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追悼・大杉漣さん。『名古屋行き最終列車』で最後の雄姿を目に焼き付ける

大竹敏之名古屋ネタライター
『名古屋行き最終列車2018』のポスターでは“赤い電車”ヘアを披露してくれていた

早すぎる、突然すぎる名優の急逝

俳優の大杉漣さんが、2月21日に急性心不全で亡くなりました。ドラマ撮影後の突然の急逝で、共演者や家族に看取られてのことだったそう。まだ66歳。名脇役としてこれからますます演技や存在感に磨きがかかっていくと思われていただけに、本当に残念です。

出演中だったテレビ東京のドラマ『バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~』の第3話は、亡くなったその日の夜に予定通りオンエアされました。同作が遺作となってしまったわけですが、名古屋にもオンエアを間近に控えていた作品があります。名古屋のメ~テレ制作の深夜ドラマ『名古屋行き最終列車2018』です。

大杉さんの出演でキャスティングがスムーズに

2012年から始まったこのドラマシリーズに、大杉さんは2015年からラーメン店店主の役で出演。頑固さとやさしさを合わせ持った役柄は、ヤクザから孫煩悩なおじいちゃんまで幅広いキャラクターを演じた大杉さんの魅力を存分に楽しめるハマり役でした。

元ラーメン店主役として4シーズン続けて出演中だった大杉さん。熟年男の悲哀と葛藤、矜持を見事に表現する大杉さんの出演回は、コメディ主体のシリーズを引き締める役割も担っていた
元ラーメン店主役として4シーズン続けて出演中だった大杉さん。熟年男の悲哀と葛藤、矜持を見事に表現する大杉さんの出演回は、コメディ主体のシリーズを引き締める役割も担っていた

「予算や時間が限られた地方局制作のドラマにもかかわらず、脚本が魅力的だからと快く出演してくださった。大杉さんが出てくれたことで、その後のキャスティングもスムーズに交渉を進めることができました」と神道俊浩プロデューサー。キャストの中でも「大杉漣」の名前にはずっしりと重みがありました。そして、1話ごとに登場人物が変わるオムニバスドラマの中でも、大杉さんが登場するエピソード回は物語に深みがありました。

大杉さんちょっといい話。『名古屋のチームがすごくいいんだよ』

「スタッフや現場の雰囲気をすごく気に入ってくれて、東京の業界の人たちにも話してくれていたんです。いろんなところで“大杉さんから『名古屋のドラマのチームがすごくいいんだよ』と聞いてるよ”と言われて、本当にうれしく思っていました」という神道プロデューサー。名古屋で収録があった際は毎回お気に入りの「味仙」(台湾ラーメンが名物の人気中華料理店)で食事会を開き、いつもスタッフのほぼ全員が出席するチームワークのよさに目を細めていたそう。そんな大杉さん自身が、制作チームの結束を強める役割を担っていたことは疑いがありません(食事代はいつも大杉さんのおごりだったとか)。

番組HPの「このドラマに出演するキャストやスタッフと又会いたいな、といつも思っていました」とのコメントからも作品に対する愛情が伝わってくる。続く「いつも元気で健康で、役者として緊張感をもって過ごしたいと思います」の一言が胸に迫る
番組HPの「このドラマに出演するキャストやスタッフと又会いたいな、といつも思っていました」とのコメントからも作品に対する愛情が伝わってくる。続く「いつも元気で健康で、役者として緊張感をもって過ごしたいと思います」の一言が胸に迫る

訃報が伝えられた後には、視聴者からも悲しみの声が数多く寄せられました。SNSでも、メジャーな映画やドラマで活躍する大杉さんが名古屋地区でしか観られないドラマに出てくれていたことに感謝する声が見られました。さらに、スタッフがロケの協力先などに訃報を知らせに回ると、かかわった人誰しもがまるで身内に不幸があったかのように大杉さんの死を悼んでいたといいます。

残りわずかな貴重な名演技。ネット配信で全国で視聴可

1月15日からスタートした現在放映中の第6シーズンでは、大杉さんの登場回は第9話。制作は昨年の12月で、亡くなるほんの3か月ほど前に収録されました。同回は当初からの予定通り、3月12日深夜0時20分~(日付は13日)の放映が決定。さらにこれに先駆けて同日昼14時には、シリーズ過去3回の大杉さん出演回の再放送も決まりました

最後の出演回は、大杉さん演じる今村が恋に落ちるエピソード
最後の出演回は、大杉さん演じる今村が恋に落ちるエピソード

まだ公開されていない映像としては残りわずかな大杉さんの姿。不幸中の幸いというべきかネット配信もされるので全国の人に観てもらうことができます(TVer(ティーバー)にて見逃し配信。地上波オンエア後一週間限定)。大杉さんが愛してくれていたこのドラマを、地元・名古屋の視聴者はもちろん、全国の人にも観てもらい、その雄姿を目に焼き付けてもらうことを願います。

(画像はすべてメ~テレ提供)

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名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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