ジブリの名作上映決定:アニメファンと映画館との関係性
6月26日より、スタジオジブリのアニメーション映画4作品(「風の谷のナウシカ」、「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」、「ゲド戦記」)が、全国372館の映画館で上映されることが発表され、話題になっています。
過去の名作を劇場で楽しめる貴重な機会への喜びはもちろん、これはアニメファンにとって、”コロナ禍で苦しむ映画館が少しでも盛り上がってくれるための朗報”でもあると思います。
『映画ファンならともかく、アニメファンが何故映画”館”の盛り上がりまで気にするの?』と不思議に思う方もいるかもしれません。
しかし近年、一部のアニメファンにとって映画館とは、ただ作品をみるだけの単なるいち施設ではなくなってきているのです。
◆週2以上で映画館に通うアニメファンの出現
コロナ禍以前より、近年の動画配信サービスやネット利用の増加に伴う映画や映画館離れは度々指摘されていました。
しかし、そんな時代の流れと逆行し、現在映画ファンに勝らずとも劣らず頻繁に映画館を利用しているのがアニメファンです。
テレビアニメの先行上映等をはじめ、声優ライブや2.5次元舞台のライブビューイングもあり、もともと映画館を利用する機会は多かったアニメファンですが、2016年頃、アニメ映画を”複数回鑑賞する”という文化が根付きだしてから、その頻度はさらに増加したように思います。
近年では、昨夜「今夜くらべてみました」で特集されていた「名探偵コナン」の劇場版作品をはじめ、「KING OF PRISM」シリーズや「プロメア」、「劇場版 うたの プリンスさまっ マジLOVEキングダム」などの作品で特に顕著だったのですが、複数回といっても2、3回どころか週2以上で、多ければ合計50回~100回以上も、同じ映画を映画館でみるファンが出現しはじめたのです。
◆ファンにとっての”ホーム”となった映画館
複数回鑑賞のきっかけとなるのは、もちろん作品そのものへの思い入れです。
しかしそうしてアニメファンが頻繁に映画館へ足を運ぶようになることで、劇場に通うアニメファンと、アニメファンを何度も迎える映画館との間にも、これまでにない関係性がみられるようになってきました。
アニメファンは、自分が応援している作品を上映し続けてくれる・ファンを毎日受け入れ続けてくれる映画館に対して感謝と思い入れを持つようになり、映画館側は、そうして毎日のように劇場に足を運び続けるファンに対して、独自の展示やイベント上映を企画し、ファンと一緒に作品を盛り上げていくようになっていったのです。
そうした中で、映画「プロメア」にて、応炎上映(応援上映)や独自の劇場装飾などを行い作品を盛り上げていた川崎チネチッタとイオンシネマ海老名や、
劇場に足繁く通うファンに応え、「劇場版 うたの プリンスさまっ マジLOVEキングダム」の上映を続けたことで、ファンの間で”実家”と呼ばれ親しまれているイオンシネマ港北ニュータウン、
「KING OF PRISM」シリーズにおいて、独自の劇場装飾や毎月のキャラクターの生誕上映を欠かさず行っていたディノスシネマズ札幌劇場(※2019年6月2日閉館。今年7月22日に「サツゲキ」としてリニューアルオープン予定)
といった、作品ファンの間でちょっとした”聖地”のような存在になっていく劇場も生まれてきました。
こうしてファンと映画館との新しい関係性が生まれたことによって、今や一部のアニメファンにとって映画館とは、好きな作品をみるための単なるいち施設というよりも、スポーツチームのサポーターにとってのホームスタジアムと同じくらい特別な、思い入れのある”ホーム”のような存在になってきているのです。(上記の劇場に限らず、各地域のファンにとって作品のために何度も足を運ぶ映画館があれば、そこがそれぞれのファンにとってのホームのような存在になっています)
◆久々の明るい映画館関連のニュース
そんなアニメファンにとって、コロナ禍で思い入れのある映画館の経営に大きな影響が出ることは、新作アニメ映画の公開延期と同じくらい由々しき事態でもありました。
そのため、中には以前ほど足繁く映画館に通えなくなったアニメファンが、映画ファンに混じってクラウドファンディングや未来チケットの購入などで、日ごろお世話になっているホーム映画館を応援するといった動きもあります。
今回のジブリ作品の劇場上映は、そうして作品だけでなく映画館も応援したいと思っているアニメファンにとっては、これから徐々に映画館が活気を取り戻していくためのきっかけのひとつとして、久々の明るい映画館関連のニュースでもあったと思うのです。
もちろんまだまだ予断を許さない状況であり、劇場での映画鑑賞にはウィルス感染防止の取り組みは絶対に欠かせません。
それらがしっかり行われたうえで、上映される作品はもちろん、それらを楽しむ場所としての映画館も、これから徐々に活気を取り戻していくことを、心より願うばかりです。