WBAバンタム級王者に刺激を受けたOPBFライト級チャンプ
10月13日に、3-0の判定で井上拓真を下してWBAバンタム級新チャンピオンとなった堤聖也。高校時代に敗れた相手に、世界戦の舞台でリベンジを果たした姿に、熱い視線を送っていたのがOPBF東洋太平洋ライト級チャンピオンの宇津木秀だ。
宇津木と堤は平成国際大学の先輩・後輩。堤が角海老宝石ジムに移籍するまでは、共にワタナベジムで汗をかいた。一つ年上の宇津木が、後輩の快挙を語った。
「聖也が高校卒業する間近の時だったかな。僕が大学2年になろうとする頃に、練習参加に来たのが出会いだったように記憶しています。自分を持っている選手だな、と。
ボクシングに対する熱があって、いい選手だなと感じましたね。『強くなりたい』という気持ちが前面に出ていました。同時に、古着やコーヒーに物凄いこだわりがあって、変わってるな、とも思いました(笑)」
宇津木は大学時代、ボクシング部のキャプテンを務めたが、堤は可愛がっていた後輩の一人である。
「自分で追い込めるタイプです。練習は必死でしたね。お互いに気付いた点を述べ合っていました。関東2部でしたが、大学時代の彼は、判定に負けてしまうタイプでした。
ただ、合同練習は自分が意味がないとやらないところがあって、僕がキャプテンだった時は、まとめるのが大変でした。その時は、厄介なヤツでしたね。堤が4年生の時に2部優勝したのですが、彼はポイントゲッターとなっていましたよ。確か副キャプテンだった筈です。
僕はちょっと社会人として働いた後にプロに行くことを決めたので、聖也と同じ日にデビューしたんです。競争心じゃないですが、聖也よりも結果を残さなければ、という思いはありましたね。
プロに入ってからも、切磋琢磨する関係でした。お互いにスパーを見て、感じたことを口にしていました。しょっちゅう一緒に食事にも行きましたね。聖也って、後輩思いなんですよ。面倒見が良く、いいヤツだなと感じることが多かったですよ」
井上拓真戦が決まった時、宇津木は勝利を確信したという。
「あいつの執念って、目を見張るものがあるんですよ。特に試合では。ど根性というのかな…。巻き返しも凄い。余裕を感じさせていた井上くんに噛み付けるんじゃないかと。聖也のリズムが飲み込んでいくだろうと感じていました。予想通りの展開でしたね。
1ラウンド目はわからなかったですが、2、3で、聖也、これ行けるかなと感じて、5〜6でこれなら勝つと思っていました。元々、戦略を立てて戦う選手ですが、それを遂行しているなと。判定を聞いた時は、本当に嬉しかったですね。同時に、先に世界を獲ったという意味では悔しさも覚えました」
宇津木も11月21日に、WBOアジアパシフィック同級王者の安田克也と2冠戦を控える。
「今、サウスポーとのスパーリンングを重ねていますが、先日、ラスベガスでイスマエル・サラスさんに教えてもらった上半身を動かしながら的を絞らせない、ことを意識しています。でも、いい時も悪い時もあって…納得できないときは、足を動かす、と。失敗しながら反省してという感じですね。
安田選手はやりにくい相手でしょう。前に出てくるんじゃなく、距離をとって、カウンターを狙うタイプですから、聖也のように心が折れることなく、しっかり戦略を立てて臨みます」
後輩から刺激を受けたOPBF王者は11月21日、どんな戦いを見せるか。