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熊本でアツい花火の競演を堪能!「やつしろ全国花火競技大会」(2023/10/21)を鑑賞してきました

やた香歩里花火鑑賞士な旅ライター

2023年10月21日(土)、熊本県八代市で「やつしろ全国花火競技大会」が開催されました。九州で唯一の花火競技大会であり、西日本屈指の大規模花火大会でもあります。競技はもちろん、ワイドなスターマインも凄かった! 往復の状況も交えて、その様子をレポートします。

八代駅から会場までは大混雑

会場となるのは、JR八代駅から徒歩約15分の球磨川河川緑地。

当日の周辺の宿は確保が難しいので、私は熊本駅の近くに宿をとっていました。先に宿にチェックインして出かけるのに少し手間取ってしまい、熊本駅に着いたのが16時前。それでも、会場に着いて、トイレに行って、出来れば公式グッズを買って、17:30にはスタンバイできるかなと思っていたのですが、残念ながら八代行きが出た直後。約20分の待ち時間のあと、ようやく16:17発の八代行きに乗ることができました。

16:55、八代駅到着!想定より遅くなったため気持ちは焦るものの、混雑していて思うように進めません。撮影機材もありかなりの大荷物なので、無理な追い越しや人の流れに突っ込んでいくのは厳禁。焦りつつ慎重に歩を進めていきます。

しかし、球磨川を渡る新萩原橋の前で軽い絶望感を味わうことに…。

橋上の人の流れが完全に止まっています。会場に行くにはこの橋を渡らなければならず、迂回する橋ははるか遠く。これはまずい。最悪間に合わないかも。
いやはや、いつもは最低1時間は前に着くように計算しているのに、痛恨のミス。

会場はそこに見えているのですが…

写真右手が有料観覧会場、左手の中州部分に筒場(花火の設置場所)が見えます
写真右手が有料観覧会場、左手の中州部分に筒場(花火の設置場所)が見えます

この橋からの夕陽は本当に素晴らしいんですが、楽しむ心の余裕はナッシング…

でも本当に見事な夕陽
でも本当に見事な夕陽

なんとか橋上の群衆はゆるゆると動き、時々止まりながらもじわじわ進んで、15分程度で脱することができました。ようやく橋を降りたのが17:30頃、まだ受付も済ませていないというのに、開始の18時まで時間がありません。筆者の席は撮影エリア席、会場入り口からやや遠い所にあります。重い荷物を引きずりながら、ようやく自席に到着したときには17:45を回っていました。

ああ、欲しかった公式グッズも買えないし、トイレに行く余裕すらない。
とにかく慌ててカメラをセットし、開始を待ちます。

予定通り18時に開会セレモニーがスタート。そしてまず、ドローンショーが始まりました。

株式会社レッドクリフが提供しているドローンショー。
終盤はドローンと一緒に花火も打ち上がりました。

「やつしろ花火」のロゴが見事。
「やつしろ花火」のロゴが見事。

2022年から、ドローンショーを実施する花火大会が増えてきています。2023年も、静岡県の「安倍川花火大会」(7月22日開催)や、千葉県の「とりで利根川花火大会」(8月12日開催)、秋田県の「大曲の花火 秋の章」(10月7日開催)など、いろんな花火大会で見られました。花火と同じく、夜の屋外で開催されるエンタメショーということで、これからもどんどん増えていくかもしれませんね。

いよいよオープニングスターマイン!

ドローンショーが終わり、いよいよオープニングのスペシャルスターマイン!Vaundy「怪獣の花唄」に合わせ、リズミカルに花火が上がります。
しかし私は、直前にカメラの設置位置を動かしたため、ピントがズレるという、ここでも痛恨のミス…。
こんなザンネン写真で多方面に申し訳ないんですが、雰囲気だけでも感じ取っていただければ。。。

躍動感あるスターマインで、圧倒的なボリュームと豪華さに、周囲からは「フィナーレかよ…」という声が聞こえてきました(笑)。

続いて競技花火へ

続いて競技花火へ入ります。気を撮り直し、ピントも直して、撮影に臨みました。

やつしろ全国花火競技大会の競技は、5号玉の部・10号玉の部・スターマインの部の3部門が実施されます。

5号玉の部:5号玉(直径約15cmの花火玉)5発で競う。
10号玉の部:10号玉(直径約30cmの花火玉)1発で競う。
スターマインの部:短時間に多数の花火玉を打ち上げるスターマイン(速射連発花火)の競技。音楽に合わせて打ち上げる。

参加全30社のうち、スターマインの部は九州の煙火店9社のみで、5号玉と10号玉の部は全煙火店で競います。

5号玉は、丸い多重芯の花火だったり型物花火(ハート型や動物など、何かをかたどった花火)だったりとさまざま。5発が全く同じではなく異なる色や形だったりと、煙火店ごとの独創的な表現が見られました。

5号玉:「昇曲付 三重芯錦閃華」小松煙火工業(秋田)
5号玉:「昇曲付 三重芯錦閃華」小松煙火工業(秋田)

10号玉は、上空約300mに上がり、開いた花火の大きさも直径約300mと大型。何重もの同心円になっていたり、真ん中や外周の部分がキラキラ輝いたり、色がぱっと変わったりと、1発でも存在感と見ごたえがあります。

10号玉:「昇小花付 三重芯秋菊の華」ホソヤエンタープライズ(東京)
10号玉:「昇小花付 三重芯秋菊の華」ホソヤエンタープライズ(東京)

スターマインは様々な花火を組み合わせ、音楽に合わせて打ち上げます。選曲にも個性があり、エンタメ要素が高い作品が見られます。

スターマイン:「ダイナミック花火」津山花火(熊本)
スターマイン:「ダイナミック花火」津山花火(熊本)

各社が5号玉・10号玉・スターマイン(九州の煙火店のみ)の順番で打ち上げます。

競技花火は、花火の種類や質を理解している人、各煙火店の個性や、過去の作品も覚えているような人には面白いのですが、花火を見慣れていない人だと、どの花火が良いのか判断ポイントがわからないし、淡々と花火の打ち上げが続くので、単調に感じられることもあると思います。

やつしろ全国花火競技大会では、九州以外の煙火店2~3社の後に九州の煙火店が入るという並び順。なので、5号玉・10号玉の打ち上げがしばらく続いた後に、九州の煙火店のスターマインが上がります。それがちょうどいいアクセントにもなっていて、競技性とエンタメ性をともに楽しめる構成になっています。

そして競技花火だけでなく、オープニング、フィナーレのほか、競技10社目のあとに協賛花火スペシャルスターマインが、20社目のあとに特別プログラムの「ミュージック花火」が披露されました。

協賛花火 スペシャルスターマイン
協賛花火 スペシャルスターマイン

競技花火の見どころって?

競技花火の面白さは、まずはその作品のクオリティの高さ。普通の花火大会ではあまり見られないような凝った花火が見られたりします。

また、煙火店によっては、いくつかの競技大会で一貫したテーマの作品を披露していたり、別の競技大会で出品した作品をさらにブラッシュアップしていたりと、継続性が見られることがあります。

たとえば、茨城県の山﨑煙火製造所は、伊勢神宮奉納全国花火大会や全国花火競技大会(大曲の花火)でも「海月、漂う」という同じタイトルの作品を出品しています。でも5号玉だったり10号玉だったりと、それぞれに違いがありました。

5号玉:「海月、漂う」山﨑煙火製造所(茨城)
5号玉:「海月、漂う」山﨑煙火製造所(茨城)

長野県の信州煙火工業も、複数の競技大会で「ランタナ~七変化の花~」を出品していますし

10号玉:「ランタナ~七変化の花」信州煙火工業(長野)
10号玉:「ランタナ~七変化の花」信州煙火工業(長野)

茨城県の野村花火工業の10号玉は「昇曲導付 五重芯変化菊」であることが多く、この作品で多数の優勝をさらっているのですが、これが毎回驚異の安定感と完成度。「今回も崩れないか?」が個人的注目ポイントだったりします。

10号玉:「昇曲導付 五重芯変化菊」野村花火工業(茨城)
10号玉:「昇曲導付 五重芯変化菊」野村花火工業(茨城)

各地で開催される花火競技大会をいくつも見に行くのは難しいと思いますが、全国花火競技大会(大曲の花火)や隅田川花火大会、土浦全国花火競技大会などの知名度の高い花火大会は、BSやCSなどでテレビ放送されています。現地で見るのが難しくても、テレビや配信、動画などで見ることもできます。花火が進化していたり、過去の作品とのつながっていたりすることに気づくと、あなたもどんどん競技花火に沼るかも?

ダイナミックな「ミュージック花火」は意表をついた選曲!

大会の目玉でもある、中盤の「ミュージック花火」。名前の通り、音楽とシンクロしたスターマインが披露されます。こちらは長野県の紅屋青木煙火店が担当。

2023年のタイトルは「ウタ&Fireworks」だったので、ああ、「ONE PIECE FILM RED」のウタの楽曲が使われるんだな、「新時代」かな「私は最強」かな(この2曲はこの2年間頻繁に使われてきましたし)と思っていたら、映画を見ていない私は全く知らない曲が流れてきてビックリ。

後から知ったのですが、「Tot Musica」と「風のゆくえ」だそうで。

パワフルで攻撃的でさえあるAdoの歌声に合わせ、縦横無尽に花火が飛び回り、紅屋青木煙火店らしく細かくリズムを刻みます。

かと思えばその伸びやかな歌声に乗るようにすーっと流れゆく光跡。音楽と花火のシンクロを堪能しました。

協賛花火などの大型プログラムのあとは若干煙が溜まりがちだったりもしましたが、終始テンポよく進み、あっという間にフィナーレを迎えました。
フィナーレは恒例の、八代市の愛唱歌「わたしのまちは」で7号玉50発、10号玉30発を上げる特大スターマイン。夜空に大きく広がる花火で締めくくりました。

天候も崩れず、トラブルもなく、無事に大会は終了!珠玉の作品をたくさん見せていただきました。
たくさんの方の尽力で花火大会は開催されています。至福の時間をありがとうございました!

帰りは駅前で長蛇の列

さて、花火大会で大変なのは帰りです。

終了は予定通り20:15頃でしたが、私は片付けに少し手間取ってしまい、移動を始めたのは20:30頃で、そのころにはもうすっかり周辺の客席はからっぽ。

帰路は新萩原橋も歩行者天国になっており、行きのように詰まって人の流れが止まってしまうことはなかったです。なので駅前までは30分程度で到着できました。駅への入場待機列は何度も折り返していたのでかなりの長さでしたが、臨時列車の増便もありじわじわ列は進んでいったので、約40分ほどの待ち時間で、21:41発の熊本行きに乗ることができました。

2023年の競技の結果は?

2023年の審査結果は、現在HPに掲載されています。

第36回やつしろ全国花火競技大会審査結果表

スターマインの部優勝は、福岡県の高田花火工業:筒井隆仁さんの「蛍の光」。キラキラ点滅する青みがかった花火や、ふわーっと光が散っていくような花火で、夜空を舞うたくさんの蛍が描かれました。「蛍の光」の原曲「Auld Lang Syne」のゆったりした曲調に乗せた、とても美しく、余韻の残るスターマインでした。

5号玉と10号玉部門は同じ煙火店が優勝しました。秋田県の北日本花火興業:今野義和さん。

5号玉「カッパの生け捕り大作戦!!」は、タイトル通り、カッパの顔が夜空に浮かぶ型物花火。さすが「型物の天才」として知られる今野さん、見事なカッパが出現し、客席からは「かわいい!」との声が。目がピカっと赤く光ったりもして、楽しい花火でした。

そして10号玉は「昇曲導付 三層・しらすの踊り咲き」。え?しらす?え?三重じゃなくて三層? 作品名が5号玉同様ユーモラスですね。

写真ではちょっとわかりづらいんですが…。外周の白い部分が「しらす」のように見えるのはこの写真でもわかると思うのですが、実は中心部も同じように白い光条がうねるように飛び散って、まさに「踊り咲き」になっていました。「おおっ!?」と思わず声が出るような個性的な花火で、そのネーミングとあいまってインパクトもピカイチでした。

秋の九州旅行と合わせて楽しんでください!

「やつしろ全国花火競技大会」は、九州で全国各地の煙火店の花火が見られる貴重な花火大会。各社の花火のクオリティや個性もさることながら、余興花火も豪華で、とても見ごたえのあります。
また、九州以外の、特に東日本の人にとっては、普段なかなか見ることのできない九州の煙火店の花火をたくさん見ることができます。

もし「来年は見てみたい!」と思われた方がいらっしゃったら。

2023年のチケット発売は7月中旬からだったので、来年の春ごろには開催情報のアンテナを張っておいてください。
おおむね10月第3土曜日の開催なので、春頃には宿を押さえておくとよいと思います。八代市内の宿は押さえるのが難しく、また駅や会場から少し距離のあるところが多いので、公共交通機関を利用される方は熊本駅周辺の方が利便性が高いと思います。ただし、日程は例年とは変わることもあるので、開催情報確定前に宿を押さえた場合は、日程が違っていたらキャンセルを忘れないようにしてくださいね。

秋の九州は爽やかで過ごしやすく、旅行にもおすすめの季節なので、九州旅行と合わせてプランニングしてみてください!

花火鑑賞士な旅ライター

宮崎生まれの大阪育ち。人生の約半分を京都で過ごし、現在は千葉在住。もとからの旅好きが、関東移住を機に花火にはまり、旅の目的に花火鑑賞が加わりました。遠くへの旅行も好きだけど、身近なお出かけも好き。どこかで見た素敵なものを、誰かに伝えたい。知って欲しい誰かと知りたい誰かを繋ぎたい。日本酒ナビゲーターで温泉ソムリエで花火鑑賞士な旅人。

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