『映画』コンテンツが、ネット・ハリウッドへ向かう理由
KNNポール神田です。
あと5年もすると『映画』というコンテンツを標榜する概念が大きく変わってきそうだ…。
やはりその躍進の大目玉は「ネットフリックス」だ。いまや、全世界で1億人に達する月間サブスクライバーがその潮流を支える。
映画1本に100億円 ドラマ1本に5億円 コメディに300億円
映画1本に100億円 ドラマ1本に5億円という巨大な製作費をかけた「映画コンテンツ」が2018年には、続々と「月額サブスクリプション」向け映画として登場してくる。コメディでさえも300億円の予算がかけられる時代なのだ。
海外でのサブスクライバーは445万人増え、来期の番組制作費は6730億円(2017年)は、130%の8749億円となる。
また、amazonやAppleも指を加えているだけではない…。
日本のamzonプライムビデオでも、従来の民放の企画ではボツとなるような企画をよしもと芸人たちが、ふんだんな予算の中で展開している。
「戦闘車」などはかつてのテリー伊藤氏が手がけた風雲たけし城を彷彿させるような大ロケーションである。
また、「今田×東野のカリギュラ」の「オレオレ詐欺選手権」などはとても秀逸な番組であった。プロのオレオレ詐欺集団に芸人の親は騙されるのかという実験番組。
現在のテレビ業界におけるコンプライアンス状態ではとてもむずかしい企画がamazonオリジナルでは見事に展開されている。
かつての『映画』との別離の時
映画は、かつて2時間、映画館の暗闇の銀幕の中で鑑賞するものであった。かつては新聞の映画欄を見て、時間を合わせて、記念にパンフレットも購入していた。いまや、膨大な映画を月額サブスクリプションサービスで視聴することができる時代となった。ハリウッドのメジャースタジオそのものが、映画をハイリスクハイリターン型のビジネスとしてとらえているからこそ、ハリウッドメジャーはすべてヒモ付きの企業群となっている。
当然、ローリスク、ハイリターンを狙うと芸術性というよりも、商業的になり、コミックスの人気キャラクター便りで、続編とスピンアプト映画のオンパレード。…わざわざ映画館で見るまでもない過食な3DのCG映画のオンパレードとなってしまっている。
さらに、時価総額順で眺めてみると…。
時価総額だけで比較すると、ハリウッドメジャーは、6社まとめてようやくAmazonの時価総額と同等となり、
すでに、NETFLIXの時価総額は、ハリウッドメジャーでいうと第3位となる存在になっているのだ。
これは、ハリウッドがすべてまとまったとしても、まったく勝ち目のないゲームの様相だ。しかも「ネットフリックス」では、冗長なタイトルシークエンスはジャンプできたりするから、芸術性や映画団体からすると禁じ手と言われても仕方がないほど、ユーザーの視聴履歴に忠実な編集を見せる。
映画が2時間程度という興行スタイルもネットフリックスには通用しない。
きっとVRやARなどの機能による『映画』らしきものも、近年そうそうに登場することであろう。ハリウッドメジャースタジオが、単なる配給と製作プロデュース機能だけで潤う時代ではなくなりつつある。DVD配送レンタルと思っていたネットフリックスがすでに、ハリウッドのメジャーとなる製作会社に一番、発注をかけることができるネット映画のメジャーとなってしまったからだ。2018年は、映画館を主体とした映画産業そのものが変革を遂げる時になりつつあるのは確実なようだ。
もちろん、amazonやネットフリックスが、ハリウッドメジャーを傘下に収めるというシナリオも水面下では確実に動いていることだろう。時価総額から言えば、赤子の手をひねるようなものなのだから…。
莫大な制作予算といつでも好きな時に、しかも月額定額制で見られる『映画』の時代。興行先の劇場でさえも、いつしか、月額サブスクリプションを支払えば、午前中の劇場では、ドリンクさえ買ってくれれば、ネットでも映画館のどちらでも、見られるような時代になることだろう。さらに、amazonならば映画館に2時間いれば、そこに商品が届くなんてことも配送料削減策として実現できそうだ。
ネット・ハリウッド時代は今までの映画産業を、根底から塗り替えるだけのパワーを秘めている。