PTAだけではない 学校にお金をまわす「後援会」という第三の集金方法
多くの学校がPTA予算に頼っていることはこれまでも指摘してきたが(*)、じつはPTAのほかにも、学校で必要なお金(会費)を調達するための団体がある。
会の名称は学校によってさまざまだが、よくあるのは「〇〇後援会(生徒育成後援会、教育後援会、部活動後援会、教育振興会等)」といったものだ(以下、「後援会」と総称)。もちろん、こういった会が存在しない地域や学校もたくさんある。
「後援会」は大体、中学校ごとにつくられている(小学校ではまず聞かない)。国や自治体による調査はないため、その全体像を把握することは難しいが、これまで取材してきた筆者の感覚では、自治体によって、あるところには必ずある(ない自治体にはない)、という印象だ。
今回、埼玉県川口市の公立中学校で学校事務職員をする柳澤靖明氏(『本当の学校事務の話をしよう』著者)に、近隣の学校の「後援会(費)」について聞かせてもらった。
*なかには強制徴収も
「私が勤務する川口市立小谷場中学校では、『教育後援会費』として、年間一口1000円を集めています。任意だし手集金なので、入っている人もいるし、入っていない人もいる。そのため、後援会の役員さんは毎年『こんなふうに子どもたちに還元しているんですよ』という報告で、保護者の皆さんにアピールしています。
でも聞いたところ、ほかの中学校では後援会費を学校徴収金(教材費や修学旅行積立金など)といっしょに銀行から引き落としていることも多いようです。本人が『後援会に入りません』と言わない限り、会費が自動的に徴収されるので、PTAと同じですね。金額は、年間で2400円とか3600円とか、いろいろです。
会費の用途はPTA会費と重なる部分もあります。市内の他校は、部活動にあてる比率が高いようです。部活動の費用は、おそらく全国どこの公立中学校でも、PTA会費や後援会費、生徒会費をあてることが多いのでは。川口市の場合は公費も出るのですが、それだけではやはり足りません。
他の自治体では、後援会費を周年行事(*)や学校行事にあてるケースもあるようです」
- *「周年行事」とは公立の小中学校が創立から10年ごとに行う地域ぐるみのお祝い行事。式典と祝賀会を行うことが多い
筆者のこれまでの取材でも、集金方法はまちまちのようだった。小谷場中のように後援会費を払う意思のある人からのみ手集金しているところや、各住戸をまわって寄付を募るところ、申し出た人からのみ銀行引き落としする「任意」の徴収もあるが、保護者の意志にかかわらず、強制徴収しているところもあった(PTAのように)。
この場合、無理をして払わされる家庭も出てくる。
会費を強制徴収する後援会があると、保護者はPTA会費に加え、さらに数千円の費用も必ず負担することになる。たとえPTA会費が安くても、単純に喜んではいられない。後援会費もトータルすると、むしろ高くなるケースもある。
仙台市に住むある保護者に資料を見せてもらったところ、市内の公立中学校のなかには、PTA会費と部活動後援会費の合計年額が1万円を超えるところもあった。徴収方法は、同市内においても任意のところと強制のところがあるようだ。
*お金を差し出す前にやるべきこと
「学校って、本当にお金がないんですよ」。そんな校長の嘆き(ぼやき)をよく聞く。保護者はこれを聞くとつい「それはよくない、なんとかしましょう」と思い、PTAのお金や会員(母親)の労働力を差し出しがちだ。さらには「後援会」からも、お金を供出することがある。
たしかに保護者がお金を出せば簡単だ。子どもたちの教育環境を、すぐサポートできる。しかしそうやって保護者のお金や労働力を差し出し続けている限り、公の予算はつかない。いつまで経っても、子どもがいる世帯ばかりが教育の負担を担い続けることになってしまう。
寄付やお手伝いも尊いが、国や自治体で教育予算をしっかり確保してもらう努力をすることが、もっともっと必要ではないか。いまはほとんど、その努力が見られない。
ただ、難しい面もいろいろある。たとえば、部活動の費用。柳澤氏も指摘したとおり、現状部活動の費用は、PTA予算や後援会費、生徒会費、公費、部費などさまざまな出どころから工面されている。これは、どう調達するべきものか?
この問題については、別の機会に取り上げたい。