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新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン 今シーズンは両方接種して流行に備えよう

忽那賢志感染症専門医
(写真:ロイター/アフロ)

9月20日からオミクロン株対応ワクチンの接種が開始されました。また10月からはインフルエンザワクチンの接種が開始されます。

今シーズン、それぞれのワクチン接種の意義についてどのように考えればよいのでしょうか?

新型コロナは毎年冬に流行っている

2020年から2022年にかけての冬の新型コロナの流行状況(厚生労働省資料より)
2020年から2022年にかけての冬の新型コロナの流行状況(厚生労働省資料より)

新型コロナウイルスは「気温が低いほど、湿度が低いほど広がりやすい」という性質があります。

このため、夏よりも冬の方が流行りやすいと考えられています。

新型コロナの流行が始まって以降、これまでも冬に感染者の増加が見られました。

現在第7波のピークは超えて新規感染者は減少傾向にありますが、今年も冬に新型コロナが流行る可能性は高いと考えられます。

オミクロン株対応ワクチンの作用機序(フィンランド保健福祉研究所の資料より筆者作成)
オミクロン株対応ワクチンの作用機序(フィンランド保健福祉研究所の資料より筆者作成)

9月20日からオミクロン株対応ワクチンの接種が開始されています。

まずは、従来の新型コロナワクチンの4回目のワクチン接種の対象となっていた高齢者、基礎疾患のある人、医療従事者などがオミクロン株対応ワクチンでも接種対象となっていますが、12歳以上で初回接種(1・2回目接種)完了から5ヶ月以上経っている方については、予約に空きがあれば接種可能となっています。

オミクロン株対応ワクチンの接種対象者と想定されているスケジュール(厚生労働省資料より)
オミクロン株対応ワクチンの接種対象者と想定されているスケジュール(厚生労働省資料より)

すでに4回目の接種を完了した方については、現時点では接種の対象になっていませんが、これまで追加接種の間隔は「最後の接種から5ヶ月以上」経っている人が対象になっていましたが、オミクロン株対応ワクチンについては3ヶ月に短縮することを検討しているようですので、早ければ10月半ば以降に接種可能となるかもしれません。

オミクロン株対応ワクチンについての効果や副反応についてはこちらをご参照ください。

今年はインフルエンザも流行るかもしれない

オーストラリアのインフルエンザの流行状況(オーストラリア保健省)
オーストラリアのインフルエンザの流行状況(オーストラリア保健省)

新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2019-2020シーズン以降は感染者が極めて少ない状態で推移しています。

しかし、だからといって「どうせ今シーズンも流行らないだろう」とたかをくくるは危険かもしれません。

図は2022年のオーストラリアにおけるインフルエンザの報告数を示しています。

インフルエンザの流行時期が日本と異なり5月〜9月頃にピークを迎える南半球のオーストラリアでは、過去2年間は日本と同様にインフルエンザの流行がありませんでしたが、今シーズンは過去に例のないほどインフルエンザ患者の増加が報告されました。

オーストラリアでのインフルエンザの流行は、その後の日本での流行を予測する上で参考になることが多く、日本でも今年の冬はインフルエンザが流行する可能性があります。

日本では2019-2020、2020-2021、2021-2022という3つのシーズンでインフルエンザの大きな流行がみられませんでしたので、3年間に渡りインフルエンザに対する免疫を持たない人が増え続けていることになります。

次にインフルエンザが流行する際は、オーストラリアと同様に、これまでのシーズンを大きく上回る大流行になる可能性があります。

今年も10月からインフルエンザワクチンの接種が全国の医療機関で開始されます。

今シーズンのインフルエンザの流行に備えて、インフルエンザワクチンの接種をご検討ください。

特に重症化するリスクの高い高齢者、妊婦さん、ステロイドなどの薬を飲んで免疫が弱っている方などはインフルエンザワクチンを接種することが強く推奨されます。

特にワクチン接種が推奨されるのは以下のような方々です。

インフルエンザに罹ると重症化しやすいためワクチン接種が強く推奨される方

・生後6ヶ月から5歳の小児

・50歳以上の人

・慢性肺疾患(喘息を含む)、心血管疾患(高血圧症を除く)、腎疾患、肝疾患、神経疾患、血液疾患、代謝性疾患(糖尿病を含む)を有する成人および小児

・免疫不全者(免疫抑制剤使用、HIV等を含む)

・インフルエンザシーズン中に妊娠している人、または妊娠する予定の人

・アスピリンやサリチル酸を含む薬を服用しており、インフルエンザ罹患後にライ症候群を発症するリスクのある小児および青年(生後6ヶ月から18歳まで)

・著明な肥満(BMI>40の成人)

・介護施設や慢性期病棟の入所者

米国CDCの推奨(MMWR Recomm Rep. 2022 Aug 26; 71(1): 1–28.)を基に筆者作成

今年は十分なインフルエンザワクチンの供給が予定されていますので、上記に該当しない方もぜひ接種をご検討ください。

新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは同時接種可能

新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンとの接種間隔(厚生労働省資料より)
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンとの接種間隔(厚生労働省資料より)

「今年はオミクロン株対応ワクチンもインフルエンザワクチンも打たないといけない・・・どっちを先に打てばいいんだ・・・」と思われる方も多いと思います。

確かに当初は新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは同時に接種することで副反応の増強や有効性の低下が懸念されていたことから、同時接種はできませんでした。

しかし、同時接種を行ってもそれぞれのワクチンの有効性が損なわれることはないことが分かったこと、そして副反応についても特に増強することがないことが分かったことから、今シーズンから同時接種が可能となりました。

また、同じ日でなくとも、14日空ける必要はなく「接種間隔についても問わない」となりました。

例えば今日インフルエンザワクチンを打って、明日新型コロナワクチンを接種する、ということも可能になりました。

これにより、柔軟に接種スケジュールを立てることが可能となります。

ということで、今年は新型コロナとインフルエンザの同時流行に備えて、両方のワクチン接種をご検討ください!

※大阪大学大学院医学系研究科では、新型コロナに感染したことのある方の後遺症の症状について継続的に調査を行っています。研究の詳細はこちらからご覧ください。これまでに新型コロナと診断されたことのある方は、こちらからアプリをダウンロードいただきぜひ研究にご協力ください。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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