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『映画』コンテンツが、ネット・ハリウッドへ向かう理由

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です。

あと5年もすると『映画』というコンテンツを標榜する概念が大きく変わってきそうだ…。

やはりその躍進の大目玉は「ネットフリックス」だ。いまや、全世界で1億人に達する月間サブスクライバーがその潮流を支える。

Netflixは2018年に80本のオリジナル映画を公開することを目指している。

今後配信されるNetflixのビッグタイトルとしては、ウィル・スミス主演の「ブライト」、ロバート・デ・ニーロ主演の「The Irishman」などが挙げられる。予算はそれぞれ9000万ドルと1億ドル。サランドスはこれらのオリジナル映画により、同社の映画作品がドラマ作品と同じ規模にまで成長すると語っている。

出典:Netflix、2018年にオリジナル映画80本の公開を目指す

映画1本に100億円 ドラマ1本に5億円 コメディに300億円

映画1本に100億円 ドラマ1本に5億円という巨大な製作費をかけた「映画コンテンツ」が2018年には、続々と「月額サブスクリプション」向け映画として登場してくる。コメディでさえも300億円の予算がかけられる時代なのだ。

コメディー俳優アダム・サンドラーと結んだ契約だ。ネットフリックスは計3億2000万ドル超を投じて、サンドラー主演の長編映画を新たに4本制作することを決定。翌月に明らかになったところによれば、ネットフリックス契約者はサンドラー主演映画の視聴に5億時間以上を費やしている。芸術性は低くても、サンドラー作品の市場性は抜群なのだ。

出典:ネットフリックスで傑作『サイコ』は見られない

海外でのサブスクライバーは445万人増え、来期の番組制作費は6730億円(2017年)は、130%の8749億円となる。

ジェイソン・ベイトマン主演の犯罪ドラマ「オザークへようこそ」やコメディアンのジェリー・サインフェルドの特番などにより、7-9月の海外の契約者数は445万人の純増、米国は85万人の純増となり、いずれも市場予想を上回った。ただ、これには代償も伴う。2017年の番組製作費は60億ドル(約6730億円)だが、同社は(2017年10月)16日、来年の番組制作費が約30%超増えることを明らかにした。

出典:米ネットフリックス、7-9月契約者数は予想上回る伸び-番組人気で

出典:Bloomberg
出典:Bloomberg

また、amazonやAppleも指を加えているだけではない…。

アップルが映画監督スティーブン・スピルバーグ氏の制作会社などと契約したと報じた。1980年代に放送されたSFファンタジー「世にも不思議なアメージング・ストーリー」の新シリーズを制作する。独自映像番組の制作に本格参入するのは初めてという。スピルバーグ氏がドラマ制作の総指揮を務める見通し。1話当たりの予算は500万ドル(約5億6千万円)以上

出典:アップル、独自映像制作を本格化 スピルバーグ監督と契約

日本のamzonプライムビデオでも、従来の民放の企画ではボツとなるような企画をよしもと芸人たちが、ふんだんな予算の中で展開している。

戦闘車」などはかつてのテリー伊藤氏が手がけた風雲たけし城を彷彿させるような大ロケーションである。

また、「今田×東野のカリギュラ」の「オレオレ詐欺選手権」などはとても秀逸な番組であった。プロのオレオレ詐欺集団に芸人の親は騙されるのかという実験番組。

現在のテレビ業界におけるコンプライアンス状態ではとてもむずかしい企画がamazonオリジナルでは見事に展開されている。

かつての『映画』との別離の時

映画は、かつて2時間、映画館の暗闇の銀幕の中で鑑賞するものであった。かつては新聞の映画欄を見て、時間を合わせて、記念にパンフレットも購入していた。いまや、膨大な映画を月額サブスクリプションサービスで視聴することができる時代となった。ハリウッドのメジャースタジオそのものが、映画をハイリスクハイリターン型のビジネスとしてとらえているからこそ、ハリウッドメジャーはすべてヒモ付きの企業群となっている。

当然、ローリスク、ハイリターンを狙うと芸術性というよりも、商業的になり、コミックスの人気キャラクター便りで、続編とスピンアプト映画のオンパレード。…わざわざ映画館で見るまでもない過食な3DのCG映画のオンパレードとなってしまっている。

さらに、時価総額順で眺めてみると…。

ハリウッド6大メジャーのタイトル
ハリウッド6大メジャーのタイトル

第1位 ユニバーサル コムキャスト 18兆5321億円

第2位 ウォルト・ディズニー DISウォルト・ディズニー・カンパニー時価総額 18兆2660億円

第3位 ワーナー・ブラザース TWXタイム・ワーナー 7兆9280億円

第4位 20世紀フォックス 21世紀フォックス 5兆8881億円

第5位 ソニー・ピクチャーズ ソニー時価総額 4兆1117億円

第6位 パラマウント バイアコム時価総額1兆7576億円

【参考】

Amazon 時価総額 55兆2321億円

NETFLIX NFLX 時価総額 9兆8017億円

出典:【映画】6大ハリウッドメジャースタジオの時価総額ランキング比較

時価総額だけで比較すると、ハリウッドメジャーは、6社まとめてようやくAmazonの時価総額と同等となり、

すでに、NETFLIXの時価総額は、ハリウッドメジャーでいうと第3位となる存在になっているのだ。

これは、ハリウッドがすべてまとまったとしても、まったく勝ち目のないゲームの様相だ。しかも「ネットフリックス」では、冗長なタイトルシークエンスはジャンプできたりするから、芸術性や映画団体からすると禁じ手と言われても仕方がないほど、ユーザーの視聴履歴に忠実な編集を見せる。

映画が2時間程度という興行スタイルもネットフリックスには通用しない。

きっとVRやARなどの機能による『映画』らしきものも、近年そうそうに登場することであろう。ハリウッドメジャースタジオが、単なる配給と製作プロデュース機能だけで潤う時代ではなくなりつつある。DVD配送レンタルと思っていたネットフリックスがすでに、ハリウッドのメジャーとなる製作会社に一番、発注をかけることができるネット映画のメジャーとなってしまったからだ。2018年は、映画館を主体とした映画産業そのものが変革を遂げる時になりつつあるのは確実なようだ。

もちろん、amazonやネットフリックスが、ハリウッドメジャーを傘下に収めるというシナリオも水面下では確実に動いていることだろう。時価総額から言えば、赤子の手をひねるようなものなのだから…。

莫大な制作予算といつでも好きな時に、しかも月額定額制で見られる『映画』の時代。興行先の劇場でさえも、いつしか、月額サブスクリプションを支払えば、午前中の劇場では、ドリンクさえ買ってくれれば、ネットでも映画館のどちらでも、見られるような時代になることだろう。さらに、amazonならば映画館に2時間いれば、そこに商品が届くなんてことも配送料削減策として実現できそうだ。

 ネット・ハリウッド時代は今までの映画産業を、根底から塗り替えるだけのパワーを秘めている。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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