ゼレンスキー大統領来日でG7広島サミットは大成功!岸田首相はいよいよ衆議院解散に挑むのか
ゼレンスキー大統領来日の内幕
G7広島サミットは、ウクライナのゼレンスキー大統領を迎え、5月21日に成功裡に閉幕した。首脳宣言では「核兵器のない世界という究極の目標に向け取り組みを強化する」と謳い、被爆地・広島の悲劇とともにロシアによる核威嚇を受けているウクライナの現状をも浮かび上がらせた。
しかし会議に参加する各国の思惑は決してセンチメンタルなものではなく、したたかな計算が見てとれる。まずは5月20日午後に来日したゼレンスキー大統領だ。
ゼレンスキー大統領はその前日、アラブ連盟首脳会議に参加し、領土回復やロシア軍の撤退など10項目にわたるウクライナの和平案を訴え、参加国の支持を求めた。アラブ諸国はロシアと関係が深い国が多く、首脳会議の主催国であるサウジアラビアもロシアの仲介により、今年4月にシリアとの国交を正常化。ロシア支持を鮮明にするシリアを首脳会議に招待した。
その会場となったサウジアラビアのジッタまで、ゼレンスキー大統領を運んだのがフランス政府専用機だった。そしてすぐさま、フランス革命の「自由、平等、博愛」を象徴する3 色で彩った専用機は広島に飛んだ。ゼレンスキー大統領が最も会いたかったのは、G20議長国として招待されたインドのモディ首相だろう。インドは公然とロシア支持を表明していないが、経済的な関係は緊密で、昨年のロシアからの原油の輸入量は一昨年の10倍に上っている。
わずか30時間の滞在で、ゼレンスキー大統領はイギリスのスナク首相、フランスのマクロン大統領、イタリアのメローニ首相らと会談。21日には岸田首相と原爆死没者慰霊碑に献花・黙とうを行い、バイデン大統領とも会談。ウクライナ兵へのF16戦闘機の訓練を含む新たな軍事支援を得ることになった。
各国の思惑が噛み合って……
一方で、西側首脳たちもメリットを享受した。「政府債務上限問題」で来日すら危ぶまれたアメリカのバイデン大統領は、オーストラリアで予定されていたクアッドを日本で行うことでスケジュールを縮め、広島サミットに参加。来年の大統領選に弾みを付けた。
ゼレンスキー大統領を広島まで運んだフランスもまた、存在感を高めたといえる。ゼレンスキー大統領は昨年12月に訪米した際、米空軍機ボーイングC-40Bを利用した。イギリスの基地から、F15機も護衛に付いた。この度の来日も米軍機の使用が報じられたが、フランス機の使用はゼレンスキー大統領の希望だった。マクロン大統領は昨年5月、ロシアとウクライナについて「両国は侮辱しあってはならない」と発言してロシア寄りだと批判されたが、今年に入って軽戦車AMX-10RCの提供を決定するなど、他のヨーロッパ諸国に先駆けてウクライナを援助する姿勢を見せている。
中でももっとも“メリット”を享受したのは、岸田首相だろう。G7広島サミット開催中に行われた世論調査では、内閣支持率が爆上げしたからだ。
岸田内閣の支持率が爆上げ
毎日新聞が5月20日と21日に行った世論調査では、内閣支持率は前月比9ポイント増の45%で、不支持率は同9ポイント減の46%だった。自民党政権には厳しめの数字が出る同調査ゆえに、不支持率が支持率を上回るのは仕方ないとしても、その差はわずか1ポイントまで縮められた。
19日から21日まで行われた讀賣新聞と日本テレビの共同調査でも、5月の内閣支持率は56%と前月比で9ポイント増加、不支持率は同4ポイント減の33%で、実に8か月振りに内閣支持率が50%台を回復したことになる。
なお、讀賣新聞が前回の衆議院選直前に行った2021年10月の電話全国世論調査では、内閣支持率は52%で不支持率は30%と、現在とほぼ同じ水準だ。また自民党支持率も、今回が38%で3年前が40%と、これもほぼ変わらない。
しかしながら野党の勢力には大きな変化が見てとれる。2021年の衆議院選直後の11月の調査では、立憲民主党の政党支持率は11%だったが、今回はその半分以下の5%になり、政党支持率7%の日本維新の会に後塵を拝している。
すなわち安倍政権時に始まった自民党一強時代はまだ続いており、野党間でその順位は入れ替わろうとも、自民党が優位なことに変わりはない。
解散すれば、全て吹き飛ぶ
もっとも新東京28区を巡る自公の争いや、減数区となる山口県などで選挙区争いがあることは事実だ。新東京28区については、公明党が具体的な候補者の名前を出さないものの、いちはやく独自候補を擁立することを宣言。維新の台頭により「常勝関西」が危機状態にある公明党は、大阪で失いそうな選挙区を5選挙区も増加する東京でなんとか補いたいがため、「新28区を渡さなかったら、東京都内の全小選挙区で自民党の公認候補を推薦しない」と通告した。だが自民党としては、これまで公明党に譲ってきた旧12区と何ら関係ない新28区をむざむざ渡すわけにはいかないのだ。
さらに山口県では、新3区を巡る林芳正外相と吉田真次氏の抗争がある。吉田氏は故・安倍晋三元首相の後継として今年4月の衆議院補選で勝利した。一方で林氏は新3区に含まれる下関市が林家代々の本来の地盤だ。
だが、解散を打ってしまえば、このような問題は自ずから解決していく。鍵を握るのは岸田首相だけであって、その他は従っていくしかないのだ。
岸田首相は21日の会見で衆議院解散の可能性について、「今は考えていない」と否定して見せた。しかしそれを真に受ける人はほぼ皆無だろう。
長期政権を目指して
17日の宏池会のパーティーで、岸田首相は広島サミットを「歴史の転換点に開かれるサミット」と大きく持ち上げた。そして1979年の東京サミットを主催した大平正芳首相や1993年の東京サミットを仕切った宮澤喜一首相とともに、自分を持ち上げている。
G7広島サミットは「核兵器のない世界」を提唱し、ゼレンスキー大統領を来日させたことは歴史に刻まれることになった。これらとともに岸田首相の名前もまた、歴史に残るだろう。そのような偉業を成し遂げた首相として、長期政権は夢ではない。そのチャンスはいま訪れている。そして幸運の女神には後ろ髪はない。