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英国でもテロ対象へ:シーシェパード、グリーンピース

八木景子初めて“捕鯨問題”を海外へ発信した映画監督・プロデューサー
日本大使館前でのデモの様子(ロンドン)

英国でもシーシェパード、グリーンピースがテロリスト対象に追加へ

商業捕鯨の将来に関わる反捕鯨団体弱体化の一途なるか注目のニュースが飛び込んできた。

イギリスの有力紙であるガーディアンによると、英国がテロに対する特殊警察機関において環境保護団体であるシーシェパードとグリーンピースをテロリスト対象団体のリストに追加したと掲載された。この記事は、これまで環境に良い団体とされてきた環境保護団体がナチズムを復興しようとするネオナチや右翼の過激派と同等の扱いになることを意味する。

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初めて海外で日本の捕鯨主張映画が選出された時の反応

シーシェパードなど反捕鯨活動家らが長年にわたり、サポーターを増やすために力を入れてきたのは、動画によるものだ。その中でも爆発的な影響力を及ぼしたのが、日本のイルカ漁を批判したドキュメンタリー映画「THE COVE」である。日本で初めて上映されたのは、2009年の東京国際映画祭になる。その翌年に米国アカデミー賞を受賞した。

筆者は、「THE COVE」を検証、反捕鯨活動家とIWC国際会議の実態を捉えた映画「Behind THE COVE」を完成させた。2015年9月にはモントリオール世界映画祭に選出され、海外メディアがごぞって1人のインディーズ映画に対し「日本人が反論」と一斉に報じるという異例な出来事だった。これまで日本からの反論がなかったことになる。後に筆者が反捕鯨家からの標的とされ、上映阻止などの妨害が受けながらも反捕鯨国で開催された30近い映画祭で選出された。2018年2月、英国で開催されたロンドン・フィルムメーカー国際映画祭でベスト監督賞に選出され授賞式が行われた際は、ちょうど反捕鯨団体が日本大使館でデモを例年行っている日にあたった。現地の日本大使館によると「THE COVE」がアカデミー賞を受賞した後は、デモが300人以上にまでにも膨れ上がり続けられたとのこと。しかし、2015年に「Behind THE COVE」の発表後、反捕鯨団体の活動の数が徐々に減りはじめ現在では30人程度になったとのことだった。その後、2018年年末に日本がIWCを脱退宣言した際、大使館前で小規模のデモがあり、国内の一部メディアで過剰に報道されたが、人数は少なく単発で終わったとのことだった。

映像を活用し、映画業界へも脅してきた環境保護団体の舞台裏

脅された東京国際映画祭
脅された東京国際映画祭

反捕鯨活動家らは、筆者の製作した「Behind THE COVE」の広がりに強く警戒心を持っていた。2016年「Behind THE COVE」が劇場公開されるタイミングで「ザ・コーヴ」の主演リック・オバリが入国拒否され、そのとばっちりを受ける形で劇場と自身のホームページを国際集団ハッカー・アノニマスによりサーバーが落とされた。日本での1月30日公開初日前夜に警察から劇場へ犯行声明があったと連絡を受けていた。UCLAでの上映の際には主催者に上映を止めようとする連絡があったとのことだった。さらには、オランダの映画祭で「Behind THE COVE」を一旦選出していたものの反捕鯨団体からの脅しから取り下げたという連絡があった。

そのまた逆で「THE COVE」は、東京国際映画祭で一度、落選されていたのだが、ハリウッドのプロデューサーから脅しの連絡が入り東京国際映画祭では、急遽会議が行われ選出しなおしたことを関係者が「時効」ということで暴露した。

ロンドンでの映画祭
ロンドンでの映画祭

社会問題をテーマにした映画上映の阻止問題

昨今では、慰安婦を題材にした「主戦場」の上映を巡り是非が問われているが、過去には、「THE COVE」以外にも「靖国」などもある。社会問題をテーマとした映画は上映を巡る是非だけでなく、映画祭での選出にまでも影響を及ぼす脅しが過去に行われてきた。イギリスのような反捕鯨活動家の中心地で、環境保護団体がテロ対象になったことによって、かつては反捕鯨に偏重した報道のみだった英国の公共放送のBBCなどで、今後、報道に変化がおきるのか注目していきたい。

ロンドンの日本大使館前でデモ中のシーシェパードメンバーと
ロンドンの日本大使館前でデモ中のシーシェパードメンバーと

参考記事

<The Guardian>

https://www.theguardian.com/uk-news/2020/jan/17/greenpeace-included-with-neo-nazis-on-uk-counter-terror-list?fbclid=IwAR0baELzd-mOvaFfHH162_rfSz4SFjsqQYnOp-JDDhoNn1Lh_xtVATuy69k

初めて“捕鯨問題”を海外へ発信した映画監督・プロデューサー

東京生まれ。ハリウッド・メジャー映画会社に勤務後、「合同会社八木フィルム」を設立。長年恐れられていた捕鯨の問題を扱った映画『ビハインド・ザ・コーヴ』は自費を投じ製作をした。2015年に世界8大映画祭モントリオール世界映画祭に選出され、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、ロサンゼルスタイムズなど海外の多くの大手メディアに取り上げられ国会議員試写会も行われた。しかし、配給会社がつかず、さらに自ら借金と寄付を募り配給まで行った。日本のドキュメンタリー映画としては珍しく世界最大のユーザー数を持つNETFLIXから世界へ配信され大きな反響を呼んだ。新作「鯨のレストラン」は現在、国内外で上映を展開中。

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