「外国人に知られるな」金正恩がひた隠す"危ない施設"
北朝鮮の首都・平壌郊外の勝湖里(スンホリ)にあった第8号教化所(刑務所)。事実上の管理所(政治犯収容所)として一昨年に開設されたが、今年6月中旬に閉鎖されたことは、デイリーNKでも既報のとおりだ。
その後、軽犯罪を犯した特権層を収容する労働鍛錬隊として再編されたとのことだが、その措置は国際社会の目を意識したものだったようだ。
デイリーNKの内部情報筋は、その理由を次のように説明した。
「勝湖里(管理所)が用途変更されたのは、他の管理所のように秘密衛戍区域にできない地理的特性があり、社会と徹底して隔離できなかったためだ」
平壌市内中心部から約25キロ、近隣には晩達山(マンダルサン)セメント工場やその従業員の住宅、中央養魚研究所など外部との出入りがありうる施設が存在し、国際社会の目を避けて徹底的な秘密を維持するには適当な場所ではないとの理由で、国の審査を受けた上で、労働鍛錬隊に変更されたとのことだ。
管理所は通常、まかり間違っても外国人の目に触れてはならないため、山奥に置かれている。世界最悪の人権侵害国家の北朝鮮の中でも、最も人権が侵害されているところである上に、収容者は、外部の人間に知られてはならない業務に従事させられていることもあるからだ。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
実際、勝湖里の教化所は26号管理所(政治犯収容所)として運営されていたが、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルの問題提起でその存在が国際社会に知られたことにより、1994年に閉鎖されている。
管理所から労働鍛錬隊に変わったことで、収監者も入れ替わり、労働強度も下げられたとのことだ。それも規定されたものより、さらに楽な仕事になっていると情報筋は伝えた。
所長や警備兵など管理者は異動させられておらず、警備は非常に厳重だが、平壌から近いこともあり、面会に来る人も多く、ワイロで待遇を改善してもらえるとのことだ。
ちなみに現在収監されているのは、電力工業省、資源開発省、鉄道省、対外経済省、朝鮮中央銀行の幹部や、慈江道(チャガンド)の戦略軍基地地下坑道と特区地区の設計を行っていた設計者やその家族などで、罪状は様々だという。
労働鍛錬隊の関係者は、これら幹部が収監されると、事件の書類をチェックして、社会復帰の可能性を見極めて待遇を決めるとのことだ。早期釈放、復権の可能性が高い人には、様々な便宜を図り、そうでない人には、過酷な待遇を行うのだ。