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全勝・神戸製鋼をあと一歩まで追い詰めたNTTドコモがプレーオフトーナメントでも台風の目になる

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
神戸製鋼戦でマピンピ選手(11番)のトライを喜ぶNTTドコモ(筆者撮影)

【後半ロスタイムで逆転負けしたNTTドコモ】

 後半ロスタイムに神戸製鋼の松岡賢太選手に決勝トライを決められ敗北が決まった瞬間、グラウンド上にいたNTTドコモのマーティ・バンクス選手の胸中には複雑な思いが過り、思わず涙ぐんでしまいそうな感情が込み上げていたという。

 「僕は去年神戸製鋼との試合で苦い想い出があり、今日の試合に関しては最後の最後まで勝っていたし、勝てるとも思っていたし、ぎりぎりで負けてしまい、笛が鳴った時、その結果を踏まえて正直喜んでいいのか分からなかったです。

 何なら涙が出そうなくらい、こんなにもチームは変わるのかと思いました。本当にチームのみんなが誇らしいです」

 もちろん敗れた悔しさはある。だが昨シーズンはリーグ史上最大得点差の0対97という屈辱的な大敗を喫していた神戸製鋼相手に、後半ロスタイムまでリードを奪っていたのだ。たった1年で変貌した自分たちの戦いぶりに、感動すら覚えていたようだ。

【残り42秒で犯してしまったミス】

 この日のNTTドコモは、強敵相手に明らかに気合いが入っていた。

 前半1分に川向瑛選手がペナルティゴール(PG)を決めて先制し、幸先のいいスタートを切った。だが前半途中から神戸製鋼の猛攻を受け、何度となくゴールラインを割られる場面があったが、トライを許さない激しいディフェンスを繰り返し、何度も耐え続けた。

 最終的に前半30分に認定トライを奪われるなどして何度かリードを許す場面を迎えても、今シーズン新加入のTJ・ペレナラ選手、マカゾレ・マピンピ選手が次々にトライを奪い、互角の展開に持ち込み続けた。

後半ロスタイムで神戸製鋼・松岡選手に逆転トライを奪われる(筆者撮影)
後半ロスタイムで神戸製鋼・松岡選手に逆転トライを奪われる(筆者撮影)

 そして26対26の同点で迎えた後半34分、バンクス選手のPGが決まり、勝ち越しに成功。その後も両者一歩も引かない攻防を繰り広げながら、残り時間が少なくなる中で、NTTドコモのマイボールの展開に持ち込んだ。もう大金星は目前だった。

 ところが後半79分18秒にNTTドコモにペナルティが吹かれると、神戸製鋼ボールに変わってしまった。そこから前述の逆転トライを決められてしまい、29対31で敗れ去ったのだ。あと42秒間だけ我慢できていれば…。まさに手から勝利がこぼれ落ちてしまうような敗北だった。

【試合に勝つごとにチームに植え付けられた自信】

 だがこの日の戦いぶりは、改めてリーグ戦で快進撃を続けてきたNTTドコモを象徴するものだった。

 今シーズンからスーパーラグビーやイングランドリーグで実績を残してきたヨハン・アッカーマン氏をヘッドコーチ(HC)に迎えるともに、前述のペレナラ選手とマピンピ選手という世界トップクラスの選手を獲得。新体制で今シーズンに臨んでいた。

 リーグ戦が開幕すると、3連勝を飾るスタートダッシュに成功。パナソニック戦で初黒星を喫したものの、13対26の接戦を演じ、3トライ差以上で与えられるボーナスポイントを渡さなかった。

 ヤマハ発動機にも敗れたためリーグ戦を4勝3敗で終えることになったが、それでもホワイトカンファレンスで堂々3位に入り、プレーオフトーナメントを迎えることになった。

 「選手それぞれが信じられるようになったのが(昨年との)大きな違い。長いプレシーズンでもハードな練習をしてくる中で自信もついていきました。シーズンに入ってからも連勝でき、正しいことをやってきたということで、さらに自信になりました」

 バンクス選手が説明しているように、チームは7試合を戦いながら確実に成長を続けていった。

【ペレナラ選手「全試合勝つつもり」】

 このリーグ戦でパナソニックや神戸製鋼などの強豪チームと互角に戦えることを証明してみせた。後は負けたらシーズンが終わってしまうプレーオフトーナメントを、どこまで勝ち上がっていけるかに注目が集まる。

 「予想するのは好きではないし、苦手なんですが、トーナメントはどのチームにもチャンスがあると思っています。まずは自分たちのことに集中することが一番だと思っています。

 (チームとして)自信がついてきているので、しっかりやるべきことをやっていけば、結果は自ずとついてくると思っています」

神戸製鋼戦でゲームキャプテンを務めたペレナラ選手(中央・筆者撮影)
神戸製鋼戦でゲームキャプテンを務めたペレナラ選手(中央・筆者撮影)

 アッカーマンHCの言葉はやや慎重気味に聞こえるが、それでも確かな自信に裏づけられた発言なのは間違いない。

 ペレナラ選手に至っては、さらに力強い言葉を発している。

 「トーナメントで全試合勝つつもりでいるし、そのために日本に来ました。リーグ優勝したいと思ってここまでやってきました。

 今日みたいにビッグチームに対しても最後まで戦えたことで自信になったし、最後のもう一歩のところを直していけば、どんなチームに対しても絶対に勝てると思っています」

 プレーオフトーナメントに入っても台風の目になりそうなNTTドコモ。まずはチームが目標に掲げてきたトップ8入りを目指し、4月25日にHondaと激突する。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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