金正恩が「拷問クラブ」で自らハマった最悪な状況
ウクライナのクレバ外相は7日、ツイッターで、親ロシア派武装勢力「ドネツク人民共和国」から引き渡されたイギリス人男性ポール・ユーリーさんの遺体に「言うに堪えないほどの拷問を受けた痕跡がある」と明らかにし、「民間人を拘束し拷問するのは、野蛮で凶悪な戦争犯罪行為だ」と非難した。
ユーリーさんは4月、ウクライナ南東部ザポロジエ近郊で4月に拘束されていた。親ロシア派側は、ユーリーさんはウクライナ側の外国人傭兵だったと主張。死因についても「持病の悪化とストレス」によるものだと説明している。
事実を見極めるには十分な検証が必要だろうが、ロシア軍がウクライナで働いてきた蛮行を思えば、親ロシア派の主張を信じる気にはなれない。
ウクライナ東部の親ロシア派勢力が統治する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」はこれまでに、ロシアとシリア、北朝鮮の3カ国によってのみ承認されている。シリアも自国内戦での戦争犯罪や人道に対する罪の疑いをかけられている。
北朝鮮は休戦中である朝鮮戦争の当事国だが、自国内での人権問題などで、金正恩総書記が人道に対する罪に問われる可能性が取りざたされてきた。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
また、北朝鮮での観光ツアー中にスパイ容疑で拘束され、昏睡状態で帰国直後に死亡した米国人男性オットー・ワームビアさんの体に拷問を疑わせる痕跡があったと指摘されてもいる。
親ロシア派勢力に対する国家承認を巡っては、ロシアと親密なベラルーシやイランすら慎重な姿勢を取っている。その理由は、ウクライナ戦争の当事者、というよりは加害者側とみなされることが、国家の将来にとって大きなリスクと認識しているからではないだろうか。
一方の北朝鮮は、新ロシア派支配地域への労働者派遣やロシア軍への弾薬供給の可能性が取り沙汰されるなど、ウクライナ戦争に深入りしていきそうな兆候が見られる。金正恩氏としては、「核兵器を持っている限り、どうせ米欧との関係修復はない」と踏み、国連安保理の常任理事国でありエネルギー資源や農業生産の豊富なロシアから「実利」を得ようとしているのかもしれない。
そのような思惑が、短期的には北朝鮮に利益をもたらす可能性はある。しかし、戦争犯罪や人道に対する罪を疑われる国同士で「友好クラブ」を形成することは、日本社会で言う所の「反社会勢力」を結成することに等しい。そのような国の指導者とは、国際社会の誰もビジネスができなくなるということだ。
金正恩氏はまだ若い。残された人生の時間が長いというのは、政治家にとって有利なことだろう。しかし選択を誤り、将来の可能性を自ら閉じてしまうならば、彼の若さも何ら意味を持たなくなるだろう。