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ハリウッドセレブの、映画みたいなプロポーズ

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ジャスティン・ビーバーは、プロポーズの場所に南の島バハマを選んだ(写真:Shutterstock/アフロ)

 恋愛において、「映画に出てくるみたい」は、究極のロマンチックを意味する表現。だが、実際、映画やテレビ、ミュージックビデオなどに出るセレブたちは、スクリーンの外でも夢のようなプロポーズをするのだろうか。

 ジャスティン・ビーバーの場合は、イエスと言ってよさそうだ。ヘイリー・ボールドウィンにプロポーズするにあたり、彼は彼女をバハマに連れて行っている。その言葉を口にしたのは、サルサダンスを踊っている途中。その直前、彼のボディガードらが、ほかの客に携帯電話使用禁止のお達しを出したというところは、さすがセレブだ。

 特別なイベントは日常から離れた特別の場所でと考えたセレブは、ほかにも多数いる。たとえばトム・クルーズがケイティ・ホームズにプロポーズしたのは、エッフェル塔のてっぺんだった。クルーズはこの時、「宇宙戦争」のプロモーションでパリを訪れていたのである。

 チャーリー・シーンが3番目の妻ブルック・ミュラーにプロポーズしたのは、バカンス先のコスタリカ。彼はまず腕時計をプレゼントしたのだが、それには「結婚してくれますか?」と彫り込んであった。彼女がびっくりしたのを見て、今度は婚約指輪をわたすという、なかなか金のかかった演出である。

 だが、金のかかり方では、カニエ・ウエストがもっと上だ。

 仕事でサンフランシスコにいたウエストは、「目を閉じていて」と言ってキム・カーダシアンを車に乗せた。着いた先は、サンフランシスコ・ジャイアンツのホームスタジアム、AT&Tパーク。カーダシアンが目を開けると、オーケストラが音楽の生演奏を始め、歌の終わりにウエストがひざまずいてプロポーズをした。そのタイミングで、スコアボードにも「Pleeease Marry Meee!!!(結婚してください)」という文が映し出される。彼女がイエスと言うと、隠れていた家族たちが現れて、そこからは盛大なパーティとなった。

 飛行機に乗らない近場でも、意味のある場所を見つけたのが、アレック・ボールドウィンだ。彼にとって2番目の妻となるスペイン人のヨガインストラクター、ヒラリア・トーマスに求婚すると決めた時、ボールドウィンは、最初からその意図を彼女に伝えた上で、モントークビーチの東端にある灯台に連れて行っている。そこが、「今、君を連れて行ってあげられる、スペインに一番近い場所」だったからだ。最初からプロポーズすると教えられていたことについて、トーマスは後に「彼は私に何も秘密にできないの。それは良いこと」と述べた。それでもプロポーズの言葉を聞いた時には、感動で泣いてしまったそうである。

バレンタインデー、ニューイヤーズ・イブ、誕生日はよく選ばれる日

 日本では女性が男性にチョコレートをあげる日になってしまったが、アメリカでバレンタインデーは恋人たちの日だ。愛を祝うこの夜、素敵なレストランにディナーに出かけ、プレゼントを交換し合うつもりでいたら、さらに思わぬプレゼントを渡されて感激する女性も、少なくはない。

 カリスタ・フロックハートはそのひとり。ハリソン・フォードがゴールデン・グローブで彼女に出会ったのは2002年だが、妻になってほしいと言ったのは、それから7年後のバレンタインデーだった。クリスティーナ・アギレラは、一度だけでなく、なんと二度もこの日のサプライズを経験している。元夫ジェイソン・ブラットマンも、現在の婚約者マシュー・ラトラーも、この日を選んで彼女にプロポーズしたのだ。

 カウントダウンが終わり、年が変わった直後にキスを交わし合う大晦日もまた、ロマンチックな雰囲気がある日。マイケル・ダグラスはキャサリン・ゼタ=ジョーンズにコロラド州アスペンの別荘で、ラッセル・ブランドはケイティ・ペリーにインドのゾウの上で、この夜にプロポーズをした。

 一方で、マシュー・マコノヒーは、クリスマスを選んでいる。すでに交際歴5年で、自分の息子も生んでくれていたカミラ・アルヴェスに、マコノヒーは箱が何重にも入ったプレゼントを渡した。ようやく最後の箱にたどりついたら、中に入っていたのは普通のクリスマスプレゼントではなく、婚約指輪だったのである。

 誕生日もまた、よく選ばれる日だ。先のカーダシアンは33歳の誕生日にプロポーズされているが、ジェニファー・ガーナーがベン・アフレックからプロポーズを受けたのも、やはり彼女の33歳の誕生日である。一方、ジェニファー・アニストンは、ジャスティン・セローの41歳の誕生日に、セローからプロポーズされた。男が自分の誕生日に、というのは少し珍しい気もしなくはないが、アニストンは感動で涙ぐんだとのことだし、素敵なサプライズをあげるのに悪い日ということはない。

結婚しようと決めた日が、特別の日

 その意味でいうなら、どんな日だってプロポーズにふさわしい日だ。わざわざ特定のイベントを待つ必要はなく、そう決めたなら、すぐ伝えてあげればいい。

 ジョージ・クルーニーは、それを実行した人だ。彼がアマル・アラムディンにプロポーズしたのは、自宅での普通のディナー。キャンドルに火を灯すために「ライターがその箱に入っているから、取ってくれる?」とクルーニーに頼まれて、箱を開けてみたら、そこには指輪が入っていた。あまりに不意打ちだったので、アマルディンはそれがプロポーズだと気づかず、クルーニーに「指輪しか入っていないけど?」と言ったそうだ。

 ウィル・スミスがジェイダ・ピンケットにプロポーズしたのは、もっとなんでもない夜、いつものように寝ようとしている時だった。彼は「僕ら、結婚したらすごくうまく行くと思わない?結婚してくれる?」と言い、ピンケットが「いいわよ」と答えたのだそうだ。指輪も、演出もなしである。

 ゲイリー・オールドマンの5度目にして現在の妻ジゼル・シュミットも、なんでもない状況でプロポーズされた。彼女の場合は、「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」の撮影現場で、チャーチルの特殊メイクと衣装を着たオールドマンからプロポーズを受けている。

「前から(結婚するかどうか)話はしていたんだが、撮影の合間の休憩時間に、突然、そうしたい衝動に駆られたんだ」と、オールドマンはアメリカの深夜トーク番組で、その時のことを明かした。この役で、オールドマンは、キャリア初のオスカーを受賞しているのだが、その背後には、こんな秘話もあったのである。それにしても、チャーチルからプロポーズされるというのは、なかなかあることではないだろう。なんでもない日と言っても、ハリウッドの場合は、やはりちょっと違うのだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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