日銀の政策金利の変遷
中央銀行の金融政策では、一般的に政策金利と呼ばれる短期金利を上げ下げすることによって景気や物価に影響を与えようとする。
日銀の政策金利といえば、昭和生まれであれば「公定歩合」のことと覚えていた方も多いのではないはなかろうか。さすがに令和の世となって、政策金利は公定歩合だと考えている人は少なくなったと思う。
公定歩合とは日銀が金融機関へ資金を貸し出す際の金利。預金金利等が公定歩合に連動していたことで、かつては代表的な政策金利となっていた。しかし、1994年に金利自由化が完了し、公定歩合と預金金利との直接的な連動性はなくなる。
銀行は資金を高い公定歩合で借りずにコール市場で調達するようになり、日銀も日々の市場操作を短期国債の売買などを通じたものにシフトしてきた。
日銀は1995年3月の短期金利低め誘導以来、公定歩合ではなく実質的に無担保コール翌日物の金利を政策金利にしている。
コール市場とはその名の由来が「money at call」、つまり「呼べば直ちに戻ってくる資金」と言われ、民間金融機関が短期的な手元資金の余剰や不足を調整するための市場となっている。コール市場は短期金融市場の柱となる市場である。
取引量も多く金利全体の基準とも言えるものなので、日銀としてもオペレーションなどによってコントロールしやすいため、これを操作することにより、さらに長い期間の金利にも間接的に影響を与えることが可能となる。
日銀が金融政策の変更、たとえばつまり無担保コール翌日物金利の誘導目標値を変更する際は、オペなどを通じてコールレートを誘導目標に近づける。
目標値を引き上げた場合(利上げ)には、市場の資金を吸い上げることによって金融が引締められる。お金を貸す側はより高い金利を提示することになり、借り手はその金利で借りざるを得なくなるため活動にブレーキがかかる。
その後、政策金利の無担保コール翌日物の金利がゼロ近傍まで引き下げられると、日銀は金融政策の目標を金利から量に変更した。
しかし、2016年に日銀はマイナス金利政策を導入し、同年9月には長短金利付き量的・質的緩和を導入したことで、再び政策目標を量から金利に戻した。
短期金利の目標値を無担保コール翌日物の金利ではなく、日銀の当座預金の一部に掛かるものとしてそれをマイナスとした。さらに長期金利をも政策金利としてコントロール下に置いた。
しかし、2024年3月の金融政策決定会合では、マイナス金利政策を解除して政策金利を無担保コール翌日物の金利に戻しゼロから0.1%とした。そして長期金利コントロールも解除したのである。