3分後にはホッとする!? 永谷園が新たなお茶づけスタイルを提案し市場拡大に期待
茶づけとは、主に米飯に茶をかけた料理のことで、一般的に「お茶づけ」と呼ばれている。
永谷園創業者の永谷嘉男が、京都ではお茶づけにかき餅を入れることにヒントを得て、お茶づけ海苔にあられを入れることを考案。 なお、“もち米からできている”あられを入れることで袋の中の海苔や調味粉の吸湿を防いで乾燥を保つ働きもあるそうだ。
おいしさ据え置き、お茶づけを取り巻く環境に変化が
永谷園は、お茶づけの作り方を再定義し続け新たな文化を生み出そうとしている。今まで、茶碗一杯分のごはんに1952年から発売されているロングセラー商品「お茶づけ海苔」をふりかけのようにかけてお湯を注ぎ入れて作っていたが、もっとお茶づけを持ち運ぶことができないかということで生み出されたのが2005年に発売された同社「カップ入り さけ茶づけ」だ。
お茶づけの素と無菌米飯が一緒になったお茶づけということもあり、手軽にお茶づけをサラサラと楽しめる。
湯切り機能付きのふたを使用すれば電子レンジがなくてもお湯だけで簡単に作れてしまい、宿泊先のビジネスホテルなどでも簡単に食せる。
ちなみに、 「ごはん」は新潟県産コシヒカリを使用し、「さけ茶づけ」は大きな鮭フレークを使用しているので、満足感はある。
しかし、筆者は、そんなことを感じたことはなかったが、カップの中に無菌パック米飯やフリーズドライされた具材などが個包装されていると開封するなどの手間で煩わしさまで感じさせてしまうのではないかということで、72年目の新たなお茶づけのカタチとして2024年9月9日に「カップ入り お茶づけ海苔」「同 さけ茶づけ」が全国発売された。
もう、お湯さえあればどこでも食べられるアイデア商品が新たに誕生した。
商品担当者「とにかく、マイったというぐらいお米の品種から製造にまでこだわった」
「とにかく、さっぱりと手軽に食べられるスタイルを追求したら、お湯を注ぐだけでおいしいごはん(白米)を作るにはどうすればいいのか必死に考えました。今回の商品は、味づくりから商品の打ち出し方(コンセプト)まで社内全体(マーケティング本部、営業本部、生産本部)で取り組んだ一大プロジェクトに最終的になりました」と既存の商品対してに新たな価値を生み出す部署に配属している栗原氏は語り続ける。
「こだわったのは、“米”本来のおいしさはもちろんのこと米の粒立ちやツヤにまで徹底的にこだわりました。実は、弊社ではおよそ20〜30年ほどお米の研究をしています。フリーズドライ加工の技術を応用し、炊いたご飯を瞬間冷凍し、凍結乾燥させることで米が潰れず、お湯で戻した後でも粒たちがよく、ツヤもありふっくらとした仕上がりにさせることができました。米の品種もいろいろと取り寄せて20〜30品種の中から選定し、こだわり抜いた結果(日本人に最も馴染みのある)コシヒカリに落ち着き、企画立ち上げから商品化までには1年半はかかりましたね。」
栗原氏をはじめ永谷園のこだわりが詰まったカップの蓋を半分まで開いて「お茶づけ海苔」にお湯を注ぎ3分待つとあの抹茶の香りが目の前を包み食欲が高まった。いつものあの味の安心感と米のおいしさに驚いた。確かに、粒立ちがよく粘り気も少ないのでお茶づけとして適している印象を受けた。とにかくおいしさを通り越して「ホッ」とする。
とにかくおいしさを通り越して「ホッ」とする。このことを栗原氏に伝えると…。
「そうなんです。“ホッ”とするんですよ。食べたときに思わずホッとできるような安心感がお茶づけにはあります。日本人の食に馴染みのある食材を温かい状態で食べられるからだと思いますね。お茶づけをいつでもどこでも気軽に食べられるようにできたことでお客様にホッと一息つくひとときを届けたいという思いを込めつつ、お茶づけの新たな価値を生み出せたと私は思います」
栗原氏は最後にこんなことを教えてくれた
「実は、テーマパークに併設されているホテル周辺のコンビニエンスストアでのお茶づけの売り上げは驚くほど高いんです。おそらく、小腹や気分をニュートラルな状態に戻す食べ物として「お茶づけ」を選んでいただけているのではないでしょうか」と栗原氏は紐解いた。
確かに、昔から永谷園の「お茶づけ」は胃袋だけでなく、心も満たしてくれる食べ物なのかもしれない。そう言いながら、私は2個目のカップを手に取り「さけ茶づけ」の米をお湯で戻す。
取材協力:株式会社 永谷園
スチール:シズリーナ荒井