世界EVシェア、ついに自動車販売の10% 米テスラ首位維持も中国BYD猛追
2022年は電気自動車(EV)の世界販売台数が大幅に伸び、初めて自動車販売全体の10%に達した。米ウォール・ストリート・ジャーナルが調査会社のデータを基に報じた。
バッテリー式EV68%増
英調査会社LMCオートモーティブとスウェーデンの調査会社EVボリュームズによると、BEV(Battery Electric Vehicle)と呼ばれるバッテリー式EVの販売台数は約780万台で、前年から68%増加した。
米国におけるEVは依然として自動車販売全体のわずか一部を占めるにすぎない。だが、欧州と中国では大きくシェアを伸ばしている。このテクノロジーが普及するに従い、EVの自動車市場に及ぼす影響が高まっていくとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。
EV販売の急増は、経済不安やインフレ、生産混乱に見舞われた自動車市場全体とは対照的だという。
シェアは欧州11%、中国19%
LMCオートモーティブによれば、22年におけるBEVの自動車販売に占める比率は、欧州で11%、中国で19%だった。EVボリュームズによれば、プラグインハイブリッド車(PHEV)を含めた場合、欧州でのEVシェアは20.3%になる。
ドイツ自動車工業会(VDA)によると、欧州最大の自動車市場である同国では、22年に新車生産台数の25%をEVが占めた。同年12月にドイツ国内で販売されたEV台数は、内燃エンジン車を上回った。
欧州の自動車メーカーは、欧州連合(EU)の排ガス規制への対応に取り組む中、EU域内市場でEVの生産・販売に注力してきたが、22年は中国や米国といった他の主要市場でEV事業を拡大した。
BEV世界販売台数の3分の2を占める中国市場では、国内メーカーが欧米大手に追いつきつつあり、欧米市場への進出を始めている。
一方、米国はEVの市場投入で中国や欧州に後れを取っている。だが、22年は80万7180台のBEVを販売。自動車販売台数に占めるBEVの比率は前年の3.2%から5.8%に拡大した。
EV世界販売ランキング
独センターオブオートモーティブマネジメント(CAM)によると、BEVの22年におけるメーカー別世界販売台数は、米テスラが131万4000台で1位。2位は中国・比亜迪(BYD)の91万1000台。
3位は中国・上海汽車集団(SAIC Motor)で75万台。4位は独フォルクスワーゲン(VW)グループで57万2000台だった。首位のテスラは前年比40%増と大きく伸びた。だが比亜迪(BYD)は同2.8倍と、それをはるかに上回る伸び率だ。
一方、米国市場では、米フォード・モーターが第2位のEVメーカーであり、この後、韓国・現代自動車とそのグループ会社の起亜自動車が続く。一方で、米ゼネラル・モーターズ(GM)やフォルクスワーゲン、日産自動車は22年、米国EV市場でシェアを減らした。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、「EVは世界的に主流になる兆しを見せているが、23年は前年のような好調な販売を持続することが難しい」とアナリストらは分析している。
経済不安が消費者に重くのしかかり、一部の国ではEV補助金が減額されたり廃止されたりしている。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、欧州で電気料金が上昇したこともガソリン車に比べてEVの魅力が薄れている要因だという。
LMCオートモーティブによると、22年の世界新車販売台数は8060万台で前年から1%減少した。中国での4%近くの伸びが、米国での8%減、欧州での7%減を補った。世界経済の減速、エネルギーコストの高騰、サプライチェーン(供給網)の混乱、ウクライナでの戦争が自動車販売に打撃を与えたという。
- (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2023年1月18日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)