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「映画やドラマから学ぶ政治や政策づくり」に関する本の企画を考えてみた

鈴木崇弘政策研究者、PHP総研特任フェロー
映画やドラマは、私達がわかりにくいあるいはみえにくいものの理解度高めてくれる(提供:イメージマート)

『映画で学ぶジャーナリズム~社会を支える報道のしくみ』という本が出版された。この本が出版されたきっかけは、「若者はYouTubeやネットワークから情報を得るものの、実際の記者がどうやって情報を集め記事にしていくか、そしてそれらがどう社会にインパクトを与えてきたについては、良くわかって」いず、「学生たちが記者の仕事というものを理解していないという話」からだそうで、「ジャーナリズムを学ぶ学生への入門書」的になっていて、大変興味深い内容になっている(注)。関心のある方は、ぜひ読んで活用してほしい。

ジャーナリズムや記者の実際の活動などはわかりにくい
ジャーナリズムや記者の実際の活動などはわかりにくい提供:イメージマート

 この本を読んで思い出した。

 筆者は、これまで20年以上にわたり、政治や政策に関する授業において教鞭をとってきた。その際には、政治や政策づくりはそのプロセスは一般的にクローズであり、いわゆる「(ハードの)ものづくり」ではなく必ずしも実物があるわけでないので、学生や一般の方々には非常にわかりにくく、想像しにくいと常に感じてきた。

映画やドラマは、政治や政策づくりの実際を知り、理解するうえで大いに役立つ
映画やドラマは、政治や政策づくりの実際を知り、理解するうえで大いに役立つ提供:イメージマート

 そこで、政治や政策づくりをできるだけ感じ、理解できるようにするために、その現場を見学できる機会をつくると共に、政治や政策づくりに関わる映画やドラマなどを絶えず探してきた。そして、これはという作品をみつけた際には、まず自身で視聴し、それを授業等でどのように活かせるかを考え、活かせると思える作品はできる限り利活用してきた。

政治のその全体像を知ることは難しい
政治のその全体像を知ることは難しい写真:アフロ

 このようなことから、上記の本のことを知り、また同様の趣旨の記事(政治や政策に関する映画やドラマを紹介する記事)なども書けないかと考えてみたこともあり、筆者自身で、映画やドラマを活用して政治や政策づくりについて学ぶ本の目次(案)を作成してみた。それが、次の目次である。

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『映画やドラマから学ぶ政治や政策づくり』

わかりにくい場面やみえにくい状況を可視化し、理解を深める

1.はじめに…政治や政策づくりにおける現場とそこで活躍する人々を知る

・本書を通じて「政治」や「民主主義」について学び、市民になる

・本書の活用の仕方

2.政治について多面的に考えてみよう(政治における多面性)

・映画「チョイス(SWING VOTE)」(米国、2008年)

・ドラマ「サバイバー60日間の大統領([宿命の大統領]韓国版)」(韓国、2019年)

・ドラマ「サバイバー: 宿命の大統領」(米国、2017年)

・ドラマ「コペンハーゲン/首相の決断」(デンマーク、2010年~)

・ドラマ「チェンジ」(日本、2008年)

・ドラマ「レッツ・ゴー!永田町」(日本、2001年)

・ドラマ「ザ・ホワイトハウス(The West Wing)」(米国、1999年~2006年)

3.危機的状況において誰がどのように動いて政治決定をしているのか(危機的状況における政治決定)

・映画「THIRTEEN DAYS」(米国、2000年) 

・映画「国家が破産する日」(韓国、2018年) 

・映画「シン・ゴジラ」(日本、2016年)

・映画「太陽の蓋」(日本、2016年)

4.自分たちの代表を選ぶ選挙ではどんなことがおこなわれているのか(政治における選挙)

・映画「選挙の勝ち方教えます Our Brand Is Crisis」(ドキュメンタリー映画「Our Brand Is Crisis」を基に作成)(米国、2015年)

・映画「選挙2」(日本、2013年)

・映画「スーパー・チューズデー」(米国、2012年)

・映画「選挙」(日本、2006年)  

・映画「The War Room: Criterion Collection(クリントンを大統領にした男)」(米国、1993年)

。ドラマ「WAVE MAKERS~選挙の人々」(台湾、2023年)

5.政治や政策に関わるプレーヤーの側から政治をみてみよう(政治・政策に関わるプレーヤー)

・映画「総理の夫」(日本、2021年)

・映画「記憶にございません!」(日本、2019年)

・映画「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男(DARKEST HOUR)」(英国、2017年)

・映画「県庁の星」(日本、2006年)

・映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(英国、2002年)

・ドラマ「ザ・ディプロマット」(米国、2023年)

・ドラマ「クイーン・メーカー」(韓国、2023年)

・ドラマ「罠の戦争」(日本、2023年)

・ドラマ「補佐官」(韓国、シーズン1:2021年、シーズン2:2023年)

・ドラマ「民衆の敵」(日本、2017年) 

・ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」(米国、シーズン1:2013年、シーズン2:2014年、シーズン3:2015年、シーズン4:2016年3月4日、シーズン5:2017年)

6.司法も政治・政策に関わる重要な働きをしている(司法と政治の関係)

・映画「RBG 最強の85才(RBG)」(米国、2019年)

・映画「ビリーブ 未来への大逆転(On the Basis of Sex)」(米国、2018年)

7.政治とメディアの関係はどうなっているかを知ろう(政治とメディアの関係)

・映画「新聞記者」(日本、2019年)

・映画「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書(The Post)」(米国、2018年)

・映画「破線のマリス」(日本、2000年)

・映画「NO(ノー)」(チリ・フランス・米国、2012年)

・映画「大統領の陰謀」(米国、1976年)

・ドラマ「新聞記者」(日本、2022年)

8.政治や政策づくりでの市民や専門家も重要な役割を果たしている(ロビー活動、アドボカシーそして市民と政策)

・映画「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」(米国、2019年)

・映画「薬の神じゃない!」(中国、2018年)

・映画「女神の見えざる手(Miss Sloane)」(米国、2016年)

・映画「BRIDGE OF SPIES(ブリッジ・オブ・スパイ)」(米国、2015年)

・映画「サンキュー・スモーキング<特別編>(Thank you for Smoking)」(米国、2006年)

・映画「エリン・ブロコビッチ」(米国、2000年)

・ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(日本、2016年)

9.おわりに

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政策が実際にどのようにつくられるかを知るのは難しい
政策が実際にどのようにつくられるかを知るのは難しい写真:イメージマート

 いかがだろうか。まだまだ着想段階だが、これをブラッシュアップして、実際に出版できたらと考えている。また作品が多い章では、内容や入手の容易さなども基準にして対象作品の数を絞り、深掘りした方がよさそうだ。

 そこで読者の方にお願いがある。上記の映画やドラマ以外にも、このテーマで活用できそうな作品があれば、ぜひお知らせ願いたい。またこの企画へのコメントやサジェスチョンがあればいただきたい。

 そしてもし、この企画にご興味を持たれた出版関係者がいれば、ご一報いただきたいと考えている。

(注)この一文の「」の部分の出典は、同書の共著者の一人で、英字新聞社ジャパンタイムズで政治・経済担当の記者を経て、報道部長、執行役員最高編集責任者(同紙116年の歴史で女性初)を務め、現在フリーのジャーナリストであり、大学でも教鞭をとる大門小百合さんのFacebookからである。

政策研究者、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。経済安全保障経営センター研究主幹等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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