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ウクライナ軍、対戦車地雷を落としてくるだけのシンプルなラジコンカー開発

佐藤仁学術研究員・著述家
(Slava提供)

2023年9月にウクライナで開発している対戦車地雷を敵の陣地に設置できる無人のラジコンカーのショート動画が公開された。「設置」というよりも、リモートで操作した無人のラジコンカーで、対戦車地雷を敷設したい場所で停車して、対戦車地雷をラジコンカーから落とすだけのシンプルなつくりである。カメラが搭載されている小型のラジコンカーなので、運べるのはせいぜい2つくらいで動画では1つだけ運んで落としていた。ラジコンカーのボディが斜めになっているので地雷を落としやすくなっている。

▼地雷を落としてくるだけのシンプルなつくりのラジコンカー

無人のラジコンカーなので、人間の兵士が入り込めない危険な地域やロシア軍に占領された地域などに対戦車地雷を設置するのに適している。このような「対戦車地雷を敷設できるラジコンカー」はウクライナでは多く開発されている。2023年9月にはベルトコンベアーのようなレーンが動いて地雷を敷設(落とす)する「対戦車地雷を敷設できるラジコンカー」の動画が紹介されていた。こちらは4つ地雷を運ぶことができる。

▼地雷を4つ運搬できる「対戦車地雷を敷設できるラジコンカー」

ウクライナ軍では対戦車地雷を搭載してロシア軍に突っ込んでいく「神風地雷ラジコンカー」も作っている。人間の兵士がラジコンカーの上に地雷を2つ搭載して、遠隔操作しながら敵軍の陣地に突っ込んでいき爆発する。

「対戦車地雷を敷設できるラジコンカー」は対戦車地雷を遠隔操作で敷設していくものだが、「神風地雷ラジコンカー」は人間の兵士が操縦して敵軍の陣地に突っ込んでいき兵士のいる塹壕や軍事施設などにぶつかって爆発する。2023年4月に試験を行っている動画を公開していた。「神風地雷ラジコンカー」は敵軍にぶつかっていき爆発するので再利用することはできないが、「対戦車地雷を敷設できるラジコンカー」はロシア軍に破壊されない限り、また戻ってきて何回でも使用できる。

ウクライナ軍はウクライナ国内において対戦車地雷や対人地雷を敷設しているが、ロシア軍の戦車や兵士だけがその地雷を踏んでしまい爆発するのではなくウクライナ兵や一般市民も犠牲になる恐れがある。地雷は触れてしまったら爆発する、世界で最も古い「自律型殺傷兵器」の1つである。地雷は触ったのが味方か敵かの判断をしない。触れたらすぐに爆発するだけである。

「対戦車地雷を敷設できるラジコンカー」の発明によって、簡単に地雷を敷設できるようになる。「対戦車地雷を敷設できるラジコンカー」でロシア軍への攻撃も容易になるが、敷設しているのはウクライナ国内なので、自軍や一般市民が犠牲になってしまう危険も大きい。またロシア軍が接触して爆発しない限り、紛争が終わってからもウクライナ国内に地雷が残ったままであり、いずれ除去しなければならない。

▼「神風地雷ラジコンカー」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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