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9月入学を「課題がある」の一言だけで否定する文科相の尊大ぶり

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

「9月入学」について、萩生田光一文部科学大臣(文科相)が28日の会見で「社会全体で共有できるか課題があるという認識を示しました」と語ったそうだ。4月28日付けの「NHK NEWS WEB」が伝えている。

 記者会見で萩生田文科相は、「こういう事態が生じたときから、省内では考えていかなければならないテーマとして、さまざまなシュミレーションはしてきている。確かにメリットはいろいろある」と、9月入学を肯定するかのような発言をしている。

 しかし一方で、「文部科学省だけで完結する問題ではなく、社会全体に影響を及ぼすもので、各方面との調整が極めて必要な案件だ。ほんとうに社会全体でこのスケジュール感を共有できるのかどうかという課題がある」とも述べたという。

 検討はしているが、各方面との調整が難しいので真剣には考えたくない、と言っているようなものだ。「やっている」というポーズはみせながら、実際には何もやっていないのではないかと疑いたくなる。

 萩生田文科相の発言について『毎日新聞』(4月28日付、Web版)は「『9月入学』について省内で検討していることを明言した」と書いているが、実際に検討されているかも疑わしい。9月入学を求める声が高まるなかで、宮城県の村井嘉浩知事や東京都の小池百合子知事からも前向きな発言がされるなかで、文科省として「何もしていない」とは言えないのかもしれない。

 ほんとうに文科省内で検討していて、「課題がある」との結論にいたったのなら、その課題を具体的に示すべきである。それを示さずに、萩生田文科相は「課題がある」の一言で9月入学を否定している。

 非常事態宣言が発出されて、学校の休業(休校)は連休明けの5月6日までと予定されている。しかし、すでに神戸市や尼崎市が休校を5月末まで延長することを明らかにし、埼玉県も県立学校の休校を延長すると発表している。

 新型コロナウイルス感染症の拡大が収束する目処がまったくたたない状況のなかで、同じような判断をする自治体は、今後、増えていくことはまちがいない。そうなると、9月入学も現実的なものになってくる。

 そうであれば、文科省としても本気になって9月入学を検討すべきときにきているはずである。検討して課題があるのなら、それを明らかにして、議論をすすめるべきである。

 ただ「課題がある」とだけ言われても、誰も納得できない。高まりつつある9月入学を求める声に対する答にもなっていない。

「課題がある」の一言で黙らせようとする横柄な姿勢は、そろそろ止めたほうがいいのではないだろうか。ほんとうに検討しているのなら、そこから導きだされたものを明らかにして、前向きな議論をしていく姿勢こそが必要である。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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