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1月10日 新成人120万人誕生~「成人」になると「責任が重くなる」理由

竹内豊行政書士
成人になると「責任が重くなる」のはなぜでしょうか。(提供:kagehito.mujirushi/イメージマート)

総務省が昨年12月31日に発表した人口推計によると、2022(令和4)年1月1日時点の20歳の新成人は前年比4万人減の120万人(男性61万人・女性59万人)です。これは過去最少の記録です。また、新成人が総人口に占める割合は0.96%と12年連続で1%を下回りました。

さて、成人になると責任が重くなるとよく言われますが、法的観点からその理由を考えてみたいと思います。

成人年齢はなぜ20歳なのか

まず、成人年齢がなぜ20歳か考えてみましょう。

江戸時代は地域によってばらつきがあったようです。明治9(1876)年の太政官布告によって、日本で初めて成人年齢を20歳と定められました。その太政官布告を引き続いで1896(明治29)年制定の民法(明治29年法律第89号)は、「成人は20歳」としました。

20歳とした理由は定かではありませんが、当時の日本人の平均寿命や精神的な成熟度などを考慮して、20歳未満は社会生活を営む上で「未熟」であると捉えたことが理由の一つと考えられます。

そして、民法は、出生の日から起算して満20歳に達した者を成年としています(民法4条)。

民法4条(成年)

年齢20歳をもって、成年とする。

なお、今年4月1日から改正民法が施行されて、成人年齢が引き下げられて18歳となります。

私的自治の原則

民法は「私的自治の原則」を基本原理の一つにとらえています。この私的自治の原則は、「人は、みずからが私的生活関係について下した決定について、その結果を引き受けなければならない」という意味での自己責任を伴うものです。

このような私的自治の原則では、すべての市民は私的生活関係において対等の地位を保障されることから、民法は、人はだれでも理性的に判断して、意思決定をする能力を備えているとの理解から出発しています。このような私的自治の前提となる自己決定権のことを、意思能力といいます。

未成年者は制限行為能力者

しかし、世の中には、意思能力を備えた者にとっても合理的な判断を下すのが困難な取引・財産管理が数多く存在しています。意思能力があるからといって、自己の財産について合理的な管理ができるとは限りません。この現実を前にするとき、意思能力を備えている者であっても、その者が単独で結んだ契約の効力を否定したり、財産の管理・処分について下した決定を否定したりするのが望ましい場合があります。

そこで、民法は、未成年者を財産管理を中心とした事務処理面での判断能力が十分でない者(「制限行為能力者」といいます)として、未成年者が単独で行なった取引を、原則として意思能力の有無に関係なく取り消すことができるとしました。

それとともに、未成年者の財産管理その他の事務処理を補完する者として保護者を設け、保護者に対して、未成年者の財産管理その他の事務処理権限を与えました。

成人になると責任が重くなる理由

成人になることは制限行為能力者ではなくなることを意味します。したがって、保護者の庇護はなくなり単独で契約ができるという自由を手に入れることになります。その結果、責任が重くなるという成り行きです。

成人の日は、国民の祝日に関する法律(祝日法)第2条によれば「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」と規定されています。「おのなになったことを自覚し」とは、「自由と責任を自覚する」ということかもしれませんね。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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