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鈴木貴美一HCの秘蔵っ子から三河の系譜を引き継ぐ稀代のシューターへ!角野亮伍が見据える将来

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
大阪線で大活躍をみせた三河に移籍した角野亮伍選手(筆者撮影)

【各チームの戦力分析が難しい今シーズンのBリーグ】

 Bリーグの2021-22シーズンが、先週末から開幕した。リーグ創設6年目となる今シーズンは、各チームの戦力分析が最も難しいシーズンになっているように思う。

 というのも、Bリーグが2026-27シーズンから開始予定の新B1リーグ構想を立ち上げ、現在の下部リーグとの入れ替え制度を廃止することを明らかにしていることに他ならない。

 そのため新B1リーグに加わることを目指し、その登竜門となる2024年秋に予定されている一次審査に向け、各チームが本腰を入れチーム強化に乗り出し、多くのチームが大幅に選手入れ替えを断行している。

 それを物語るように、第1節で昨シーズン覇者の千葉ジェッツがこれまで弱小チームとされてきた島根スサノオマジック相手に開幕戦で敗れ、同じくファイナル進出の宇都宮ブレックスがB1初昇格の群馬クレインサンダースに連敗を喫するなど、早くも波乱の様相を呈している。

 今シーズンの勢力分布図を把握するには、もうしばらく時間を要しそうだ。

【1勝1敗のタイに終わった大阪と三河】

 開幕カードで激突した大阪エヴェッサとシーホース三河も、大幅に選手を入れ替えたチームだ。昨シーズンの両チームはシーズン終盤まで西地区2位の座を争うなど、今シーズンも西地区の優勝争いに絡んでくるチーム同士の激突ということで注目が集まった。

 ただ両チームともに主力選手に離脱者がいる中でシーズン開幕を迎えており、まだ本来の戦力が整っていない。そんな中で第1戦は大阪が70対67で制し、第2戦は三河が90対72で大阪を圧倒している。

 第1戦の接戦とは違い第2戦が一方的な試合展開になってしまったのは、三河の強固なディフェンスとともに、その圧倒的な攻撃力があった。

【早くも三河の攻撃の核になり始めたBリーグ2年目の角野選手】

 中でもコート上で光り輝く存在だったのが、第2戦でチーム最多の23得点を記録した角野亮伍選手だった。

 コートを縦横無尽に走り回り、内外からシュートを打ち続け、大阪のディフェンスを翻弄した。昨シーズンも終盤に大阪の得点源として機能していた角野選手の攻撃力が、改めて本物だったことを証明している。

 昨シーズン大阪でBリーグ1年目を過ごした角野選手だが、オフに三河に移籍。今シーズンはチームを去った日本代表の金丸晃輔選手の穴を埋める選手として期待されている。

 三河の鈴木貴美一HCもポトス金丸選手そして「オフェンス面では角野選手で、ディフェンス面では西田(優大)選手」と期待を寄せており、オフに角野選手が移籍リストに名前が入ったのを確認すると、すぐに獲得に動いたようだ。

 「僕が代表監督をやっている時に、高1で唯一A代表候補に呼んだ頃から凄いオフェンス能力がありました。高校も藤枝明誠高と静岡の高校だったので、常に気にして見ていました。

 大阪さんでも最後は活躍して、(オフに)移籍リストに出ていたので交渉に乗り出しした。うちが欲しかったタイプの選手だったので、来てくれて良かったと思います」

 角野選手はまさに、鈴木HCが高校時代から目をかけてきた秘蔵っ子的存在だったわけだ。

大阪との第2戦では内外からシュートを決め続けた角野選手(筆者撮影)
大阪との第2戦では内外からシュートを決め続けた角野選手(筆者撮影)

【三河移籍で掴み始めた中心選手としての自覚】

 第2戦終了後に角野選手から話を聞くと、開幕カードで大阪との対戦が決まった時から、この2試合に向け闘志を燃やしていたという。

 「スケジュールが決まってから、とりあえず大阪から移籍してすぐの対戦で絶対に倒さなきゃいけない相手だったので、昨日(第1戦)はガチガチに力が入ってしまって自分の動きが思うようにできなかったので、このまま帰るわけにはいかないと思って、外れようが何だろうが、いけるところは全部(シュートを)打っていき、存在感をアピールしようと思っていました」

 繰り返しになるが、第2戦で見せた活躍ぶりは、昨シーズン終盤と遜色ないものだったが、角野選手からすると内面的な部分でまったく違っていたらしい。

 三河に移籍した理由を「ずっと大阪にいるというよりも自分のやりたいこと、やってきたことがどれだけ通用するのか試してみたかった」と明かした上で、その違いについて説明してくれた。

 「去年は橋本(拓哉)選手や(DJ)ニュービル選手の補佐みたいな役割でやらないといけないという感じだったんですが、貴美一HCから『ある程度中心でやってもらいたい』ということだったので、責任感という部分での気持ちの変化はあります。

 今日(第2試合)取った点と、大阪の終盤でのプレーでは、僕の中で価値が違うというか、気持ちが全然違いますね」

 その心境の変化こそ、角野選手の中で中心選手としての自覚が芽生え始めている証ではないだろうか。

【角野選手「(金丸選手らを)超えられると信じている」】

 これまで三河には、金丸選手や比江島慎選手と、日本代表を牽引してきた屈指のシューターを輩出してきた輝かしい歴史がある。角野選手としてもその系譜に繋がっていきたいところだろう。

 「去年は金丸選手がいて、その前は比江島選手と日本のトップクラスのシューターがいましたけど、その代わりになろうとかそこまで意識していなくて、自分のやってきたこと、やりたいことを思い切りぶつけて、その上で今まで(三河の)歴史を作り上げてきた選手を超えるような結果が出せれば、それが一番いいなと思います。

 自分がやってきたことを最大限に発揮できれば、超えられると信じているので、そういう気持ちでやりたいと思います」

 鈴木HCも角野選手と西田選手を代表入りするような選手に育てたいという強い思いがあるようだ。

 「代表にも選ばれる逸材だと思っていますので、育てるというのはおこがましいので、是非うちで育ってもらって日本のバスケを背負うような存在になってくれればなと期待しています」

 今シーズンの角野選手に注目だ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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