Yahoo!ニュース

【現地記者が明かす】INAC神戸に加入する韓国代表のビーナス! イ・ミナの知られざるエピソード

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
イ・ミナ(写真提供=FA Photos)

今季からなでしこリーグのINAC神戸でプレーすることが決まっている韓国女子サッカー界のアイドル、イ・ミナ。昨年12月に行われたE-1選手権でも韓国女子代表のエースとして活躍し、日本でも一気にその知名度を高めた。

そのテクニックもさることながら、端正な顔立ちと愛くるしいルックスが目を引き、『サッカーダイジェストweb』でも「人気急上昇中のビーナス!」と紹介されたほどだ。

KFA(韓国サッカー協会)のオフィシャルカメラマンのひとりであるイ・ヨンスも言う。

「韓国でも今や女子サッカー界のスターです。これまで韓国女子サッカー界のスターと言えば実力ではチ・ソヨン、ビジュアルでは“韓国サッカー美貌担当”と言われたシム・ソヨンが有名ですが、イ・ミナは実力、ビジュアル両方を備えた選手。

ただ、決してスターぶるところはありません。いつも明るく気さくで撮影されることを楽しむ。聞けば、ファッションにも興味があって、着こなしもうまい。休みの日はよくショッピングに行くようです」

(参考記事:写真15枚!! 韓国カメラマンがとらえた「美少女サッカー選手」イ・ミナの“秘蔵カット”)

イ・ヨンス氏によると、イ・ミナのようなタイプは珍しいという。

WKリーグ(韓国女子サッカーリーグ)の多くのクラブが合宿生活を送っており、完全オフは1か月に2〜3日しかない。普段はジャージ姿で過ごす選手が多い中、イ・ミナはおしゃれを楽しみ、肌の管理にも気を使うらしい。

「プチ整形していることも正直に告白しますからね。時間があれば故郷の大邱に帰って親孝行もしている。どこにでもいそうな普通の韓国女子ですよ」(イ・ヨンス談)

知られざるエピソードはこれだけではない。その成長過程においても意外なエピソードがある。教えてくれたのは、サッカー専門メディア『Footballist』のリュ・チョン記者だ。

「今でこそ韓国サッカー界のアイドル的存在ですが、彼女は冷遇された時期もあったんです」

2008年U-17女子ワールドカップ、2010年U-20女子ワールドカップに出場し、2011年ユニバーシアード韓国女子代表を経て、2012年2月に韓国女子代表になったイ・ミナ。

だが、2013年10月から2015年8月まで代表チームから遠ざかった。学年は1つ上ながら同じ91年生まれのチ・ソヨンとポジションが重なったこともその理由のひとつだが、イ・ミナのプレースタイルも関係していたという。

「彼女はワンタッチでのボール扱いを得意とし、スペースを探し飛び出す嗅覚にも優れた韓国女子サッカー界では珍しいテクニシャンタイプですが、韓国女子サッカーはとにかくよく動き、がむしゃらに守備をする選手を重宝しがち。

サイズが小さいイ・ミナを好まない指導者も多かったし、起用されても守備の欠点ばかりを指摘され適切な評価がなされなかった時期があったんです」

そんなイ・ミナの評価が変わり始めたのが、2015年の東アジアカップからだったという。それまでとは見違えるような豊富な運動量で存在感を示し、韓国代表に返り咲いた。

「一見すると可愛らしく、テクニシャンという印象からクールな性格にも見えますが、ああ見えてかなり負けん気が強いと言いますか、根性が据わっているんです。そうした気の強さも、実は彼女の魅力だと思います」(リュ・チョン記者)

ただ、普段はとても明るく愛嬌があり、メディアとの関係も良好。「今どきの女の子らしくSNSなどでの自己発信にも積極的で、ファンとの交流やセルフプロデュースにも長けている選手」(リュ・チョン記者)だという。

(参考記事:【画像あり】“韓国女子サッカーのアイドル”イ・ミナのSNSがスゴい!!)

その一方で、そのスター性ゆえに、ときとしてやっかみの対象になってきたのも事実だ。

それを物語るエピソードのひとつが、2016年4月にFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長が訪韓したときのことである。

KFAはイ・ミナに花束贈呈役を任せたが、「ふたりにどんな関係があるのか」「イ・ミナが韓国を代表する世界的な選手なのか」などの皮肉の声が起こったこともあった。

それだけにINAC神戸でも結果を残せなければ、何かと雑音が聞こえてきそうだが、リュ・チョン記者はなでしこリーグでも活躍できるのではないかと期待を寄せる。

「先にも述べたように韓国女子サッカーはフィジカル重視。それよりも日本のパスサッカーのほうが彼女には合っていると思いますし、彼女に巡ってくるチャンスも多いはず。

WKリーグではパワープレーを仕掛けられ、マークされることも多かったですから。それでも昨季は14ゴール10アシストを記録している。得点ランキングに至っては2位です。

つまり、チャンスも作れるし、決定力もある。レベルの高いINAC神戸のメンバーたちと切磋琢磨することで、イ・ミナ自身もレベルアップしていくのではないでしょうか」

期待と注目を集めていよいよ日本にやって来る韓国女子サッカー界のアイドル。その動向には当分の間、関心が集まりそうだ。

(参考記事:INAC神戸入り決定。一部で「サッカー界のアン・シネ」との声もあるイ・ミナはどんな選手?)

初出:『サッカーダイジェストWeb』2018年1月6日

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事