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そして親になる~「特別養子縁組」という選択肢

竹内豊行政書士
子どもをもうける選択肢のひとつとして「特別養子縁組」という制度があります。(写真:アフロ)

2月26日のデイリースポーツによると、元宝塚月組トップスターの女優・瀬奈じゅんさん(43)が、「特別養子縁組」で子どもを授かり、母親となったことを26日、所属事務所の公式サイトで発表しました。

夫で俳優の千田真司さん(33)も同日、ご自身の公式ブログで発表しました。お二人は2012年末に結婚しています。お子様は今年の初夏に1歳になるそうです。

そこで、今回は特別養子縁組について、ご紹介したいと思います。

特別養子縁組とは

特別養子縁組は、縁組の日から実親との親子関係を終了させて、養親との間に実親子と同様の親子関係を成立させる縁組です。「実親との親子関係を終了させる」ということがこの制度の特徴です。

この制度は、当事者(養子と養親)の契約ではなく、家庭裁判所の審判によって成立します。実親子関係を終了させて実親からの取戻請求を防ぐとともに、原則として離縁を認めません。

特別養子の要件

原則として、縁組の申立て当時、6歳未満の子どもに限られます(民法817条の5)。

養親の要件

配偶者がある者でなければなりません(民法817条の3第1項)。加えて、25歳以上でなければなりません(ただし、夫婦の一方が25歳に達している場合は、他方は20歳に達していればよい)(民法817条の4)。

このように、夫婦であること、親子としてふさわしい年齢差であることが求められています。したがって、事実婚で特別養子縁組を求めているカップルもいますが、婚姻関係ではないので、この制度を利用することはできません。

実父母の同意

特別養子縁組は、法律上の親子関係を終了させるため、実父母との同意を要件としています(民法817条の6)。

ただし、次の場合は、同意を要しません。

・父母の一方が死亡しているときは、生存する一方の同意で足ります。

・婚外子について父が認知していない場合は、母の同意だけで足ります。

・所在不明や心神喪失などで父母がその意思を表示することができない場合や、父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる子どもの利益を著しく害する理由がある場合は、同意を要しません(以上同ただし書き)。

成立の手続

特別養子縁組は、養親となる者の申立てに基づき、家庭裁判所の審判で成立します(民法817条の2)。

審判の基準

家庭裁判所は次の2点を基準として特別養子縁組の成立の可否を決定します(民法817条の7)。

1.実親による監護が著しく困難または不適当であること

2.その他特別な事情がある場合

なお、子どもの「要保護性」の認定は、裁判官にゆだねられています。

このように、実親との親子関係が終了するため、特別養子縁組の成立には慎重を期しています。

特別養子縁組の効果~特別養子縁組が成立すると

特別養子と、実父母およびその血族(兄弟姉妹・祖父母・叔父叔母・いとこ等)との親族関係は、特別養子縁組成立の日から終了します(民法817条の9)。これにより、親権、扶養、相続権などすべて消滅します。

特別養子縁組の離縁

養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する理由があり、なおかつ実父母が相当の監護をすることができる場合は、家庭裁判所が「養子の利益」のために特に必要と認めるときは、養子、実父母または検察官の請求により特別養子縁組の離縁の審判をすることができます(民法817条の10)。

なお、養親には離縁を請求する権利はありません。

このように、特別養子縁組は子どもにとって「実親子関係の終了」という重大な問題のため、家庭裁判所の審判にゆだねることで「子の利益」を守っています。

親子関係を創設するひとつの方法として、「特別養子縁組」という制度があることを覚えておいてください。

最後に、瀬奈じゅんさんが所属する東宝芸能の公式ホームページで夫の千田真司さんと連名で発表した「瀬奈じゅんからのご報告」と題した文書をご紹介します。

特別養子縁組の趣旨に沿った愛情あふれたすてきな内容です。

【以下原文のまま】

この度、私たち夫婦が、特別養子縁組制度により子供を授かった事。私たち夫婦が、特別養子縁組制度により子供を授かった事をご報告させていただきます。

そして、家庭裁判所への申し立てが受理され、晴れて私たち夫婦の実子として入籍に至った事をご報告させて頂きます。

昨年の初夏に生後5日の我が子を病院まで迎えに行き、その日から三人家族になった我が家は幸せに溢れ、それと同時に命の重み、親への感謝、様々な感情、様々な感動を体感する毎日です。

我が子は、その小さな体ではまだ抱え切れないであろう運命を持って産まれてきました。

私たちは常に寄り添い、支え、共にその運命を乗り越えて行く覚悟です。

今後とも私たち家族を温かく見守って頂けますよう、宜しくお願い致します。

千田真司

瀬奈じゅん

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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