ロシア軍、ウクライナ攻撃と欧州からの軍事支援阻止のためにイラン製神風ドローン40機をベラルーシへ
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。
ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。
2022年9月からはイラン政府が提供した攻撃ドローン「シャハド136(Shahed136)」と「マハジェル6(Mohajer6)」を頻繁に使用している。2022年10月に入ってからロシア軍による首都キーウへの攻撃では、ミサイルだけでなくイラン政府が提供した攻撃ドローン「シャハド136」も使用されていると報じられている。さらに2022年10月にはイラン政府が提供した「シャハド136」よりも搭載している爆弾量が少ない攻撃ドローン「シャハド131(Shahed131)」でも首都キーウを攻撃していた。「シャハド136」と「シャハド131」は標的に向かって突っ込んでいき爆破する、いわゆる「神風ドローン」。
そして2022年10月には「『ロシア軍はイラン製の軍事ドローン40機をベラルーシのルニネツに移動させてウクライナを攻撃してくる』とウクライナ軍幹部が語っていた」と欧米のメディアでも多く報じている。ウクライナまで50キロのところに2022年10月10日までに32機、10月14日までに8機をベラルーシに配置するとのこと。
またウクライナへの攻撃だけでなく、欧州諸国から陸路や空路でウクライナ軍に提供される武器や軍事支援物資の移送車両や飛行機を破壊するためにベラルーシからイラン製の攻撃ドローンを発射する可能性があるという見方を示している欧米やイスラエルのアナリストもいる。
▼イラン政府からロシア軍に提供された攻撃ドローン「シャハド136(Shahed136)」
首都キーウでは軍事施設だけでなく民間施設や一般市民も標的と報道
2022年7月からイラン政府がロシア軍に軍事ドローンの提供で協力している。米国の国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバン氏は2022年7月11日にホワイトハウスの記者会見で、イラン政府がロシア軍に対してウクライナ紛争で使用するためのドローン数百台を提供する可能性があると語っていた。イランは7月からロシア軍に攻撃ドローンの訓練も行っていた。米国のシンクタンクの戦争研究所は、イラン政府がロシア軍に対してイラン製の攻撃ドローン「シャハド129(Shahed129)」を46機提供しているとの調査結果を発表していた。米国CNNの報道によると、ロシア軍はイランでウクライナでの戦闘のために、イラン政府が提供した攻撃ドローンの操縦訓練を行っている。CNNによるとイラン製の攻撃ドローン「シャハド129(Shahed129)」のほかにイラン製の監視・偵察ドローン「サーエゲ(Shahed Saegheh・Shahed191)」もロシア軍に提供されるということだった。
ロシアのプーチン大統領は2022年7月19日にイランを訪問し、最高指導者ハメネイ師、ライシ大統領と会談していた。ハメネイ師はイランとロシアの中長期的な協力関係をプーチン大統領に呼び掛けていた。2022年8月には米国国防総省のパット・ライダー報道官は「イランの飛行場からロシアに向けて軍事ドローンが輸送された。ロシア軍はイラン政府からイラン製の軍事ドローン数百機をこれから調達する予定。入手した情報によると、今回輸送されたイランの軍事ドローンはすでに多くの不具合(numerous failures)が生じている」と語っていた。
2022年9月からイラン製のドローン「シャハド136(Shahed136)」と「マハジェル6(Mohajer6)」がウクライナでの攻撃に使用されるようになった。ロシア軍が以前に使っていたロシア製の軍事ドローンに代わって多くのイラン製ドローンで攻撃を行っており、ウクライナ軍によっても迎撃された写真や動画も公開されている。また2022年9月にウズベキスタンで開催されていた第22回上海協力機構首脳会談で、イランのライシ大統領とロシアのプーチン大統領は会談し、NATOの脅威は欧州だけでなく世界共通の脅威であると語っていた。2022年10月には首都キーウへの攻撃ではミサイルだけでなくイラン製の軍事ドローンが使用されて、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設だけでなく民用物や、文民たる住民までが標的になっていると報じられている。ウクライナ軍によって多くのイラン製ドローンが迎撃されて破壊された残骸をSNSなどで公開して世界にもアピールしている。
イランの兵器のほとんどは1979年まで続いた王政時代にアメリカから購入したもので、現在はアメリカとの関係悪化による制裁のためアメリカから購入できないので、特にドローン開発に注力している。イランの攻撃ドローンの開発力は優れており、敵国であるイスラエルへも飛行可能な長距離攻撃ドローンも開発しており、イスラエルにとっても脅威である。イスラエルのガザ地区の攻撃の際にはパレスチナにドローンを提供してイスラエルを攻撃していたと報じられていた。またイランでは開発したドローンを披露するための大規模なデモンストレーションも行ってアピールもしていた。
▼ウクライナ軍によって破壊されたイラン製軍事ドローン「シャハド136」の残骸