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他FA投手の契約合意で徐々に見えてきた今オフにおける田中将大の市場価値

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB公式サイトで今オフFA選手の中で中堅クラスの評価を受けた田中将大投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【モートン投手が年俸約15.8億円でブレーブスに】

 ブレーブスが現地時間の11月24日、今オフのFA市場で注目投手の1人だった、チャーリー・モートン投手の獲得を発表した。米メディアによると、合意内容は1年契約で、年俸額が1500万ドル(約15.8億円)に及ぶ大型契約だ。

 今オフは、新型コロナウイルスの影響で各チームが予算削減の動きを見せ、ここまでFA市場は低調に推移する中、現時点で最高額の契約となった。

 2020年のモートン投手はレイズに在籍し、先発ローテーションの1人として9試合に登板し、2勝2敗、防御率4.74を記録。さらにポストシーズンでは地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズで3連勝を飾り、チームのワールドシリーズ進出に貢献していた。

 37歳のモートン投手は、シーズン終了後に現役続行を明言。だがレイズは、チームが保有していたモートン投手の契約オプション権を破棄したため、FAとして契約交渉を続けていた。

 モートン投手は2008年にブレーブスでMLBデビューを飾っており、13年ぶりの古巣復帰となる。

【ここまでFA市場で唯一積極的なブレーブス】

 低調なFA市場が続く中で、ここまで唯一ブレーブスだけが積極的に選手補強を続けている。

 モートン投手と合意した年俸1500万ドルは、レイズが破棄した契約オプションと同額で、過去の契約の額面通りに彼を評価している。

 さらに16日に獲得を発表したドリュー・スマイリー投手は、1年1100万ドル(約11.6億円)で合意している。スマイリー投手の2020年の年俸額は400万ドル(約4.2億円)で、シーズン成績が7試合登板(うち5試合先発)で、0勝1敗、防御率3.42だったことからも、かなり破格なオファーに見える。

 パドレスと2年契約を結んだマイク・クレビンジャー投手以外、ここまで年俸総額が1000万ドルを超えた契約はモートン投手とスマイリー投手のみで、この2投手の契約が今後の契約交渉を見極める上で、重要な基準になっていきそうだ。

【MLB公式サイトで実施したFA選手のランク分け】

 そこで注目されるのが、MLB公式サイト上に16日付けで投稿されている記事だ。マーク・フェインサンド記者が今オフの注目FA選手を5つのグループにランク分けしたものだ。

 トップグループに振り分けられているのは、トレバー・バウアー投手をはじめ、DJ・レメイヒュー選手、マルセル・オズナ選手、JT・リアルミュート選手、ジョージ・スプリンガー選手の5人が入っている。

 この5人に関しては、他のメディアでも5大大物FA選手として取り上げており、今オフの別格の存在といえる。

 ちなみに今回ブレーブス入りが決まったモートン投手は、第2グループに入っている。またスマイリー投手は、記事が投稿された時点で契約合意していたので、いずれのグループにも入っていない。

 日本人としては、ヤンキースとの7年契約が終了しFAとなった田中将大投手の動向が気になるところだろう。この記事ではタイワン・ウォーカー投手、トレバー・ローゼンタール投手らとともに第3グループに分類されている。

 つまり今オフのFA市場で、中堅クラスと考えられているわけだ。

【田中投手の年俸は10億円台が妥当?】

 これまで田中投手は7年契約で毎年2200万ドル(約23.1億円)を得ていたわけだが、第3グループに分けられた選手で過去に2000万ドル(約21億円)以上の年俸を得ていたのはカルロス・サンタナ選手しかいない。

 そのサンタナ選手も、インディアンズから1750万ドルを保証された契約オプション権を破棄されFAになっており、今オフに年俸2000万ドルを超えるオファーが届くのは微妙な状況だ。

 これまで田中投手に関して様々な報道がなされているが、こうした状況を踏まえると、田中投手に対しても年俸1000万ドル(約10.5億円)台のオファーになりそうとの見方が妥当ではないだろうか。

 今後12月2日までに、多くの年俸調停有資格選手が戦力外通告されると予想され、さらに先発投手がFA市場に回ってくることになる。田中投手が年内中に契約合意できるかも、かなり微妙な状況だと考えた方がいい。

 とにかく気長に待つしかなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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