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W杯、日本代表GKは誰に? 最終予選功労者の権田か、長身・シュミットの抜擢か?

元川悦子スポーツジャーナリスト
熾烈な代表正守護神争いを繰り広げる権田(左)とシュミット(右)(筆者撮影)

現状では30代GK3人の選出が有力視されるが

 2022年カタールワールドカップ(W杯)に出場する日本代表メンバーがいよいよ明日1日、発表される。2月の最終予選・サウジアラビア戦(埼玉)以降、チームから遠ざかっている大迫勇也(神戸)の復帰はあるのか、ケガで離脱中の浅野拓磨(ボーフム)、板倉滉(ボルシアMG)らは選ばれるのか…といった注目点がある中、GK争いの行方も気になるところだ。

 現状だと、2019年アジアカップ(UAE)から正守護神に君臨し、最終予選10試合中9試合に先発した権田修一(清水)、2010年南アフリカ・2014年ブラジル・2018年ロシアと過去3度のW杯でゴールマウスを守った川島永嗣(ストラスブール)、9月のエクアドル戦(デュッセルドルフ)でマン・オブ・ザ・マッチに輝いたシュミット・ダニエル(シントトロイデン)の3人の選出が有力視される。

東京五輪6試合先発の谷晃生の扱いは?

 ただ、東京五輪世代の谷晃生(湘南)、大迫敬介(広島)の扱いは気になるところ。東京五輪全6試合出場の谷は最終予選序盤戦ではシュミットを抑えてメンバー入りしていたほど評価が高かった。大迫にしても、ミヒャエル・スキッベ体制の今季広島で安定感あるプレーを披露。10月22日のYBCルヴァンカップ決勝でついにタイトルを手中にしている。こうした実績を森保一監督、下田崇GKコーチがどう見るのか。「場合によってはGK4人ということもあり得る」と指揮官も話していただけに、若い世代の追加があるかどうかを注視したい。

同世代の伊藤洋輝(右)と談笑する谷(左。筆者撮影)
同世代の伊藤洋輝(右)と談笑する谷(左。筆者撮影)

 とはいえ、試合に出るのは、国際経験に秀でる30代の3人のいずれかだろう。これまでの実績と経験値を考えれば権田が最有力なのは間違いない。ただ、権田は9月のアメリカ戦(デュッセルドルフ)で背中を強打。遠征途中で無念の帰国を強いられた。そのケガが治り切らないまま出場した10月8日の川崎フロンターレ戦で、同じ代表の谷口彰悟と接触。2度目のアクシデントで、後半ベンチに下がっただけに、その影響が気がかりではある。

 10月22日のジュビロ磐田との静岡ダービーにフル出場した後、本人を直撃すると「この1週間はあまり練習ができなかったけど、体を戻すこと最優先でやってきた。見ての通り、一応プレーできるところまで戻ったんでよかったです」と安堵感を吐露した。

ケガから復帰の権田は清水の苦境が足かせに?

 とはいえ、W杯を目前に控え、しかも清水がJ1残留争いに巻き込まれている時期のアクシデントだっただけに、権田自身も不安があったようだ。

「試合前は『90分できるかな』って正直、すごく心配でしたけど、フルで戦えた。もちろんW杯があるのは事実ですけど、エスパルスでユニフォームを着てやる以上、チームのために体を張ってつぶれたら仕方ない。今日もリスクを考えたら行かなくていいようなクロス対応にも当然行っていましたし、100%出し切るつもりでやりました」と語気を強める。目下、権田は清水の救世主になることを熱望。11月5日の最終節終了後に自動降格を回避して16位に回るようなことがあれば、13日のJ1・J2入替戦に出る覚悟も固めている。

 となると、11月9日に日本を発って10日から現地でW杯に向けたトレーニングを開始する日本代表には頭からは参加できなくなる。欧州組の川島、シュミットより早く現地に適応し、気候や環境に慣れることも叶わなくなるのだ。ただ、そのあたりは過去にカタールなど中東遠征を数多くしている権田なら問題なく適応できるとは思うが、調整スタートは早ければ早いほどいい。清水の動向が代表での動きに大きく影響してくるだろう。

33歳になった権田は常日頃からチーム第一を忘れない
33歳になった権田は常日頃からチーム第一を忘れない写真:森田直樹/アフロスポーツ

川島は今季出番なし。シュミットは大きなチャンス

 一方、欧州組の2人だが、川島は残念ながら今季フランス1部で出場なし。過去の経験値は抜群ではあるが、実戦感覚の不足でやや厳しい。「イザという時に川島がいてくれれば心強い」というのは、もちろん森保監督も考えるところだろうが、現状で川島がファーストチョイスに急浮上するとは考えにくい。

 その点、シュミットは4シーズン目を迎えるシントトロイデンで定位置を確保。試合経験を積み重ねている分、安心感がある。10月15日のシャルルロワ、19日のクラブ・ブルージュ、22日のルーヴェンという直近3試合はケガで欠場したものの、24日からはトレーニングに完全復帰し、29日のウェステルロー戦で公式戦にも戻ってきた。

「自分自身の課題だったシュートストップの部分は、シュートが来る前、ルーズボールがこぼれてきそうなところの準備を(代表GKコーチの)下田さんに言われるようになってからすごく意識するようになり、かなり改善されたと思います。

 それと今季のシントトロイデンのGKチームが素晴らしい。ドイツ人の新しいGKコーチが来て『アグレッシブなスタイルでやっていこう』と前向きなアドバイスをくれますし、同僚のジョー(・コッペンズ)のセーブ能力もメチャクチャ高いんで、負けられないというライバル心を掻き立てられてます」と充実した環境に身を投じ、日々成長を実感できている様子。

シントトロイデンで成長を続けるシュミット(筆者撮影)
シントトロイデンで成長を続けるシュミット(筆者撮影)

 もともと性格的に温厚な彼が目の色を変えて貪欲に高みを目指すようになったことは特筆すべき点と言っていい。

 そして、何といっても197センチの長身という圧倒的な武器がある。本人は「理想のGKはティボ・クルトワ(レアル・マドリード)」と公言するが、シュミットはクルトワに通じる高さと手足の長さを備えている。「クルトワを見ているとシュートが入りそうもない」とも語っていたが、相手FWにしてみれば、シュミットにもそんな威圧感を覚えることがあるのではないか。

 実際、9月のエクアドル戦でのシュート・PKストップ、リスタート時の対応、スローイング技術などを見れば、W杯の大舞台に立っても全くおかしくはない。あとは指揮官の判断次第ということになる。

川島が39歳で欧州5大リーグに所属できるだけで偉業だ(筆者撮影)
川島が39歳で欧州5大リーグに所属できるだけで偉業だ(筆者撮影)

経験を重視するなら川島というチョイスも

 闘争心を前面に押し出すタイプを選ぶなら権田、経験を重視するなら川島、世界基準のサイズと落ち着きを求めるならシュミットということになる。果たして11月23日の初戦・ドイツ戦(ドーハ)でピッチに立つのは誰なのか…。最高の守護神がいるチームでなければ、W杯で上位進出は難しくなるだけに、その選定が日本の成否を大きく左右すると言っていい。

 2010年南アフリカ大会直前を思い返してみると、当時の岡田武史監督(JFA副会長)が楢崎正剛(名古屋CSF)から川島にスイッチすることを決断し、チームの流れがガラリと変わったことがあった。そんな過去もあるだけに、開幕ギリギリの段階までどうなるか分からないのは確か。候補者たちは自身をベストの状態に引き上げる努力をするしかない。最後の最後まで激しいバトルを期待したいものである。

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スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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