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南太平洋に2つのサイクロン

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
南太平洋はサイクロンシーズン。ウィンストンには眼が形成されている

サイクロンは南下する!?

南太平洋に相次いでサイクロン(熱帯低気圧)が発生しました。ウィンストン(Winston)はバヌアツとフィジーの間にあり、南に時速10キロで進んでいます。また、タティアナ(Tatiana)はオーストラリアの東海上にあり、こちらも時速8キロで南東に進んでいます。

通常、台風(熱帯低気圧)は南から北へ、北上するイメージがありますが、南半球のサイクロン(熱帯低気圧)は北から南へ、つまり南下します。

理屈はそうなのだけれど、ちょっと違和感を感じてしまいます。ちょうど、アメリカやヨーロッパの地図が大西洋を中心に描かれ、日本が地図の隅にあると思ったときの感じでしょうか。

また、サイクロンの雲をみると、時計回りに回転しているのがわかります。これも北半球の台風とは逆で、地球の回転による見かけの力「コリオリの力」によって起こるものです。

夏と冬、両方の姿をみせる地球

南太平洋のメラネシアに位置するバヌアツ共和国では昨年3月に超大型サイクロン「パム」の被害を受け、16万人以上が被災したと伝えられました。南太平洋は夏から秋へ、ちょうどサイクロンシーズンを迎え、熱帯低気圧が発生しやすくなっています。

2月12日正午の地球の姿(気象衛星ひまわり)
2月12日正午の地球の姿(気象衛星ひまわり)

左図は12日正午の気象衛星ひまわりの画像です。南半球にはオーストラリア大陸が見え、その左側に2つのサイクロンがあります。

このサイクロンと連なるように雲の帯が東西に伸びています(オレンジ色の破線)。これをモンスーントラフ(Monsoon trough)といい、北半球の風と南半球の風がぶつかりあう場所で、熱帯低気圧が生まれるところです。

このモンスーントラフが徐々に北上し、赤道を越えて、北半球まで達すると、夏を迎えます。つまり、モンスーントラフの動きは季節の歩みと同じなのです。

一方、北半球に目を向けると、蜂の巣のような、無数の穴の開いた雲が見えます(水色の丸)。これは冷たい空気によって出来る雲で、ちょうど日本海の雪雲と同じです。

季節の感じ方は人それぞれでしょうが、天気に携わっていると、雲の姿そのものに季節を感じます。雲は季節を映し出す鏡のようなものです。

【参考資料】

オーストラリア気象局(Australian Government Bureau of Meteorology):TROPICAL CYCLONE INFORMATION BULLETIN

フィジー気象局(Fiji Meteorological Service):RSMC Nadi Tropical Cyclone Warning Centre

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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