オミクロン株対応ワクチン これまでに分かっていることと、まだ分かっていないこと Q&A
当初10月以降とされていたオミクロン株対応ワクチンですが、高齢者など4回目接種対象者については9月中旬に接種開始が前倒しされることになりました。
オミクロン株対応ワクチンについて現時点で分かっていること、分かっていないことについてまとめました。
オミクロン株対応ワクチンって何?
オミクロン株対応ワクチンは、名前の通りオミクロン株にも効果が期待されるワクチンです。
従来のmRNAワクチンは、野生株(流行初期の新型コロナウイルス)のスパイク蛋白を細胞内で作り出し、これに対して免疫が作られることで新型コロナウイルスの感染や重症化を防いでいました。
しかし、オミクロン株はこれまでの新型コロナウイルスから大きく変異したため、従来のmRNAワクチンでは感染を防ぐことが難しくなっていました(一方、重症化を防ぐ効果はオミクロン株に対しても保たれています)。
オミクロン株対応ワクチンは、野生株とオミクロン株の両方のスパイク蛋白の設計図を持ったmRNAを接種することで、野生株とオミクロン株に対して免疫が作られることが期待されています。
モデルナのオミクロン株対応ワクチン(mRNA-1273.214)は、野生株25μgとオミクロン株25μgを合わせて50μgにしたものであり合計の投与量は従来ワクチンの追加接種の用量と同量であり、ファイザーのオミクロン株対応ワクチン(BNT162b2+BNT162b2 Omi)についても野生株15μgとオミクロン株15μgを合わせて30μgにしたものであり従来ワクチンの接種量と同量になっています。
オミクロン株対応ワクチンのオミクロン株への効果は?
現時点で分かっているのは、従来のmRNAワクチンに比べて、オミクロン株対応ワクチンはオミクロン株に対する中和抗体の量が多く産生されるようになる、ということです。
・モデルナのオミクロン株対応ワクチン(野生株/オミクロン株BA.1)を4回目のブースターとして接種した場合、従来のmRNAワクチンと比較してBA.1やBA.5に対する中和抗体が1.7倍産生された
・ファイザーのオミクロン株対応ワクチン(野生株/オミクロン株BA.1)は、従来のmRNAワクチンと比較してBA.1に対する中和抗体が1.56〜1.97倍産生された
これまでのワクチンと中和抗体に関する研究の結果からは、それぞれの変異株に対する中和抗体の量と感染予防効果が概ね相関することが分かっていました。
そして今のmRNAワクチンではオミクロン株に対する中和抗体が十分に産生されないことから、感染を防ぎ切ることが難しくなっていました。
オミクロン株対応ワクチンにより、オミクロン株に対する中和抗体の産生量が増えれば、感染予防効果も高くなることが推定されます。
ただし、オミクロン株対応ワクチンがオミクロン株に対してどれくらい感染を防ぐ効果があるのかについてはまだヒトでのデータがありません。
理論的には、これまでのワクチンよりはオミクロン株に対する感染予防効果が高くなることが期待されます。
オミクロン株対応ワクチンの副反応は?
モデルナ社、ファイザー社のオミクロン株対応ワクチンの副反応についてもデータが発表されています。
従来のmRNAワクチンと同様に、接種部位の痛み、腫れ、発赤、全身症状としてのだるさ、頭痛、筋肉痛、関節痛、寒気、発熱などの症状が報告されています。
現時点では従来のmRNAワクチンを上回る副反応ではないと考えられます。
なお、接種人数が十分ではないことから現時点では心筋炎など稀な副反応の頻度についてはまだ分かっていません。
過去に感染した人もオミクロン株対応ワクチンを接種できる?
前述のモデルナ社のオミクロン株対応ワクチンの接種後の中和抗体価の推移では、過去に感染した人ではより大きな中和抗体価の上昇が得られています。
この結果からは、過去に感染した人がオミクロン株対応ワクチンを接種することで、オミクロン株に対する高い感染予防効果が長期に維持される可能性があります。
オミクロン株以外の変異株への効果は?
野生株とオミクロン株の2価ワクチンを接種することで、従来のワクチンよりもアルファ株、ベータ株、デルタ株といった他の変異株に対する中和抗体が増えるようです。
同様の結果は、野生株とベータ株の2価ワクチンを接種した場合の様々な変異株に対する中和抗体の産生に関する研究結果でも示されています。
この結果からは、野生株のmRNAワクチンだけを接種し続けるよりも、他の変異株も含む多価ワクチンを接種する方が様々な変異株に対応できるようになる、ということが示唆されます。
将来現れるであろう変異株に対しても効果が期待されますが、どれくらい有効なのかは未知数です。
アメリカはBA.5対応ワクチンを承認したらしいけど、そっちの方がいいんじゃないの?
日本が導入しようとしているオミクロン株対応ワクチンは、野生株とBA.1というオミクロン株のスパイク蛋白の設計図を持ったmRNAを併せ持ったワクチンです。
現在日本で流行しているBA.5は、BA.1と同じオミクロン株の亜系統ですが、全く同じウイルスではないため、オミクロン株対応ワクチンを接種した人が持つBA.5に対する中和抗体はBA.1と比べると低くなっています。
アメリカは、よりBA.5に効果が高いと考えられる野生株とBA.5のスパイク蛋白の設計図を持ったmRNAを導入する予定にしていますが、ヒトでの中和抗体の結果はまだ得られていません。
マウスを用いた実験では、BA.5対応ワクチンの方がBA.5に対する中和抗体が高くなるという結果が出ているようですが、マウスにBA.5のウイルスを感染させたときにはBA.1対応ワクチンを接種したマウスもBA.5対応ワクチンを接種したマウスと同等にウイルスの増殖を防げたという結果であったことから、どこまで臨床的な違いがあるのかは現時点では明らかではありません。
オミクロン株対応ワクチンの効果はどれくらい続く?
オミクロン株対応ワクチンによる有効性がどれくらい続くのかについては、まだ分かっていません。
ワクチンの有効性は、感染予防効果と重症化予防効果に分けられ、これまでの知見からは感染予防効果は時間経過とともに低下し、重症化予防効果は比較的長期に維持されます。
また感染予防効果は変異株の種類によって変わってきますが、重症化予防効果は変異株の種類が変わっても大きくは変わらずに保たれてきました。
今後、どれくらいの間隔で追加接種が必要になるのかについては、より長期間のデータを見て判断されることになります。
日本でのオミクロン株接種対象者や接種開始時期は?
先日の「第36回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」では、初回接種を終了した全ての12歳以上の人が対象となる見込みです。
初回接種とは、2回の接種を指しますので、追加接種をしていない人も含まれます。
このうち、4回目の接種対象者となっている人に対しては、9月中旬を目処に1価の従来のワクチンから、オミクロン株対応ワクチンに切り替えられるとのことです。
また4回目の接種対象者となっていない方については「4回目接種の一定の完了が見込まれた自治体においては、その他の初回接種が終了した者の接種への移行を行うこと」となっており、順次切り替えられる予定のようです。
対象者には接種券が配送されるようですが、すでに手元にある3回目または4回目接種用の接種券も使用可能になる見込みです。
ちなみに私のようにすでに4回目を接種している人については、オミクロン株対応ワクチンの接種対象になっていないようです(ぴえん)。
※9月6日に政府資料が発表され、4回目接種済みの方も10月下旬以降に順次接種可能になる見込みのようです。
オミクロン株対応ワクチンは接種した方が良い?
現在接種されている従来のmRNAワクチンと比べると、安全性については変わりなく、有効性については上回る可能性が高そうです。
4回目の接種対象者は9月中旬から、それ以外の方も早ければ10月からということですので、当初よりも早く接種できるようになったことから、オミクロン株対応ワクチンを待つという方が多いと予想されます。
オミクロン株対応ワクチンを待つ、という方も現在の高度な流行状況では接種するまでに感染してしまう可能性がありますので、接種するまでに感染しないように十分にご注意ください。
すでに4回目のワクチン接種を済ませてしまった、という方も、今のワクチンでも重症化予防効果については十分効果がありますのでご安心ください。
また、ワクチン接種は重要な予防手段ですが、ワクチン接種をしていても感染してしまうことはあります。
ワクチン接種だけでなく、屋内でのマスク着用、こまめな手洗い、など複数の対策を組み合わせることで、より感染リスクを下げることができます。
ワクチン接種後も基本的な感染対策は続けるようにしましょう。
※大阪大学大学院医学系研究科では、新型コロナに感染したことのある方の後遺症の症状について継続的に調査を行っています。研究の詳細はこちらからご覧ください。これまでに新型コロナと診断されたことのある方は、こちらからアプリをダウンロードいただきぜひ研究にご協力ください。