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「関税・【差押最終通知】未払い税金お支払いのお願い」のメールをクリックしてみると、どうなるのか?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影・修正

「あなたの関税・消費税(または延滞金(法律により計算した額)について、これまで自主的に納付されるよう催促してきましたが、まだ納付されておりません」

まったく身に覚えのない関税・消費税を払うように促すメールが届きました。

「もし最終期限までに納付がないときは、税法のきめるところにより、不動産、自動車などの登記登録財産や給料、売掛金などの債権などの差押処分に着手致します」と文章は続きます。

コロナ禍があけて、海外でブランド品などを買い、国内に持ち込む方が多くなっていることを狙って、だまそうとする詐欺メールを送ってきたと思われます。

偽関税メールのURLをクリックしてみると

注意喚起のために、この先にどんな展開が待っているのかを調べます。

メールは次のように続きます。

納稅確認番号:****66**

滯納金合計:40000円

納付期限: 2023/04/**

最終期限: 2023/04/**(支払期日の延長不可)

この下にある「お支払いへ」のURLをクリックしてみます。

「!」とともに、「差押最終通知」のタイトルが出ます。「あなたの関税・消費税について、これまで自主的に納付されるよう催促してきましたが…」というメールと同じ内容が続きます。

ちなみに、これが詐欺メールと見抜くために、漢字の違和感に気づくことをお勧めします。

ここでは「税」ではなく「稅」が、「滞」ではなく「滯」の字が使われています。

筆者撮影・修正
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オンライン納付を指示される

青文字の「確認」のボタンを押すように促していますので、クリックしてみます。

「差押え」というタイトルとともに、「関税·消費税」という赤背景のページが出てきます。赤色で、閲覧者を慌てさせようとする意図を感じます。

「お支払合計金額:40000 円」で「お急ぎで対応してください。下記の方法でオンライン納付もご利用いただけます」とあります。

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では、次のページに移動してみます。

支払い方法は、クレジットカードなどでの支払いはメンテナンスに伴うサービス一時停止などの理由によりできないようで、「電子マネー(Vプリカ発行コード)」でしか払えないようです。狙いはクレジットカード情報の詐取ではなく、コンビニなどで購入するプリペイドカードであることがわかります。

筆者撮影・修正
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「次へ」を押してみます。

あまりに丁寧な記述には、詐欺を疑うこと

「お客さまへの重要なお知らせ」とあり、セブン・イレブンの「マルチコピー機」での購入を促しています。しかも、誰でも買えるように、手順も細かく書かれています。

「プリペイドサービス」のボタンを押して、最終的に「Vプリカ」の画面をタッチさせようとしてきます。

詐欺師は丁寧に指示してきます。あまりに親切でわかりやすく、支払い方法が書かれていれば、URLを確認するなど、詐欺を疑って立ち止まって下さい。

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プリペイドカードの16桁の番号を入れてみる

次のページでは、購入したVプリカ発行コード番号の16桁の番号と金額を入れるようになっています。

適当な数字とアルファベット(16桁)を入れて、額面を10000円にして、4つの項目を埋めてみます。

筆者撮影・修正
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最初はお申し込み金額(未納金額)の項目が不一致「-40000円」でしたが、4か所を記入すると、ここが「0」になりました。これで大丈夫なようです。

支払いが完了したようですので、先に進みます。

すると、電子マネーによる支払完了の文字が出てきました。

筆者撮影・修正
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しかし数秒後には、このページは消えてしまいます。すると、いきなり「関税・消費税等のキャッシュレス納付」という「税関」のサイトに飛びました。

実際に筆者が飛ばされたHP。筆者撮影・修正(財務省関税局のHP)
実際に筆者が飛ばされたHP。筆者撮影・修正(財務省関税局のHP)

関税・消費税等の納付に係るマルチペイメントネットワーク対応について(平成16年3月22日)という文章もみられます。

調べると、ここは財務省関税局の本物のHPでした。

もしかすると最終的に正式なHPに行ったので、これで支払いが正式に完了したと思う方もいるかもしれません。しかし「公式HPに飛ばす」これは偽メールを送ってきた、詐欺グループの罠です。絶対に引っかからないようにして下さい。

財務省関税局のHPでも、関税局をかたるショートメッセージが確認されているとして、注意喚起されています。筆者のもとにきたタイトル以外にも「関税局【重要なお知らせ】」もあるとのことです。

昨年夏以降に、国税庁をかたった「未払い税金のお知らせ」の詐欺メールが届き、被害が出ました。その時も、税金未納と称して、プリペイドカードの番号を入力させようとしましたが、今回もそのフォーマットとほぼ同じでした。

一定の時を経て、タイトルを変え、関税・消費税というアプローチでやってきました。まさに手を替え品を替えです。しかしお金を払わせる手順は、前回と同じです。ご注意下さい。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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