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なぜ保護者は食べられなかったのか?卒業式で配られた「伝説の紅白饅頭」と「百年続く柏餅」の秘密/藤沢市

ころんころライター(藤沢市)

藤沢市のみなさまこんばんは。今夜もおやつの時間を心待ちにしている筆者ころんころです。本日のおやつは『菊野屋製菓舗』「かしわ餅(1個200円)」(日持ちは購入翌日まで)です。

端午の節句「こどもの日」と言えば「柏餅」。

『菊野屋製菓舗』
『菊野屋製菓舗』

東日本に多く育成する「柏」は、冬の間葉を落とさず、新芽が吹く頃に落葉。「跡継ぎができるまで葉を落とさない」ことから縁起の良い木とされています。

大正10年(102年前)の創業当時から作られている『菊野屋製菓舗』の「かしわ餅」は、何と言っても「餡」が魅力。

「うちはやっぱり『時間をかけて炊き込んだ小豆餡』が美味しいってお客さんに言われるね!」と話すのは、『菊野屋製菓舗』に生まれ、子どものころから手の届くところに和菓子のある生活の中で過ごし、和菓子担当一筋で3代目当主となった椎野 誠司さん。

いい笑顔を見せる、3代目当主・椎野 誠司さん(Photo by Yosuke Tanaka/AFLO)
いい笑顔を見せる、3代目当主・椎野 誠司さん(Photo by Yosuke Tanaka/AFLO)

椎野さんが自信を見せる『菊野屋製菓舗』の餡には、こんな伝説も…。

とある高校の卒業式で配られた『菊野屋製菓舗』の「紅白饅頭」。式典後、あまりの美味しさから子どもたちがペロリと食べてしまい、家で待つ保護者の口には入らなかったのだとか(さぁ大変!)。

『菊野屋製菓舗』の「紅白饅頭」(Photo by Yosuke Tanaka/AFLO)
『菊野屋製菓舗』の「紅白饅頭」(Photo by Yosuke Tanaka/AFLO)

きっと子どもたちから「あの饅頭の餡は旨かった!」と、「饅頭への誉め言葉」と「空き箱」だけを受け取ったのでしょう。悲しき保護者たちは「私たちの口には入りませんでした」と、店頭に商品を買い求めに来たそうです...(名付けて「卒業式の絶品紅白饅頭伝説」)。

Photo by Yosuke Tanaka/AFLO
Photo by Yosuke Tanaka/AFLO

しかし、そんな伝説まで残す『菊野屋製菓舗』の餡とは、一体どのように作られているのか気になります。今回は特別に製造現場へ入らせていただきました。

Photo by Yosuke Tanaka/AFLO
Photo by Yosuke Tanaka/AFLO

『菊野屋製菓舗』の餡は、厳選した北海道産小豆(大納言)から作る本格自家製餡。

まずは強火で2時間しっかりと小豆を煮て、皮を柔らかくしていきます。その際にでる「灰汁(あく)」を取り除く作業を「渋切り」と言うそう。※「こしあん」はこのあと粉砕。乾燥させた「さらし餡」を作ります。

ぷっくり真ん丸で優しい味わいが特徴の「小豆(大納言)」(Photo by Yosuke Tanaka/AFLO)
ぷっくり真ん丸で優しい味わいが特徴の「小豆(大納言)」(Photo by Yosuke Tanaka/AFLO)

炊きあがった小豆は撹拌機に投入。ここから「あんこ」として練り上げます。

Photo by Yosuke Tanaka/AFLO
Photo by Yosuke Tanaka/AFLO

砂糖や水飴などを加え、鍋底からしっかりと混ぜ合わされていく餡。一度に作る量はおよそ30キロにも及ぶのだとか。

Photo by Yosuke Tanaka/AFLO
Photo by Yosuke Tanaka/AFLO

「砂糖はね、甘さを加えるだけじゃなく『和菓子を日持ちさせるため』に使うの。冷蔵庫がなかった時代は、砂糖や塩を上手に使って保存食を作っていたでしょ。常温でも長くもつ保存食は、昔の人の知恵と工夫のかたまりだよね」と椎野さん。砂糖には「素材の水分を吸収し、雑菌の繁殖を抑える役割」もあると説明します。

和菓子と砂糖の関係について教わりながら、さらに1時間練り上げます。

Photo by Yosuke Tanaka/AFLO
Photo by Yosuke Tanaka/AFLO

ようやく自家製餡ができてきました。最後の「仕上がり」は職人の目で見極めます。

Photo by Yosuke Tanaka/AFLO
Photo by Yosuke Tanaka/AFLO

こうした手間暇と心を込めて作られる『菊野屋製菓舗』の自家製餡。その餡をたっぷりと詰めた「かしわ餅」が、今、店頭に並んでいます。

草餅の皮は「つぶあん」、白の皮は「こしあん」、桃色の皮は「京みそあん」。

「根っからの甘いもの好きさんは、甘みが強くてコクのある『つぶあん』を好まれます。また、滑らかな舌触りや上品な甘さを好む方は『こしあん』を選ばれますね」と話すのは、椎野さんの奥さま。

「『みそあん』には京都の香り高い白味噌を使っています。他店のものと違い、白味噌の風味だけを活かしているので『しょっぱくない餡』と『みそあん』が苦手な方からも好評です。ぜひ試してみてくださいね」と続けます。

上新粉と白玉粉で作られる皮は、もちっとした食感と歯切れのよさを両立させる
上新粉と白玉粉で作られる皮は、もちっとした食感と歯切れのよさを両立させる

全種類を食べ比べてみた筆者ですが、個人的に一番好きなのは「つぶあん」。

濃厚な甘さと爽やかな草餅のコントラストに食べる手が止まらず。噛むほどににじみでる、小豆の皮に含まれるわずかなほろ苦さや香ばしさも「つぶあん」ならではの旨みに感じます。またみずみずしくて舌ざわりのよい「こしあん」は、夏の訪れを感じさせる味。風味豊かな「みそあん」はまろやかでほっとする味わいでした。

それにしても、熟練の技が詰まった本当に美味しい餡。高校生たちが紅白饅頭をたいらげてしまったのも…理解できます。笑

写真左『菊野屋製菓舗』のバウムクーヘンをデコレーションした「鯉のぼりクーヘン(380円)」。「かしわ餅」と併せて楽しみたい
写真左『菊野屋製菓舗』のバウムクーヘンをデコレーションした「鯉のぼりクーヘン(380円)」。「かしわ餅」と併せて楽しみたい

100年以上続く老舗和洋菓子店『菊野屋製菓舗』の「かしわ餅」。販売は5月下旬頃までとのこと。ご家族でぜひ足を運んでみてください。

基本情報
店名:菊野屋製菓舗(Rettyページ
住所:藤沢市宮原1104-2
アクセス:湘南台駅より車で約20分
電話:0466-48-1020
駐車場:有り
ジャンル:スイーツ

公式 ホームページ(外部リンク)
公式 Instagram(外部リンク)
※詳細は『菊野屋製菓舗』の公式サイトをご確認ください。

取材・撮影・校正協力 菊野屋製菓舗 椎野様
撮影・校正協力 株式会社アフロ 企画撮影部 斎藤様
※菊野屋製菓舗様のご協力により、撮影用商品を無償でご提供いただきました。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。

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ライター(藤沢市)

湘南エリアの複数メディアや紙面、昭文社「まっぷるトラベルガイド」などで、記事執筆&撮影を担当。取材スポットは1000ヶ所超え。そんな取材後記や、徒然なるままのゆるゆる日暮らしを、Instagramに綴っています。ほわっとあたたかくなる「神奈川県藤沢市」の情報をお届けできたら幸いです。※毎週日曜の20時10分に、LINEを通じて1週間分の記事を「まとめてお届け (ダイジェスト配信)」しています。友だち追加すると、藤沢市の話題(特に美味しいもの情報)に困りません。

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