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今更聞けない…話題の映画「ロシャオヘイセンキ」って何?大人から子供まで夢中になれる魅力とは

小新井涼アニメウォッチャー
邦版ビジュアル(筆者撮影)

先週末に公開された中国発のアニメ映画「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)」。劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のヒットを受けて、何かと映画関連の話題に触れることの多い昨今、そうした中で、少し耳慣れないこのタイトルをみかけた人も多いのではないでしょうか。

すでに無限列車編を鑑賞した人の中には予告編をみた人も多いと思いますが、それでも『最近何かと目にするけど、実際どんな作品なの?』という人や、ぱっと見、難しそうなタイトルから『ハードルが高そう』と感じてしまっている人もいるかもしれません。

しかし実際は、そうして鑑賞を逃してしまうにはもったいなさすぎる、子供から大人、アニメファンからそうでない人にまで全力でおすすめできる映画なのです。

話題のアニメ映画「ロシャオヘイセンキ」とは、一体どんな作品なのでしょうか。

◆「ロシャオヘイセンキ」とは

「ロシャオヘイセンキ」は、妖精と人間が共に存在する現代社会を舞台に、開拓によって森を追われた猫の妖精・シャオヘイが、新たな居場所を探してさまよう中で、同じ妖精や人間達と出会い、別れ、やがて彼らの関係を大きく揺るがす出来事に巻き込まれていくという、神怪アクションロードムービーです。

先週末に封切られた本作ですが、実は日本で公開されるのはこれが初めてではありません。昨年9月に国内わずか1館で10日間限定上映された字幕版が大いに話題となり、連日チケットは完売、上映延長や上映劇場の拡大を経て、約1年のロングランを達成し、今年満を持して日本語吹き替え版が、邦題「ロシャオヘイセンキ ぼくが選ぶ未来」として公開されたという経緯があります。

◆様々な人に刺さる全方位向け作品

本作の魅力のひとつは前述の通り、子供から大人、アニメファンから普段はアニメをみないという人まで、幅広い層が楽しめる要素が満載であることです。

シャオヘイをはじめとするキャラクターたちは妖精も人間もとても魅力的で、ほっこりしたり思わずクスっとしてしまうようなやりとりや細かな演出には、子供はもちろん、一緒に行った親まで思わず魅了されてしまうはず。その一方で、物語の根底には急激な発展による環境の変化や自然破壊といったリアルな要素も含まれていたりと、大人もあれこれと考えながらのめり込める重厚さも持っています。

そして何より凄まじいのが、日本で様々な作品に触れているアニメファンから、恐らく普段はアニメをあまりみないという人でさえ直感的に“すごい”と感じられる、このアクションシーンの格好よさです。

これでもまだ序盤も序盤のほんの一幕にすぎず、この勢いがクライマックスに向けてジェットコースターのように迫力を増していきます。

様々な層に刺さる全方位に向けた魅力をはじめ、その他にも、監督が日本のアニメも大好きということもあり、キャラの造形や性格付け、ギャグのテンポや間、キャラクター同士の関係性の変化の描かれ方など、日本でアニメに触れてきた人にはすっと馴染み、深く刺さる要素も多く、ハマる人はどこまでもハマっていける作品です。

◆絶妙な引き算による映像の魅力

また、本作のもうひとつの魅力として、絶妙な引き算による映像の魅せ方があるように思います。

例えば「鬼滅の刃」や「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」、「君の名は。」などの映像を思い浮かべてみてください。それらの作品が持つ映像美が、繊細な描きこみや色彩、光や影、温度や湿度まで感じられそうな様々な処理や効果が足し算された濃密なものだとしたら、予告編をみても、本作が持つ映像の美しさや魅力は、それとは違った種類のものであるように感じると思います。

キャラクターの線は最低限かつ太めで彩色もシンプル、それでも画面には全くチープさがありません。それは本作から感じる映像のシンプルさが、=省エネではなく、足し算によって画面をリッチにしていくのとは逆に、綿密に準備された土台から必要最低限の要素だけを抽出した、いわば“洗練”の結果だからではないでしょうか。近年のカートゥーンにも通ずるようなこの絶妙な引き算で洗練された一見シンプルにもみえる映像は、前述したアクションシーンでの動きの“気持ち良さ”を、より引き立ててもいるように思います。

本作はそうして、“アニメの映像はすごくリアルで写真のように美しければ美しいほど良い”のではなくて、それもアニメの映像美の沢山あるうちのひとつであり、それとは違ったベクトルで、みるものの目を惹きつけて、眺めているだけで楽しくて、吸い込まれるような映像表現もあるということに気づかせてくれる作品でもあると思うのです。

これほどまでに魅力があり、昨年から異例のロングランになったにもかかわらず、本作はまだ、同じく昨年公開された「天気の子」や、同じ海外作品である「トイ・ストーリー4」などと違い『そんなにずっといつどこでやってたの?』と思ってしまう人の方が多いかもしれません。

それにはこれまで本作が字幕版のみで、関東圏を除くと全国のミニシアターを中心に期間限定での上映だったために、鑑賞機会が限られてしまったことも大きいかと思います。

そんな本作が、小さい子でも鑑賞しやすい日本語吹き替え版となり、近くの劇場でやっていなかったり時間が合わなかった人もアクセスしやすく上映館を拡大したうえで一斉公開されたのが、この「ロシャオヘイセンキ ぼくが選ぶ未来」です。

大人から子供まで、アニメ好きから普段はアニメをみない人まで様々な角度から新鮮に楽しめるこの作品を、どうかこのチャンスにお見逃しなくチェックしてみてください。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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