自宅待機・勤務の今こそ、フィンランド流の心得
新型コロナウィルスによる自宅待機や自宅勤務が話題だ。
テレビをつけると感染者の報道や自粛による影響が報じられている中、徐々に「自宅にいながら〜」と新しいビジネスモデルや過ごし方に注目が集まっている。
約5年ほど前から東京オリンピック・パラリンピック競技大会の交通混雑緩和を図るため、また仕事の生産性の向上を目的として、総務省や関係府省がテレワーク(時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態)を推奨してきた。だが、私達が仕事や生活で実感できるほど日本社会に浸透していないと感じる。
「国民が必要に迫られた今こそ、真剣に働き方や過ごし方を見つめ直し、より豊かな社会作りに向かっていくはずだ」
そう思った時、ふとフィンランドのことを思い出した。
昨年、仕事の機会に恵まれて1週間ほど首都・ヘルシンキに滞在した。実際に現地に行ってみると、日本にいた時と同様のイメージに溢れていた。
フィンランド発のファッションブランド「マリメッコ」を着た人々。
図書館や美術館、教会などの美しい建築。
体が温まったら海やプールに飛び込むユニークなサウナ。
お土産コーナーに溢れかえるフィンランド発のムーミングッズ。
人や交通量の多いパリなどの喧騒とは違う、穏やかな日々を過ごした。ただ行ってみないとわからなかったことが、働き方や過ごし方に対する考え方の部分だった。
ライフスタイルに投資
街には高級ファッションブランドのショップはほとんどなく、代わりに高級インテリアショップや雑貨店が多く並ぶ。モダン&コンテンポラリー家具を取り扱う「ボーコンセプト」や昨年日本にも初上陸した「アルテック」など、日本人でもインテリアが好きで、ある程度の予算感がないと手が出せないデザイン性が高いショップがいたる所にあったのが印象的だった。
実際、フィンランド人に話を聞くと「外は寒いし、外食は高いから、自宅でゆっくりご飯や仕事をするためにライフスタイルに投資している人が多い」ということだった。マーケティングの仕事に携わる彼女はそう言って、「マリメッコ」のクッションに横たわりながらパソコンのキーボードを叩いていた。その姿、話し方は、仕事に追われている余裕のなさでもなければ、サボっているわけでもなく、心の落ち着き...豊かさが現れていた。
あくまで1週間の滞在で出会った人や体験話だが、自国のカルチャーやクリエイターを愛し、身の丈にあったワーク・ライフ・バランスを送る姿は今の私達に必要なことだと感じた。
そして、新しいビジネスモデル等の目新しさや便利な機能性に注目が行きがちだが、彼らの仕事ぶりを見ていると特段、最先端なシステムを導入している印象はなかった。むしろ、人や社会がテレワークすることへの理解の方が大切だと感じた。
これからは職場にいる時間より自宅にいる時間の方が長くなる社会が日本でも当たり前になるかもしれない。そんな時、あなたが満たされる環境を整えることがよりよい仕事や豊かな人生に繋がるかもしれない。