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Jリーグの外国人枠増を欧州に学ぶ。地方クラブは有利なのか不利なのか

杉山茂樹スポーツライター
年間予算ナンバーワンクラブながら優勝から遠ざかっている浦和レッズ(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 イニエスタと言えば、バルセロナの下部組織、ラ・マシア出身の生え抜き選手として知られる。チャビ・エルナンデス、グアルディオラ、現役ではジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケツ、リオネル・メッシもこの仲間に収まる。だが現役の3人はいずれも30歳を超えていて、その下の年代には見当たらない。バルサ以外でプロ選手になった選手はいるものの、育成組織がトップチームを支える機能を満足にはたしているとは言い難い状態だ。

 バルサの強さや魅力を語るとき、ここは外せない要素になっていた。クラブサッカーかくあるべしと、その理想郷として紹介されることが多かった。しかし、育つ選手の絶対数は昔からけっして高くなく、有名な選手が何人か続いたので、実際よりポジティブに映っていたというのが実態だ。

 13歳の途中まで、そこでめざましい活躍をした久保建英選手(横浜Fマリノス)は、現在17歳。18歳になったら再度、バルサの下部組織の門を叩くのではないかと言われているが、そこからバルサのトップチームに昇り詰める道はあまりにも険しい。

 バルサは現在、欧州クラブランキング3位のチーム。スペインリーグ優勝とCL優勝を常に同時に求められている世界屈指のクラブだ。そこでプレーするに相応しい選手を探そうとすれば、探すエリアを広げる必要がある。確率的に言えば、自クラブの下部組織といえども選択肢のひとつに過ぎないのだ。バルサの下部組織が、いかに将来性に富む人材の宝庫だとしても、世界の広さには適わない。

 生え抜きがトップチームに昇格することが難しくなった大きな理由として挙げられるのがボスマン判決だ。移籍の自由を謳ったこの判決内容が施行され、外国人枠が事実上撤廃されたのは96-97シーズンだが、流れはこれを機に激変した。下部組織から昇格する人数は、外国人が増加した分だけ減ることになった。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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