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天皇陛下とトランプ大統領の会見に危惧はあるか

山下晋司皇室解説者
(写真:ロイター/アフロ)

「公式実務訪問賓客」としてトランプ大統領が来日

 10月24日、政府は米国のトランプ大統領がメラニア夫人とともに11月5日~7日、公式実務訪問賓客として来日すると発表した。滞在中に天皇皇后両陛下とも会見することになっている。

 今回は国賓ではなく、公式実務訪問賓客としての来日である。外国から賓客を招く場合、国賓、公賓、公式実務訪問賓客、実務訪問賓客、外務省賓客などがある。

 例えば、国賓の場合、対象は国王や大統領などであるが、閣議決定事項である。そして、皇室としては、歓迎行事、ご会見、晩餐、ご訪問といった国賓接遇のセットメニューがある。内容は、次のとおりである。

 歓迎行事:以前は迎賓館で行われていたが、平成18年以降は宮殿の東庭(雨の場合は宮殿内)で行われている。両国の国歌が演奏され、賓客は自衛隊の儀仗隊の栄誉礼を受ける。

 ご会見:歓迎行事に引き続いて、宮殿の竹の間で行われる。

 晩餐:歓迎行事、ご会見と同じ日の夜に宮殿の豊明殿で行われる。

 ご訪問:天皇皇后が賓客の宿舎を訪ねて、お別れの挨拶をする。

 国賓の場合、通常は3泊4日の日程で、天皇とプレゼントの交換などもあり、両国の時間的、金銭的な負担も大きい。今回は時間の余裕がないのだろう。公式な来日ではあるが、儀礼的な行事がほとんどない公式実務訪問賓客となった。

 大統領等が公式実務訪問賓客として来日する場合、皇室ではご会見、午餐(昼食会)がセットメニューだったが、天皇陛下のご公務軽減のため、昨年から午餐がなくなり、現在はご会見のみとなっている。

 米国の大統領だから天皇陛下との会見がセットされたということではなく、どこの国の大統領であっても、公式実務訪問賓客として来日する場合は、天皇陛下との会見がセットされるというわけである。

 トランプ大統領就任後の初来日なので、政府としては国賓として迎えたかったのではないかと思うが、オバマ前大統領も初来日は国賓ではなく、2期目の2014年4月に国賓として来日した。トランプ大統領も任期中には国賓として来日するのではないだろうか。

会見にあたり危惧はあるか

 トランプ大統領の言動にはアメリカ国内だけではなく、海外からの批判も多い。

 初外遊となった今年5月、ベルギーで開催されたNATO会議で加盟国首脳との写真撮影の際、自分が前列に立つためモンテネグロの首相を押しのけたり、7月のフランス訪問時にはマクロン大統領のブリジット夫人に対し「いいスタイルだ」と発言し、欧米のメディアから批判されている。

 そのため、天皇陛下との会見でも何か失礼な言動があるのではないかと心配する向きがある。筆者も週刊誌からその危惧についてコメントを求められることもあった。もっとも週刊誌は危惧するというより、それを期待しているのかもしれないが。

 トランプ大統領も天皇陛下に対する日本国民の意識は当然承知しているだろう。もし、天皇陛下に対して失礼な言動があった場合、日本国民の反感は相当大きいものになると予想される。そうなると安倍総理としてはトランプ大統領との信頼関係が築きにくくなるだろう。よって筆者は、大統領は礼節をもって天皇陛下と接するだろうと思っている。心配することはないのではないか。

 トランプ大統領が日本をどう見ているかは、天皇陛下との接し方がひとつのメルクマール(指標)になるといっても過言ではない。

皇室解説者

昭和31年 大阪市生まれ、関西大学卒。20数年の宮内庁勤務後、平成13年に退職。宮内庁では昭和63年~平成7年まで長官官房総務課で報道を担当。昭和天皇の崩御・大喪の礼、平成の即位の礼・大嘗祭、秋篠宮殿下の結婚、皇太子(現在の天皇陛下)の結婚などの諸行事を報道担当として経験。平成時代の天皇皇后の中国訪問、米国訪問及び皇太子(現在の天皇陛下)のモロッコ・英国訪問に報道担当として同行。宮内庁退職後は出版社役員を経たのち独立。独立後は、BSテレ東・テレビ東京「皇室の窓スペシャル」の監修のほか、週刊誌・テレビなど各メディアでの解説、記者勉強会の講師、書籍・テレビ番組の監修、執筆、講演などを行っている。

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