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百折不撓・木村一基九段(47)逆転で難敵・森内俊之九段(50)を降し叡王戦本戦進出決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月22日。第6期叡王戦段位別予選・九段戦B決勝▲森内俊之九段(50歳)-△木村一基九段(47歳)がおこなわれました。

 19時に始まった対局は21時33分に終局。結果は92手で木村九段の勝ちとなりました。木村九段は叡王戦本戦(ベスト16)進出を決めています。

木村九段、苦戦をしのいで逆転

 森内九段は高橋道雄九段、羽生善治九段を降して予選決勝に進出しています。

 将棋界のスターが揃う九段戦。その中でも特に本日の羽生九段-森内九段戦の視聴率は高かったことでしょう。

 木村九段は郷田真隆九段、小林健二九段に勝っています。

 木村九段先手で、戦型は両者ともに得意の相矢倉に進みました。序盤から両者ともに時間を使って、いかにも難しい進行となりました。

 両者ともに角が向かい合った形で36手目、木村九段は穏当に矢倉城に玉を収めました。常識的な順のようですが、木村九段は局後にその順を悔やんでいました。代わりに角取りに歩を突き、角交換をうながす方が優ったのではないかと。

木村「突けないんじゃおかしいですよね」

森内「突いてくるのかと思ったけど・・・」

木村「いやあ、ちょっとひどかったなあ・・・」

 そこで差がついたというわけではありませんが、木村九段の意図しない展開となったようです。

 44手目。木村九段は相手の攻めの銀にアタックして動いていきます。銀香交換の駒得にはなりましたが、自陣が薄くなるリスクもともなうので怖いところ。このあとは森内九段が優位に立ちました。

 互いに相手玉を寄せ合う終盤戦。形勢は森内九段がいいものの、木村九段は最善を尽くして相手を楽にさせません。

 81手目。森内九段は7筋の成香を6筋に寄せました。2筋の木村玉からは離れたところで、いかにも高段者らしい落ち着いた駒の活用に見えました。しかし森内九段は終局直後、この手を悔やんでいます。

森内「成香寄ったのはスカでしたね、さすがに」(苦笑)

木村「ああ、いやいや・・・。うーん、そうですねえ。こっち(玉周辺)来られたほうがプレッシャーにはなってたと思いますけど」

 しかしその一手で逆転したわけではありませんでした。

 82手目。木村九段は森内陣7筋に香を打ち込み、攻め合いに出ます。局後の感想戦では、その香を取って受ける順が検討されました。

木村「いやあ、それでわからないんですけど・・・」

 調べてみると森内九段に勝ち筋が多かったようです。

 83手目。森内九段は自陣を受けず、寄せた成香で相手の銀を取りました。途端に逆転! 木村九段に角で金を取られると、速度争いで逆転しています。

 森内九段は木村玉に王手をかけるものの、逃げられて詰みません。

 92手目。木村九段は端9筋に飛車を回ります。これがぴったりの王手で、森内玉は詰みです。

記録「40秒。・・・」

森内「あ、負けました」

 森内九段は一礼し投了。木村九段が逆転勝利を収めました。

 終局後、木村九段はコップに水を注いで飲みます。

木村「いやあ、負けてましたねえ。全然ダメだった」

 百折不撓の木村九段。苦戦を耐えて逆転勝利を収めました。森内九段と木村九段の対戦成績は、これで森内13勝、木村16勝となりました。

 叡王戦本戦出場者は16人中15人が決定。残すは九段戦Aだけとなりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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