない方もいれば、寝込んでしまう方もおり、その症状の強さには個人差があります。
月経中の困った症状を「月経困難症」といい、調査や研究によってばらつきはありますが、女性の約17〜81%に月経困難症があると報告されています。(文献1)
そのほかにも月経の量が多くて困ることもあるかと思います。血のかたまりがごろっと出たり、何度もナプキンを交換しなくてはいけなかったりしませんか?普段の生活で少しでも困るな、と思うような月経の量であれば、それは「過多月経」という状態です。なかには貧血を起こし、ふらつきやめまいを感じる方もいらっしゃいます。
また月経前にも、いらいらや気持ちの落ち込み、ぼーっとする、腹痛やお腹の張りを感じるなど、体の不調を感じる方もいます。
これらは「月経前症候群」と呼ばれ、月経の3~10日前くらいから始まります。
月経前や月経中には、これらの症状の影響で勉強や試験、運動や作業のパフォーマンスが落ちてしまうことがわかっています。
月経関連症状について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
10代の女子に多い「月経の4つの悩み」を産婦人科医がわかりやすく解説します
どうすればいい?!月経困難症への対処法
(1) 自分でもできるセルフケア
月経中の痛みはストレスで強くなることがわかっています。ゆっくりお風呂にはいる、マッサージをするなどリラックスできることを行ってみましょう。適度な運動も痛みを軽くしてくれることがわかっているので、ストレッチなどもよいかもしれません。
また寝不足や不規則な生活も、月経困難症の症状を強くすることがわかっています。月経中はいつも以上に規則的な生活、しっかりと睡眠をとることを心がけましょう。
そのほかにもカフェインの摂り過ぎは、痛みを強くし、月経前症候群にも影響があることがわかっています。栄養ドリンクにも多くのカフェインが含まれていることがあるため、飲み過ぎには気をつけたいですね。(文献2,3)
(2) 鎮痛剤(痛み止め)
月経時の痛みは「プロスタグランジン」という痛み物質によって引き起こされます。なので、月経痛にはプロスタグランジンの働きを抑えるNSAIDsと呼ばれる鎮痛剤が効果的です(商品例:ロキソニン、ボルタレンなど)。
病院で処方してもらうこともできますし、ドラッグストアなどでも購入できます。
「少し痛いかも」 「痛みが出てきそうだな」というタイミングで、早めに内服すると一番効果的です。我慢して痛みが強くなってから使うと、十分に痛みがとれないので、薬を使うタイミングも重要です。
(3) 漢方薬
漢方薬でも、月経困難症を効果的に治療できる場合があります。
痛いときに使用できる漢方薬もありますが、毎日飲んで4〜12週間程度で症状がよくなってくることが多いでしょう。
その人にあった漢方薬を選ぶために、漢方医学に基づいた診断が必要です。月経前症候群に対しても、漢方薬を使用することもあります。
(4) ホルモン剤
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピル・LEP)も有効です。
最近では月経の回数を減らすことができる使用法(数ヶ月間の連続服用)もあり、より痛みへの効果が高いことがわかっています。
なお、低用量ピルは月経困難症だけではなく、月経量のコントロールや月経前症候群にも効果があります。月経時期をコントロールすることもできます。
ホルモン剤は、基本的には月経がきて半年ほど経っていれば何歳からでも内服できると言われており、低用量ピルは10代でも問題なく安全に使用できることがわかっています。ただし、骨の成長への影響を考える必要はあるので、服用をご希望の際は産婦人科で相談してみてくださいね。
月経への不安も、痛みなど月経困難症を強くする原因と言われています。自分でコントロールできる、月経はこわくない、と思えることも症状を改善する助けになります。
大事な日から月経をずらす!月経移動の方法
「来月の月経日が受験とばっちり重なりそう…なんとかすることできないの?!」そんなときには、月経をずらす=月経移動という方法があります。
「どれくらい前から準備したらいいの?」「直前でもなんとかなる?」そんな疑問にお答えします。
大きく分けて月経を早める方法と、遅らせる方法があります。
<月経を早める>
・月経3〜7日目からホルモン剤を10〜14日間内服する
<月経を遅らせる>
・月経7日目以内にホルモン剤の内服を開始する
・(排卵後の場合)ずらしたい月経の3〜7日前から中用量ピルの内服を開始する
どちらもホルモン剤を内服することで、予定の月経時期を調節します。使用するホルモン剤は、中用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(いわゆる中用量ピル)や、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピル)などがあります。
ホルモン剤の副作用として、吐き気やむかつき、頭痛などがありますが、数日で軽快することが多いです。低用量ピルの方が、これらの副作用は少ないですが、不正出血は多くなると言われており、14日間は内服するように指導されます。ほかにはとてもまれですが、血栓症のリスクもあります。
ホルモン剤の内服をやめて、2〜5日後に、「消退出血」とよばれる、「薬で起こした月経のような出血」が、予定の月経のかわりに起こります。ただホルモン剤の種類や、内服期間、個人差によって、うまくいかないこともあります。
1. 月経を早める方法
「ずらしたい予定の月経」の、「ひとつ前の月経」がはじまって3〜7日目(排卵する前)からホルモン剤の内服を開始します。10〜14日間の内服が必要です。
<イメージ図(月経を早める)>
2. 月経を遅らせる方法
「ずらしたい予定の月経」の、「ひとつ前の月経」がはじまって7日以内にホルモン剤の内服を開始し、遅らせたい時期まで内服を続けます。
もうすでに排卵している場合は、「ずらしたい月経」の3〜7日前(余裕をもって5〜7日前)から、遅らせたい時期までホルモン剤を内服します。この場合に使用できるのは中用量ピルのみです。
<イメージ図(月経を遅らせる)>
産婦人科の受診ってどんな感じなの?
「産婦人科ってなんだかはずかしい」と思うこともあるかもしれませんが、診察ではお話を聞かせてもらったり、お腹の上から超音波検査をしたりと、小児科や内科の受診と大きく変わりありません。
受診の際にされたくないことは、嫌だと言って大丈夫です。
受診の際には保険証を持参してください。月経困難症や月経前症候群など、症状から診断名が付く場合には保険がききます。
受診先によっても異なりますが、診療代は数千円程度、お薬代としてピルでは月に1200円〜3000円程度かかり、鎮痛剤や漢方薬はこれより安価です。
月経移動は自費診療といって保険がききませんが、かかる金額は数千円程度のことが多いです。
月経にうまく対処することで、受験生の皆さんが少しでも心配事が減り、安心して受験に臨めるように私たち産婦人科医は最大限のサポートをします。月経の悩みは人それぞれなので、少しでも困るなという症状がある場合には、ためらわないで産婦人科を受診してみてくださいね。
参考文献
1. Pallavi Latthe. WHO systematic review of prevalence of chronic pelvic pain: a neglected reproductive health morbidity: 2006 Jul.
2. Cochrane Database of Systematic Reviews. Behavioural interventions for dysmenorrhoea.
3. Cochrane Database of Systematic Reviews. Exercise for dysmenorrhoea.