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目的は食糧…北朝鮮将校の美人妻「危険な情事」の悲惨な結末

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)慶源(キョンウォン)郡の国境警備隊で、中隊長を勤めるエリート将校の夫が妻を殺害する事件が起きた。不倫現場を目の当たりにしてしまったのだ。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

国境警備隊第27旅団のA中隊長は先月下旬、他地域に出張に出かけ、28日の明け方に自宅に戻った。その目に飛び込んできたのは、闇夜の情事の真っ最中だった妻Bと同じ部隊の部下のC士官長(行政担当の下士官)の姿だった。

A中隊長は逆上し、刃物を振り回して妻Bを刺し死亡させた。C士官長は命からがら現場から逃げ出し無事だった。

(参考記事:金正恩も止められない「サウナ不倫」に庶民の怒り

中隊長は任務を解かれ、旅団の保衛部(秘密警察)に勾留されて裁きが下るのを待っている。不倫関係にあったC士官長は、生活除隊(不名誉除隊)の処分を受けた。

大隊の政治部は、事件に関する不穏な噂が広まらないように、将校用の兵舎のある地域への立ち入りを禁じた。しかし、あっという間に地元住民の間に広がってしまった。町は、事件の噂で持ちきりだ。

「中隊長が食糧を少しでも多く手に入れようと士官長と親しくしていたのが発端ではないか」
「士官長を家に上げた中隊長にも責任の一端がある」
「妻は良からぬことを働いたが、夫に殺されたのは気の毒だ」

C士官長は、中隊の食糧を司る任務を任されていた。上層部から受け取った食糧を軍官(将校)やその家族、一般の兵士に分配する役割だ。また、軍服などの衣類、石鹸などの生活必需品の分配も行っていた。A中隊長は、配給で便宜を図ってもらおうとC士官長を自宅に招き入れ、接待をしていたようだ。その過程で中隊長の妻と知り合い、不倫関係に陥った模様だ。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

「士官長が帳簿をいじると、コメがを多めにもらえる。軍官やその家族は、士官長と親しくなろうとする。今回の事件も中隊長が士官長といい関係を保つために、家に遊びにこさせていたのが問題の発端のようだ」(情報筋)

困ったのは、事件とは関係のない軍官やその家族だ。休日ともなれば、部下を自宅に呼びつけ畑仕事、煙突の修理など様々な雑用をさせていたが、これができなくなったのだ。一方、面倒な仕事を押し付けられていた兵士たちは、喜びの声をあげている。

「軍官やその家族は、末端の兵士を下男扱いする。今回の事件で、士官長が中隊長の自宅に入り浸っていたのは別の理由からだが、兵士からは、事件のおかげで軍官の家に行って雑用をしなくてもよくなったので、むしろ喜ばしいとの反応を示している」(情報筋)

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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