【戦時の献立】プルケギ?戦時中の日本で紹介された朝鮮式の焼き肉(昭和15年2月11日)
「もし戦時中に料理ブログがあったら?」
今日の献立は、昭和15年2月号の婦人倶楽部から、牛肉を韓国式に焼く「プルケギ」。
前回の「馬鈴薯飯」も同じ2月号から紹介したが、それは馬鈴薯飯のおかずにプルケギを作って食べたからである。
令和の世で言う「プルコギ」のことか?と思ったが、作ってみると味付けも材料もプルコギとは違う。韓国料理店で食べるプルコギは甘辛で野菜が入っている。
しかしこのプルケギは大して甘くなく、野菜はニンニクだけといったシンプルな物である。
当時の婦人倶楽部ではこのように紹介されている。
朝鮮半島は1910年から日本の統治下にあったし、中国では日本が満州事変によって1932年に満州国を樹立していたから、現地には日本人が多く在留していた。
そのため当時の婦人雑誌は、海の向こうの各地に読者サークルのようなものが存在し、現地の料理レシピが雑誌の編集部へ届いていたようだ。
「プルケギ」以外にはこんな料理が紹介されている。
ホウコウズ(火鍋)
満州の寄せ鍋の一種として紹介。白菜や春雨、豚肉、ちくわ、イカなどを湯で煮て、塩味をつけて食べる。
温飯(おんぱん)
朝鮮のあたたかい丼御飯として紹介。豚肉やタマネギ、ネギ、ニンニクをスープで煮て、醤や塩、砂糖で味付けし、丼めしにかけて食べる。
こういった料理が紹介されている中に「プルケギ」はあった。
ちなみにこの献立特集の朝鮮・満州の巻というタイトル。「〜の巻」というからには他にも「〜の巻」があった。前年の9月号の九州地方の巻に始まり、中国地方の巻・四国地方の巻・北海道の巻と来て、この朝鮮・満州の巻、そしてその後は東北地方の巻へと続いた。
泥沼化する日中戦争に嫌気がさす人々もいたであろう当時、雑誌はこういうところに朝鮮や満州の一風変わった料理を持ち出すことで、厭戦ムードをやわらげようとしたのかもしれない。(当時は戦争に肯定的でなければ、雑誌は休刊や廃刊の憂き目にあったという状況もあった)
というわけで「プルケギ」である。
一体どんな味で、どんな作り方なのか?
ではここから先は、昭和15年2月11日だと思ってご覧いただきたい。
昭和15年2月11日、日曜日。
今日も家内の代わって夕めしを作る。
家内の婦人雑誌からプルケギなるものを選ぶ。朝鮮でいう焼肉であるとの由。
プルケギという、何やら可愛げのある名前。家内も興味津々である。
作ってみれば、すこぶる飯が進む味なり。
辛さでしこたま汗も出るし、寒い日にはうってつけの献立である。
材料(五人前)
- 牛肉 百匁(375g)
- ごま油 大さじ2杯
- 砂糖 大さじ1杯
- 醤油 大さじ7−8杯
- にんにく 1個
- 唐辛子粉 少々
では、こしらえていこう
まずにんにくをみぢんに刻む。
刻んだニンニクは唐辛子粉と混ぜ合わせ、すり鉢で良くする。
そこへ、醤油大さじ七、八杯と、砂糖大さじ一杯、ごま油大さじ二杯を入れてよく混ぜ合わせる。
この汁に、牛肉をつけながら焼きあげるのだ。
牛肉は食べやすい大きさで薄く切ったものを使えとのこと。
献立によると、こんろを食卓に運んで、その場で焼いて食べるのが良いそうだ。しかしうちはこんろが移動できないから、焼いてから食卓に出すことにした。
火を通しすぎず、肉の色が変わる程度に焼けた時が食べ頃のようである。
プルケギの完成なり
では、いただきます。
これは存分にやれる!
余分に取っておいた汁をつけつけしながら食べたが、これが滅法界飯が進む。唐辛子粉の辛さもそうだが、にんにくの風味が一層際立ってうまいのである。
一緒に作った馬鈴薯飯も、それだけではやや質素な献立になってしまうが、このプルケギがあれば充分御馳走である。
勢いよく食べたおかげで額に汗がしたたって大変だった。二月というのに扇子であおぎながら食べたほどである。
こんな辛いもの、家内は食べられるだろうかと心配したが、存外気に入った様子。
辛さなど、どこ吹く風といった感じでぱくぱくと食べていた。
どうやら私よりも、辛いものには滅法界強いようである。
ごちそうさま。またうまいものを作ろうと思う。
◇動画もご覧いただけると有り難し!
今回プルケギのお供に食べた馬鈴薯飯の詳しい作り方は、こちらの動画をご覧いただきたい。
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